妙法ヶ岳・その1
華厳寺から即身仏を訪ねて
■標高:666.9m
■歩行時間:3時間30分
■登山日:2015年3月8日

    前回も書いたとおり、「妙法」とは一般に法華経の教えを意味する。一応仏教国の日本では、仏教用語を山名に頂く山も珍しくはなく、多分に漏れず同名の山は秩父にもあるらしい。が、今回私の目指す山は、岐阜県揖斐川町にある方の妙法ヶ岳だ。秩父のそれと比べるとずいぶん標高も低く、666.9mのちんまりした山のはずなのだが、間近で見ると高くそそり立つような圧迫感がある。山深そうな印象のある根尾谷周辺も、低平部の標高がさほどではないせいなのかもしれない。



 東海自然歩道の旅は、前回までに妙法ヶ岳の山腹にある谷汲山華厳寺へと進んだ。次のステージは、妙法ヶ岳登山となる。季節的な話題で、このコースの少し先、池田山麓の霞間ヶ渓(かまがたに)と言うところは桜が良いらしく、叶うならば花盛りの頃にこのコースを歩いてみたくなった。順繰りに歩いて行った場合、最短でこの先3回目には到達可能と言う計算も成り立つ区間だ。中断ポイントのない日坂越は、最低限でも東津汲〜春日とならざるを得ないだろう。肝心の霞間ヶ渓はその次に来るとして、今回の歩行で華厳寺と東津汲を結べば計3回となる。

 普通に行けば、この目論見も十分可能なものに思えた。二山越えることになるが、総歩行距離20卍度は無茶な距離ではない。ところが実際には、妙法ヶ岳を下った先の横蔵寺から東津汲までの区間で数年前に土砂崩落が発生しており、現在は迂回路設定されたコースを歩かなければならなくなっていることがわかった。これが、普通の県道である。何せgoogleのストリートビューで全線その様子を下見できる。1.5車線幅程度の舗装道が続くその峠越えの道は、自動車も走る道であるだけに傾斜が緩い代わりに屈曲が多く、計測してみたところ本来のコースより5〜6卍度は余分に歩かなければならなかった。さらに、カシミールで最高地点の高度も調べてみると、高さでも本来よりは100mほど高いところを歩くことになる。通常コースを歩ける場合の所要時間より、2時間程度は余分に歩かなければならない。容易ならざる道のりだが、眺めだけはそこそこ良さそうだった。

 もう一つ悪い材料はあった。華厳寺までの足だ。樽見鉄道谷汲口駅までは、最速で午前8時につくことができる。幸先の良いスタートになるかと思いきや、その先、華厳寺までのバスがない。前回の歩行終了後、華厳寺から駅まで、わずかに10分ほど乗ったに過ぎない揖斐川町のコミュニティバスだが、この道のりを歩くとなると、1時間弱はかかる。が、バスを待っているとスタートは相当遅くなる。体力の消耗を引き換えにしても、華厳寺までは歩かなければならなかった。

 こうして、華厳寺の本堂にたどり着いたのがほぼ午前9時のこと。この先はもちろん、妙法ヶ岳の山頂まで登ることになるが、さらにその先は横蔵寺に下るまでエスケープポイントがない。今回のガイドとしたのは「ヤマケイアルペンガイドNEXT 東海周辺 週末の山登り ベスト120」。それによると、コースタイムで4時間半となるコースだ。帰りのことも考えると、横蔵寺到着時刻が12時を回っていたら、今日で東津汲まで一息に歩くことは断念した方が良いだろう。横蔵から東津汲まで、所定のコースを歩くと約16劼瞭擦里蠅判个討い拭

 まずは本線復帰する。前回、華厳寺への道と本線が分岐するポイントの指導標が「名鉄 谷汲駅」のままになっていると書いたが、ここでそんなことを指摘したせいなのか、今回はラミネートで「旧名鉄谷汲駅」と修正されていた。いや、普通に考えてそんな影響力があるはずはない。それはさておくとして、かつての谷汲駅には現在、昔の車両が保存されるとともに、谷汲昆虫館と言う施設として存続している。前掲写真がそれだ。バスで谷汲口駅と華厳寺を行き来するだけでは、立ち寄ることもない施設だっただろうが、今日はたまたまその様子を覗くことができた。 古色蒼然とした東海自然歩道谷汲コース概念図には、珍しく高低差の読める断面図となっているものがある。前回「起伏も激しく途中で下山する支線もありません」と脅かしてきたあれである。それによると、華厳寺から妙法ヶ岳までの落差が大変なことになっている。デフォルメはあるのかもしれないが、表現上はまるっきり絶壁みたいな道だ。まあ、さすがに絶壁を攀じ登ることはないだろうと思いながら道を行くのだけれど、なかなかに急な道には違いない。登り始めてから約30分を経過し、華厳寺の奥の院を通過してから先は、ことにそれが顕著である。ジグザグに折り返しながら高度を稼ぐ道は、予想以上にそそり立った斜面につけられている。

 東海自然歩道が濃尾平野に入ってから続いてきた、丘みたいな山とは一味違う、まごうことなき山道だ。登り続ける時間はそれほどに長くはないが、予想外に手こずりながら、9:50に妙法ヶ岳山頂に到着。誰かが残した手製の山名票がある。666m。獣の数字。前情報からわかっていたが、展望のない山だ。今はまだ芽吹き前だから、木々の間から遠景がのぞくようなこともあるが、新緑から紅葉まで、要は木が葉をつけている間は何も見えない道に違いない。

 さて、くだんの概念図はこのコースを、妙法ヶ岳を過ぎてからというものなだらかな道が続き、横蔵寺の直前で一気に高度を下げるかのように表現していたのだけれど、全然そんなことはなかった。結構アップダウンのある道だ。一つ一つの高低差はさほどでもないのだが、急坂が繰り返されるため、なかなか疲れる道だ。能郷白山くらいは見えないかしらと思いながら、時にきょろきょろしながら歩を進めるのだけれど、ごく近くの山しか見えない。妙法ヶ岳よりは200〜300mほどは上背のあるそれらの山は、山頂近くに雪を残している。

 こちらの道は、雪がないだけでも御の字かと思いながら歩いていたら、道が雪に飲まれた。幸いほぼ平坦な道だったので、特別な装備は何もなしでも歩けた。が、それはそれとして、軽アイゼンを携行しなかったのは油断や慢心だろう。多少雪が残っていたとしても、前夜の雨でほとんど融けてしまったのではないかと、そんな読みもあった。しかし木々による被覆のない尾根北側斜面という、雪が吹き溜まり易く溶けにくい条件を備えたこの道は、まだしばらくは雪に埋もれたままなのかもしれない。もともとそんなに幅が広くなかったであろう道の右肩は切れ落ちた急斜面となっており、万が一雪で足を滑らせ転げ落ちればただでは済まなさそうである。注意を払いながら、先へ進む。運良く、道が上り下りする前に雪は消えた。
古刹谷汲山華厳寺再び。

長くはないが、思ったより急な坂が続く序盤。

奥の院は工事中だった。

静かな山頂。

積雪の道を振り返る。

 
アクセス 樽見鉄道谷汲口駅より揖斐川町コミュニティバス「谷汲山」下車。
ガイド本 ヤマケイアルペンガイドNEXT 東海周辺週末の山登りベスト120 山と渓谷社
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