京都一周トレイル・北山コース西部・その1
三尾を経て清滝へ
■標高:436m
■歩行時間:5時間
■登山日:2015年4月25日

    京都一周トレイルは、盆地の街・京都を取り囲む山につけられたハイキングコースだ。北山コースは京都盆地の北側の縁にあたる山地を通り抜けるコースとなっている。全線通して見ると、比叡山から大原、鞍馬、高雄、清滝と続くコースとなっているのは以前に説明したとおり。1日で歩き切るには少々長いコースなので、公式ガイドマップ上は東部と西部に分けられている。中間地点となるのが鞍馬で、約5か月前に比叡から鞍馬までを歩いているため、今回は残りの西部コースを歩く。有名観光地を周遊するようだった東部コースに比べると、正統派の山歩きと言える道のりなのかもしれない。鞍馬街道沿いの叡山電鉄二ノ瀬駅を発って三尾を目指し、その後は清滝川沿いに愛宕山の麓に至る。その途上で純粋に観光地と呼べるスポットは、神護寺、高山寺、西明寺といった所だろうか。歩行距離は19.3劼箸覆襦



 20匱紊瞭擦鯤發となると、その歩行時間はまず5時間を見ておく必要があるだろう。大体、時間当たり4區覆爐噺世Δ里亙臣亙盥圓両豺腓旅佑方だ。アップダウンはもちろんのこと、足場が悪くスピードの乗らない区間もあるだろう山道を歩くとなれば、もっと時間が伸すことを想定しておかなければならない。と言うわけで、考え得る限り最も早く行動を開始するつもりでいたのに、最寄の駅で地下鉄を一本逃してしまったため、名古屋駅を出る一番早いのぞみに乗り遅れた。早朝の時間帯、10分遅れでたどり着いた名古屋駅では、ひかりしか捕まえられなかった。岐阜羽島や米原にも止るようなこの列車は、のんびりと京都駅に到着。遅れはどんどん拡大し、二ノ瀬駅にたどり着いたのは8:32。…おかしい。事前に調べていた予定からだと、正味地下鉄一本乗り遅れ分のずれしかない。結局、出町柳で遅れた分が吸収されてしまったのか。

 まあ、うれしい誤算と言うやつだろう。気を取り直して、今日の歩行を開始する。実は、前回の北山コース東部歩行では、道路工事の関係から二ノ瀬駅まで数百メートルと言う地点で歩行を打ち切っており、厳密に言えばきれいに全線がつながっているわけではないのだが、誤差の範囲の話だとして切り捨てることにした。府道沿いに46の指導票が立っていたので、これに沿って夜泣峠を目指す山道へと入って行く。ちなみにこの指導票は、東海自然歩道のものを間借りする形になっている。山道の始まりには解説板も立っているが、これは東海自然歩道単独名義のものだ。道中には京都一周トレイルの解説板が皆無なわけではないが、東海自然歩道のそれと比べると、数でも質でも見劣りがする。特に東海自然歩道京都コースの看板は、写真やイラストをふんだんに使った新しいものなので、それが顕著だ。

 その看板によると、峠の名は、幼少の惟喬親王がここで夜泣きをしたという言い伝えによると言う。歌人としてはひとかどの人物だったようだが、さほど著名ではないのは、政治的に弱い立場の皇族だったことが影響しているのだろう。隠者の風情のあった人らしく、晩年は都を離れて隠遁生活を過ごし、木地師とのゆかりについて言及する伝説もある。そんな親王も、幼少のみぎりにこんな山中で一夜を明かすことになったのだとすれば、さぞ心細かったことだろう。

 現在の夜泣峠は、ハイカー向けに整備されこそすれ、基本的には行きかう人もごく限られた、静かな山道となっている。今日のコースで二回訪れることになると思われる最初の山場がここで、極端に長いわけでもないのだが、なかなか急な登りが続く。最序盤だから体力はあるものの、体が温まっていないこともあり、なかなか骨の折れる道だ。20分ほどで鞍部まで登りきることができたが、これをそのまま踏み越えていくと栗夜又谷へと下ることになる。地図を見ると「旧ルート」となっており、山幸橋付近で本線と再合流するようだ。しかし、あえて旧ルートに進む理由もないので、谷への道を右手にやり過ごし、いましばらく続く登り坂に付き合う。なお、東海自然歩道はこの旧ルートに沿って進む。その後は、いったん京都盆地に入り、何度か京都一周トレイルとクロスしつつ、高雄で再合流。高尾から先は、嵐山の渡月橋近辺までは「同道」することになる。つまり鞍馬から高尾までは、いつの日にか東海自然歩道歩行としてもう一度歩かなければならなくなる。

 10分ほどで標高420mの向山に到着。今日のコースはまだまだ始まったばかりだ。特別眺めが良いわけでもないので、黙々と歩く。向山から先は下り基調だ。眺めが良いのは、どちらかと言えば52-3指導標付近だろうか。山間に開けた市原の町が見える。

 9:40、山を一度下り切り、川を渡る。なんてことのない山間の川だが、これが賀茂川だ。トレイルのコースがかすめる山幸橋よりわずかに下流で、鞍馬川と合流し、京都盆地に注ぐ。出町柳で高野川と合流した後は、一般によく知られる鴨川と呼ばれるようになり、京都の街の東側を貫流する。

 賀茂川を渡ると、京都一周トレイルは再び山中へと引き込まれていく。当初は緩やかな坂が続き、新緑がまぶしい里山の裾を行くことになるのだけれど、やがて傾斜は厳しくなって行く。どこかしら陰鬱ささえ湛える谷間の道だ。ところによってはそれなりの険しささえ感じさせるこの谷の名は、盗人谷。本日第二の山場となる。何か剣呑な地名の由来は、現地でも詳らかにされておらず、ネットで調べてもはっきりした由来は見つからない。場所柄、かつては山賊の類が現れたのかもしれないと想像をめぐらせるのは飛躍ではあるまい。多少ひねるのであれば、この辺りが世に名高い北山杉を産するエリアに近いことから、あるいは盗伐を意味するのかもしれない。

 盗人谷の登り始めから最高所となる小峠まで、200mほどを登ることになるようだ。小峠から先は、なだらかに下る杉木立の中のプロムナードが続き、10:27、いきなり人里に出る。登った高度をほぼ保ったままに民家の裏庭に出るため、どうにも唐突な印象だ。このうららかな春の山里が氷室町で、その地名は名前そのまま、この地に氷室が存在したことに由来しているのだそうだ。その氷室跡は現在もこの地区に残されており、トレイルのコースを少し外したところに位置しているのだけれど、氷室にゆかりの氷室神社は道すがらにある。氷室町からこっち、しばらくは林道規格の舗装道が続く。長く急な登りはないけれど、足裏に伝わる固い感触は優しくない。

 氷室町からの舗装道区間はわりと長く、30分ほども続く。最近の東海自然歩道岐阜県コースの水準に比べればまだ短い方だが、何とか舗装道を外そうとする京都一周トレイルの中にあっては長めの舗装区間だ。途中、上賀茂あたりの町並みを見下ろす展望区間を一瞬はさみながら、道は古くからの展望地だったと思われる京見峠へ。が、現在ではそんなに眺めが良くない。この前後はなぜか分岐の多い区間になっており、北回りとなる鑓磨岩への分岐点があるほか、今回私の歩いた京見峠ルートが季節閉鎖区間となる関係で、源光庵の方に下る迂回路が存在する。どうも付近が松茸山となっているらしく、秋のシーズンに基本コースを通ると罰金を徴収されると言う。後述の迂回路は、たぶん200〜300mを下って登り返す上、経路自体もかなり迂遠だ。あるいは今後、北回りルートがスタンダードとなって行くのかもしれない。「所有者のご好意で」利用できるというレストランのトイレがあるのも、この北回りルートである。
小さな駅、二ノ瀬駅。ここに来るまでには「紅葉のトンネル」がある。

鞍馬街道に面する二ノ瀬の街からスタート。

夜泣峠。ここまでの登りが意外とキツイ。

山幸橋と賀茂川。

盗人谷一の橋、とある。

うららかな春の山里・氷室。

展望スポットとつぃてはここがピークか。この後に来る京見峠はどうも冴えない。

京見山荘と分岐点。直進しても右折しても、行き着くところは同じはず。

 
アクセス 叡山電鉄「二ノ瀬」下車。
ガイド本 京都一周トレイルコース公式ガイドマップ北山西部 京都一周トレイル会
関連サイト

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