京都一周トレイル・西山コース・その2
嵯峨・嵐山を行く
■標高:276m
■歩行時間:4時間40分
■登山日:2015年6月20日




 京都一周トレイル西山コースは、まずい残し方をしてしまった。最後に残った区間は、京阪嵐山駅から同上桂駅に至るコース。直線距離で3卍度の距離となるだろう同駅間。トレイルのコースは酒の神として知られる松尾大社の西方・松尾山を越える5厖召蠅瞭擦里蠅箸覆襦松尾山の標高は300m弱で、登山口からの高度差は200m強といった所。20分ほどもあれば登り切れるだろう。全線歩いても2時間ほどのコースとなるだろうか。言ってみれば、それだけの話だ。要するに、短すぎる。

 観光地として有名な嵐山は、京都市街でも奥まったところに位置する。もちろん、アクセスルートはいろいろと存在しているが、京都駅からだとひと手間をかけないとたどり着けない。今回は、時間調整のために太秦の広隆寺に立ち寄ってから嵐山を目指した。つまり、山科駅から地下鉄東西線で太秦天神川駅まで移動し、そこから嵐電で嵐山を目指す形になった。参考までに、京都駅からバスで目指すことも可能だが、市街地を突っ切る形になるため、1時間近い時間がかかる。このほか山陰線に乗り換えて嵯峨嵐山駅で下車するのも当然考えられるが、この駅があるのは嵐山と呼ばれる地域でも外れに近い。もちろん、スタート地点は阪急嵐山駅なので、阪急電車に乗れれば話が早いのだが、その場合も京都駅から地下鉄に乗らなければ阪急の駅にたどり着けない。阪神地区からの移動であれば、何も考えることなく阪急の電車を利用すれば良いだけなのだけれど。

 嵐電嵐山駅に降り立ったのが10:41。嵐山の街路に出る。相変わらず人の多い街だ。少し歩くと渡月橋だが、青空が爽やかだった前回の歩行時と違い、曇天の今日は、景勝地・嵐山もくすんで見える。些細なことだが、以前は中ノ島から先でミスコースをしていたらしく、法輪寺側から駅に回り込んでいたため、今回でちょっと補正。阪急嵐山駅の前を通過したのは10:56のことだった。

 観光地としての端正な佇まいを見せる駅前を通り過ぎても、そこはまだ住宅地の顔をしている。ここからどのようにして山道が始まるのか、事前には想像もできなかったのだけれど、それは唐突に始まった。道路沿いの駐車場の脇に「ハイキングコースの入り口」と書かれた看板が立っている。曰く「松尾山を尾根伝いに歩きますので京都市内を一望できます 距離 約3.3辧〇間 約1時間30分」。看板の脚部には、京都一周トレイルの指導票でおなじみの付近コース図が取り付けられている。が、ハイキングコースの入口と主張されるその道は、言われなければ駐車場とその隣地の間の空き地にしか見えない。案内情報に間違いはなさそうなので、信用して歩いて行くと、林の中に入って少ししたところでそれらしい山道になった。足場は悪くないが、雨がちな天候もあって、滑りやすい岩の道となっている。山裾からだと雑木林っぽく見えた山も、いざ中に入ってみると竹林が広がっていた。しかし、総体的には至って普通の里山といった所か。ランの人が多いのも、大都市部に近接した山らしいと言える。

 11:20、33指導標に到着。四つ辻状の地点だ。ここから松尾山の山頂までは周回路になっているようだ。枝道の扱いではなく、ぐるっと回ってここに戻ってくるのが正規ルートのようだ。時間は有り余るほどあるので、もちろんこれに付き合う。大して長い道のりではなく、5分で山頂に到着。途中、何か所かで京都市街を見下ろせる展望ポイントがあるが、歩行距離のわりにいろんな方位に対して展望の開ける道となっているようで、場所によって見える方面は様々だ。11:25、松尾山の山頂を踏み、先ほどの辻まで戻る。その先は下り一方かと思いきや、たまに登り返しもあったりする。とは言え、概ね平坦な道が続く。この程度であれば、前回の流れで最後まで歩き切っておけば、いい感じに苦闘を強いられたのではないかと、後悔の念も催されてくる。

 それにしても、山頂を過ぎたらすぐにでも苔寺・鈴虫寺方向に下るものと思い込んでいたが、あらためてコースマップを見直してみると、駅前から山頂までより、山頂から両寺までの方が長い。

 とは言え、全線でも5劼舛腓辰箸任靴ない今日のコースだ。12:04には山を下り切り、苔寺の前を行き過ぎる道に出た。その名の通り苔の美しい庭を持つ古刹として知られる苔寺こと西芳寺は、その高名さとは裏腹に、完全予約制拝観の寺である。当然、目の前まで行ってみても門は固く閉ざされていた。近寄りがたい雰囲気さえあるが、現在のようなシステムになったのは昭和52年(1977)のことだったようだ。京都でも指折りの観光地として、当時は多くの観光客の訪れがあったようだが、それに比例して周辺住宅地の住環境が悪化。さまざま対策を講じるも根本的な解決につながらなかったため、参拝者そのものの数を絞ったということだ。現在は、往復はがきを使っての申込制となっており、そうやって受け入れる参拝者も物見遊山の客としてではなく、建前上は宗教行事への参加者として迎え入れるものだということだ。

 ある意味それと好対照をなすのが、隣接する鈴虫寺(華厳寺)である。通称は、ほぼ1年を通してスズムシを飼育しており、年中その鳴き声が聞かれることによる。規模でも格式でも苔寺よりは小ぶりなのは否めないのだけれど、草鞋を履いたお地蔵様の霊験があらたかなのだそうで、折からのパワースポットブームもあって、行列のできるお寺として有名らしい。もう一つ有名なのが、住職をはじめとする僧侶たちによる、「鈴虫説法」と呼ばれる説法だ。実は前述のお地蔵様にお参りするだけであれば、お寺で受付を済ませる必要もないので、行列と言うのはほぼそのままこの説法を聞くための行列である。ただし、お守りやお札を手に入れるには受付を経て説法を聞くことになる。

 くどいようだが時間はあるので、鈴虫寺に立ち寄った。寺院の本質がいかなるものかは、一筋縄では答えの出ないところはあるのだけれど、訪れる全ての人に対して広く門戸を開け放つのは、そのありようの一つであろう。鈴虫寺の目指す姿はそこにあるようで、訪れた人はみな書院に通され、そこでお茶菓子による歓待を受けつつ、スズムシの音を耳にしながらお坊さんの説法も聞くことになる。と言ってもそれは堅苦しいものではなく、軽妙洒脱なその話しぶりは、関西弁の話術も相まって、上方落語か、いっそ吉本の漫談のようでさえある。まあこれは、多少その時の受け持ちのお坊さんの個性も出るところかもしれない。しかし、抑えるべきところは抑えられているので、俗な世間話とは一線を画するものがあるのは確かだ。

 そんな説法の中、くだんの幸福地蔵菩薩へのお参りの仕方も教えてくれる。自分勝手な願い事や、他人を害する願い事(本邦ではそれを呪いと呼ぶ)、曖昧で具体性のない願い事はNGなのだそうだ。時節柄、縁結びを望む人も多いようだが、「自分にふさわしい人を」と言った感じの願いである必要はあるらしい。とりもなおさず、神頼みばかりで自助努力をしない者の願いはかなえられないと、そういうことのようだ。まさに引き合いに出されていたが、上杉鷹山の「成さねばならぬ」の教えの通りということだ。ちなみに私は、それほどの切実な願い事もなかったので、30分ほどの説法を聞き、お茶とお菓子を頂いて寺を辞去した。

 西山コースのゴールは、コースマップ上は上桂駅とされている。しかし、指導票は山を下りきったところにある51のそれが最後のものだ。マップ上のコースを辿ろうとすると、鈴虫寺への道が分岐する辺りまで進んでしまったら行き過ぎで、苔寺・すず虫寺のバス停と言うかバスターミナルがある東隣、竹の寺方向へと延びる道を辿らなければならない。そこに気付かず、松尾小学校のさらに先まで進んだところで引き返したが、地図なしで辿るには厳しい道だ。地図があっても迷うほどに分かりづらいのだが、この部分はもはや、狭義での京都一周トレイルのコースではないのだろう。

 13:32、阪急上桂駅に到着。すべての始まりとなった伏見稲荷駅には東山コースの1指導票があったが、ここは何もない小さな駅。あまりにも静かに、京都周回の山旅は終わりを迎えた。エクストラコースであるところの京北コースは、地図こそ手に入れているが、果たしてそこを歩く日が来るのか、今の時点では何とも言えない。後は道楽で、しるべのない上桂駅と伏見稲荷駅の間、いわば南コースを歩くことがあるかどうかといった所だ。
中の島公園からリスタート。

唐突に始まるハイキングコース。何となく不安…。

登りはじめより、頂近くの方がハイキングコースらしい。

わずかながら展望も得られる。嵐山の向こうに高雄方面を見る。

松尾山の地味な山頂。

鈴虫寺。この一角だけ観光地の雰囲気。

伏見稲荷駅の賑々しさとは好対照の上桂駅。京都一周の旅が静かに終わる。

 
アクセス 京都市内主要駅より京都バス「清滝」下車。
ガイド本 京都一周トレイルコース公式ガイドマップ西山 京都一周トレイル会
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