京都一周トレイル・北山コース東部・その2
洛外の名所を遍歴する
■標高:794m
■歩行時間:5時間20分
■登山日:2014年11月21日




 拝観30分、12時半に三千院を出発。東海自然歩道は、三千院の場合ほどにベタ付けすることこそないものの、寂光院の方にも寄り道していく。大原女の小径と名付けられており、特に小川と並んで歩く三千院からの区間には、土産物屋や茶屋が立ち並び、観光客の姿が多い。そんな中にも東海自然歩道の指導標が立っているのが不思議な感じがする。とは言え、さすがに有名観光地の一画に建てられているだけあって、まだ新しく小洒落た指導標である。コース案内板も非常に綺麗だ。愛知県内コースのような、比較的新しいがどこかいかつい指導標とは違い、また岐阜県コースのそれのような古ぼけたものとは当然別物だ。単なる指導標でも、地域性が出るものである。

 京都バスの停留所、というよりターミナルのような整備状態だが、その傍らをかすめて寂光院方面へ。東海自然歩道をトレースする場合、ここは中断ポイントとして有用な場所となるだろう。そこまで考えてコース設定をしている京都コースは、恐れ入ったコースだ。素朴な野山を経巡り純粋に自然散策路たらんとしている愛知県内コースとベクトルは違うが、どちらもよく練られたコースである。

 大原は、本質的に農山村だ。逆説的だが、三千院も寂光院も、高貴な人が隠棲するための場所として、都の喧騒を離れたこの地に営まれている。卑近な話では柴漬けの発祥地としてもよく知られ、あちこちに紫蘇畑が広がる風景を想像していたのだけれど、実際歩いてみるとそれは意外と目につかない。今歩いている道自体が、里の周縁につけられているせいもあるのかもしれない。素朴さばかりを強調すると今現在のこの地の姿を見誤る恐れがあるのだけれど、今風の住宅も建っている一方で、それさえも妙に絵になるような気がする土地だ。

 東海自然歩道、と言うより大原女の小径を歩く観光客の姿は多いものの、寂光院への道と分かれてからは、さすがに地元の人以外が目につかなくなった。南をめざし、京都一周トレイル北山コースの27指導標に到着。ここで再び二つのトレイルコースは合流する。どちらかと言えば、京都一周トレイルの方が王道?の農村地帯を歩くらしい。

 緩い舗装道路を登りながら、江文峠を目指す。峠とは言いながら、100m登るか登らないかの比高差しかないため、そんなに厳しい道ではないが、舗装道が土の道に変わるあたりには「くまに注意」と書かれた手製の看板がある。そういう意味では、意外と自然の気配が色濃い地域なのかもしれない。くだんの看板に書かれたクマのイラストがやたらかわいい調なのは気になる。13:28に車道となっている江文峠をに到着。バス停の存在を発見したが、資料によれば季節運行、しかも日祝日運行のバスらしい。トレイル歩行の際の命綱とするには心細いが、大原と鞍馬を結んでいるようだ。峠から、この車道に着かず離れず下って行ったところが静原である。ここも農山村である。時計を見ると、13:46。意表を突かれる。思っていたより早い。この先、薬王坂を越えればそこはもう鞍馬。しかも薬王坂までは2劼發覆ぁバ…バカな…。か…簡単すぎる…。あっけなさすぎる。

 大原と違い、特段の情緒を演出するでもない普通の農山村静原を突っ切り薬王坂へ。薬王坂の名は、薬王如来に由来する。と、現地の東海自然歩道看板は語っている。一般に薬王菩薩と呼ばれている仏様と同神格のような気はする。菩薩は如来候補生である。いずれにせよ、ややマイナーな仏様だろう。その昔、伝教大師が鞍馬で薬王如来像を彫り、比叡山に帰ろうとした時にこの坂で仏様がその姿を現したという伝説があるのだそうだ。伝教大師=最澄なので、一般的には最澄伝説の地とした方がなじみ易いのかもしれない。そんな薬王坂の最高地点までは、静原のあたりから200m近くを登らなければならないが、登りらしい登りは一向に始まらない。もちろん、東海自然歩道の指導標は、薬王坂までの残距離を着実に減らしていく。果たして、残り1劼鮴擇辰道呂泙辰震王坂は、コンクリート舗装の無骨な道ではあったが、スリップ防止の溝が入れられるような急登だった。横への移動ばかりが長かった今日の道のりの中では、最もハードな坂だ。土の道になってからは幾分傾斜が緩み、14:18に薬王坂の鞍部へ。そこから10分ほど下ると鞍馬である。東海自然歩道=北山コースは、かの鞍馬寺の門前を通っているため、本日最後の寄り道。時に14時半。15時を回る想定でいたが、改めて計算してみると、まあ普通の着時間なのかもしれない。

 鞍馬寺は不思議な寺だ。予備知識がないまま現地を訪ねても違和感を感じたが、その違和感の正体は間もなくわかった。宗派を掲げていないのだ。少し進んでみると「鞍馬弘教」という表現が出てくる。と言うことは、仏教寺院ですらないということか。一方、千手観音や毘沙門天を祀っている事実もあるらしい。時折その名を聞く護法魔王尊も祀っている。魔王尊は、何でも金星からやって来たとかで、その立ち位置は独特だ。Wikipediaによると、牛若丸こと年少の源義経に修行をつけた天狗と同一視する考え方もあるようだ。いずれにせよ、仏教系の寺院であるとは言えそうだが、どうもつかみどころがない。

 しかし、比叡山から十数劼鯤發い討た私にとって、当面一番厄介な問題となるのは、鞍馬寺の宗旨や教義ではなかった。入口となる仁王門付近から金堂まで、百数十メートルを登らなければならないのだ。救済措置的なものとして、100円で利用できるケーブルカーも存在はしているが、非常に混雑するので、健康のために、そして数々の旧跡を見て回るため、歩いて登ることが奨励されている。金堂に続く坂は、清少納言も枕草子に書いたという、結構急な坂だ。地面の状態もあり、下りの時には滑って転んでもおかしくなさそうな雰囲気はあるが、一応今回は山行なので、自分の足で登ることにする。道中には京都三大奇祭の一つとして知られる鞍馬の火祭で名高い由岐神社などもある。そう言えば、ずいぶん前に買った日本の祭りDVDには鞍馬の火祭も収録されていた気がする。帰ったらもう一度見てみようか。

 そんなことを考えながら道を行くこと20分。ようやく金堂にたどり着いた。高所だが、眺めはもう一つパッとしない。ただ、今日のスタート地点である比叡の山並みが見えるところは感慨深い。また、道中の紅葉も慰みではあった。が、妙に疲れた。金堂の写真を撮影したのだけれど、いつの間に現れたのかも定かでない、どこかのおじさんの後頭部がバッチリ写りこんでいたのに気付かなかったほどだ。考えてみれば今日はここまで、地図を確認したり三千院に立ち寄ったりしたのを別にすれば、まともに休憩を取っていない。ある意味恐るべきことだ。といった所を言い訳にして、下りはケーブルカーを使う。

 鞍馬まで来れば、ゴールとなる二ノ瀬駅は間近だ。でかい天狗のオブジェを見学しに行った鞍馬駅前の人出の多さから推測するに、叡山電鉄の始発駅となる鞍馬駅から電車に乗らなければ座れなくなる可能性は考えられるが、北山コース後半戦のことも考え、もう一息頑張らねば。地図上鞍馬街道と表記されている一本道をとぼとぼと歩いていく。山道ではなく、狭い谷筋に窮屈そうにつけられた一般道なので、コースをロストする心配もない。ただ、貴船口駅を少し行き過ぎたところで、片側交互通行の規制をかけて道路工事をしていた。そこに徒歩で突入すると咎められそうな気がする。残りは1劼頬たないので最後まで歩き切りたい気はするが、トラブルを敬遠し、急きょ貴船口駅をゴール地点に変更。時に15:42。変な時間である。普通に歩いてもゴールは16時頃だっただろうが。そこから京都の街中に戻って17時半、鴨川や先斗町あたりでもやもやして夕食にする、本来はそんな計画だった。

 残された区間がどうと言うこともない舗装道であるため、後半戦のスタートを二ノ瀬にするか貴船口にするか、少し悩ましい。北山コース西部は、距離や累積標高の点からもなかなか厳しいと思われるため、なおさらだ。中断ポイントを設定するとしたら、考えられるのは高雄の高山寺近傍だろうか。いろいろ考える。が、実際この区間に着手できるのは、もう来年のことになると思う。ゴールデンウィーク以降になるだろうか。

 ともあれ、ここまででひとまず、京都一周トレイルは半分までを歩いたことになる。京北コースは除外している。あれは、好成績で3コースを踏破したハイカーの前に、「我は京を極めし者。うぬらの無力さ、その体で知れい!」 」とか言って姿を現す感じのEXコースだ。挑むことがあるのかどうかは怪しい。まあ、脳裏に去来するこもごもは次への課題として、今日はひとまず出町柳駅まで戻り、そこから三条駅まで引き上げた。
めっきり人通りもへった大原の里道。

クマが出るらしい。怖くないのはいいことなのか…。

静原をめざし、江文峠を越える。

薬王坂。短く、何の変哲もない峠だが、急な坂道。

鞍馬寺に到着。

金堂まではまだ遠い。

由岐神社。京都三大奇祭の一つ、「鞍馬の火祭」で有名。

金堂はこれしか写真がない…。

鞍馬山の紅葉が黄昏に映える。

鞍馬駅前の天狗。もう一息歩かねば。

志半ば、貴船口をゴール地点に変更。

 
アクセス 叡山電鉄「八瀬比叡山口」下車。ケーブルカーで「ケーブル比叡」駅へ。
ガイド本 京都一周トレイルコース公式ガイドマップ北山東部 京都一周トレイル会
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