京都一周トレイル・北山コース東部・その1
洛外の名所を遍歴する
■標高:794m
■歩行時間:5時間20分
■登山日:2014年11月21日

    京都一周トレイルは、盆地の街・京都を取り囲む山につけられたハイキングコースだ。南山コースがないのは東山コースの時に述べたとおり。東山と西山の二つをつなぐのは盆地の北部を走る北山コースである。東西のコースよりは幾分か長く、比叡山から始まって、大原、鞍馬、高雄、清滝と続くコースの公式マップは、東部と西部でさらに二分されている。仮に一息で歩こうとすると、ざっと40匐瓩なる。今回はこのうち、北山東部コースを歩くことにした。東山コースの終点となるケーブル比叡駅から、鞍馬の玄関口・叡山電鉄二ノ瀬駅までとなるその道のりには、東山からの続きで比叡山を起点にする限り長い登りはなく、京都市郊外の有名観光スポットを周遊するような名コースとなっている。それだけにと言うべきか、東海自然歩道と重複する区間も長い。いやむしろ、東海自然歩道の方が歴史は古いのだけれど、そんなわけで、今回は東海自然歩道と京都一周トレイルの兼用コースである。



 比叡山から鞍馬まで歩くと、歩行距離は18匱紊箸覆襦1日の歩行距離としては、短くはないが長くもない。何なら日帰りも可能だが、例によって京都観光と絡めるべく、そして帰りに余裕を持つべく、新幹線で朝から京都に入って夕刻の京都市街に戻って一泊する計画とした。比叡の山上がスタート地点となる今回のコースは、スタートまでのアクセスにケーブルカーを使う必要があるものの、これの動き出しが午前9時過ぎなので、京都に前泊する意義も値打も希薄だった。なお、この便で山上に上がると、その先の延暦寺までの足となるバスがまだ動いておらず、周辺施設もまだ営業を開始していないので、叡山観光にはあまり向かない。

 午前6時半に家を出て、比叡山の稜線に立ったのが9時少し過ぎ。11月と言う時期のこの時間、京都盆地を見下ろすこの場所は、肌寒いでは済まないほどに気温が低い。と言って空気が澄みきっているかと言うとそうでもなく、京都の街は、薄い朝靄の底に佇んでいる。亀岡の方は、雲海のように濃い霧で包まれているようにも見える。この地方では珍しくない気象条件なのかもしれない。何にしても、前回の東山コースのラストが、同じ場所でも完全にガスにまかれていたのと比べれば、雲泥の差の好天ではある。山頂近いロケーションに妙なゴール感が漂うのは否めないが、スタートの風景としては非常に際先が良い。9:20、ケーブル比叡駅前をスタート。

 東山編の最後は比叡山の山頂とも言える大比叡を目指した。その際に横切ったスキー場の跡を、今回は横目に見る形でやり過ごす。しばらくは砂利の道が続く。そこはどうにも色気がないが、道々の木は色づき始め、その隙間からは、これから目指す大原の里と思しき山里の風景が見える。雰囲気は悪くない。ハイキングコースで出会うものとしては色気がない最たるものの奥比叡ドライブウェイに行き会ったのは9:43のこと。ここで京都一周トレイルは、滋賀県方面から延びてきた東海自然歩道と合流する。ドライブウェイを横切った先には山王院堂と言うお堂がある。この先しばらくは、延暦寺の堂宇群の間を縫うような道が続く。なお、延暦寺の核心部分とも言える根本中堂などがあるのは、東海自然歩道を滋賀方面に歩いて行った先だ。以前、何かの折にケーブルカーを使って京都から滋賀へと比叡山を越えていった時にこちらの道を歩いたこともある。ネットで散見される情報の中には、東海自然歩道の歩行中であれば、延暦寺境内を通過する場合であっても拝観料を請求されないとしているものもあるが、その時は寺が目当てでないにもかかわらず、バッチリと金銭を要求された。延暦寺はこの諸堂拝観に関わるシステムに複雑なところがある一方、そのことを理解していない闖入者に対して容赦なく高圧的なところがあるのを何度か目の当たりにしている。延暦寺の土地を通っているので仕方ないのだとは思いながら、この先、西塔や転法輪堂の傍らを通る時、何か吹っかけられたら面倒だなとも思う。

 10時を少し回り、再びドライブウェイに並行する道に進んだ。ここまで無事に来れば、延暦寺の領域は抜けたと言って良いだろう。人工物が良く目につくとは言え、開放的な雰囲気の気持ち良い道だ。

 玉体杉と呼ばれる杉の巨木の前を通り過ぎて少し行くと、京都一周トレイルと東海自然歩道は再び枝分かれする。東海自然歩道はコースとしての見せ場を作ろうと、横川中堂の方を目指して進んで行く。これがあるのが滋賀県内なので、卑しくも京都一周を掲げるコースは、府県境の稜線を辿って行く。長い坂道こそないが、比較的細かなアップダウンが繰り返される区間だ。その頂点と言えるのが、794mの水井山で、今日のコースでは最高点なのだと思う。三角点があるだけのピークで、眺めが傑出しているわけでもない。10:44に通過。古来、滋賀と大原を結んだ仰木峠に向かって下って行く途中で、東海自然歩道と再合流する。そして峠を越えて間もなくで再分岐。京都一周トレイルは静原・鞍馬に向かって最短距離で大原を抜けるため、ボーイスカウト道と名付けられた道を下って行く。対する東海自然歩道は、三千院・寂光院の方に寄り道するべく、コースを北に振る。今日のコースは、まっすぐ歩いて5時間ほどのコースと踏んでいる。踏破するだけだとゴール時間が中途半端に早まってしまう。せっかく通る大原の里だ。三千院に寄り道するつもりで東海自然歩道に歩を進めた。涸れかけた沢のような、湿潤な道だ。決して歩き易くはない。

 11:40、山道は終わりを迎え、大原の家並みの外れに出た。前方、さほど遠くはないところにも山並みが見え、まさに山村の趣がある。古都を売りにする京都の中でも、独特の立場を占める大原の横顔が垣間見えた気がした。と同時に、こんなところに観光客が集まるのか、不思議に思わなくもない。しかし、そこから約20分をかけて三千院の門前まで進む間に、状況はめまぐるしく変化していった。次第に、土産物屋をはじめ、観光客を相手にする飲食店が目立つようになり、半ば当然にそれらを利用する旅行者の数も増えていった。東海自然歩道は、三千院の入口まで進んで左折する。寄り道と言うほどの寄り道にはならない位置関係だ。ちょうど正午、三千院到着。

 三千院は天台宗のお寺なのだそうだ。現地では「三千院門跡」と出ていることが多い。門跡と言えば寺の格はかなり高く、皇族も入るような寺のはずだ。どちらかと言えば鄙で売るイメージの強い大原にあって、広い敷地内に、気品を感じさせる建物群や、大きな庭園を備えているのも頷ける。が、落ち着いた佇まいとは行かないのが大原と言う土地の宿命であって、平日の昼だと言うのにやたらと人が多い。紅葉シーズンの影響もあるのだろう。人波をかき分けるように、宸殿、客殿、往生極楽院といった所を順繰りに拝観して行く。もう少し人が少なければと思わずにはいられない。それに、今日はこの先も歩き旅が続く。あまりのんびりしていると日のあるうちに鞍馬まで行きつけなくなることもあるのではないか。そう考えると、どこか気忙しくもある。
紅葉の頃、比叡山へ。

抜けるような青空の中をスタートする。

すすき野となったスキー場跡を行く。

北山コースは延暦寺の寺域を行く。拝観料が必要なのは根本中堂周辺のはずだが…。

一応今日の最高所。水井山。

大原に出た。京都一周トレイルはほぼ直進、東海自然歩道は右に折れる。

観光地の風景。ここはトレイルのコースからは外れるが、東海自然歩道上。

錦秋の三千院に寄り道。

 
アクセス 叡山電鉄「八瀬比叡山口」下車。ケーブルカーで「ケーブル比叡」駅へ。
ガイド本 京都一周トレイルコース公式ガイドマップ北山東部 京都一周トレイル会
関連サイト

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