寧比曽岳〜田口・寧比曽岳・その1
段戸裏谷を歩く
■標高:1120.6m(寧比曽岳)
■歩行時間:5時間50分
■登山日:2014年11月8日

    東海自然歩道上で、俗に難所と呼ばれる場所は何か所か存在している。最たるものは丹沢のようだが、全般に険路・難路の類である。ただし、それとは違う意味での難所となる場所もまた、確かに存在している。端的に言ってしまえば、交通不便の地である。愛知県コースの場合、愛岐丘陵のあたりを歩いているうちは良いのだけれど、寧比曽岳の前後区間となると、鉄道網はもちろん、バス路線からも外れてしまっているため、県内踏破を考える場合でさえ、一つのボトルネックとなってしまう。いちおう、伊勢神峠のバス停から寧比曽岳の山頂を目指すハイキングルートもあるので、中断ポイントとしてはここを絡めざるを得ないが、いずれにしてもその前後のアクセスポイントまでの距離が長い。要するに、香嵐渓〜寧比曽岳、そして寧比曽岳〜田口は脱出点なしで二十数劼諒盥圓魘いられるロングコースとなる。



 東海自然歩道歩行は、春に香嵐渓から寧比曽岳までをつなげることができた。そのとき予定では、秋に寧比曽岳から先の北設楽郡設楽町田口までを歩く予定だったので、満を持してこれに挑む。ほとんど登りはないものと思われるが、約25劼鯤發ことになるため、歩行距離は長い部類に入る。

 寧比曽岳への登山ルートとして、およそ考えられるものは段戸湖からのルート、伊勢神・大多賀からのルート、金蔵連からのルートといった所だ。寧比曽岳の山頂が東海自然歩道上にあるため、いずれもそれに沿って歩くものだが、後二者が尾張・西三河からのアクセスルートであるのに対し、前者は東三河方面からのアクセスルートとしての色彩が濃い。ちなみに、本線ルートは金蔵連峠から寧比曽岳山頂を経て段戸湖に入り、田口を目指す。伊勢神峠から寧比曽山頂へと延びるのは派生コースの恵那ルートだ。

 名古屋から伊勢神まで、公共交通機関で行くのは少々厄介である。名鉄浄水駅からとよたおいでんバス、同豊田市駅から名鉄バスでいったん足助まで行き、そこからおいでんバスの稲武行に乗り継ぐことになる。乗り継ぐことになるとは言いながら、これがなかなかうまくいかない。今回は、7:27に浄水駅を出るおいでんバスに乗り、8:23に香嵐渓バス停で下車。稲武行のバスが来るまでは1時間ほどがある。なお、稲武行はここまでの道中にある足助病院から出ており、しばらくの間は百年草行(いわゆる足助行)と同じルートを走ることになるため、香嵐渓で下車する必要はない。今回は、紅葉シーズンに差し掛かろうとしているため、一応は香嵐渓で降りたものだ。もっとも、足助の町は祭モードに入ってはいたものの、木々はほとんど色づいていなかった。でも「常盤は緑、永遠の色」とも言う。喧騒のシーズンに差し掛かろうとする直前の山里の雰囲気には、独特の味もある気がする。

 9:50、伊勢神バス停に到着。家を出てからすでに3時間以上が経過している。今回の目的は、あくまで東海自然歩道の本線を歩き通すことにある。寧比曽岳の山頂に立つところがようやくスタートとなるため、そこまでの道すがらにある各ポイントについては、到着時間だけを書いておく。

9:55 ドライブイン伊勢神
10:17 伊勢神峠
10:50 大多賀峠
11:20 寧比曽山頂

ちなみに、この道順自体は前述したとおりに寧比曽登山のメジャーコースの一つである。と言うか、公共交通機関を使おうとすると、これ以外のルートは現実的でない。

 山頂で軽く食事をとった後、富士見峠方向へ出発。こんな名前だが、今ではすっかり見通しも悪くなっている。富士山を見たいなら寧比曽の山頂からで十分だ。運も絡むが、一応この場所から富士を遠望することは可能なようだ。ただ個人的には、西穂高独標から小さな小さな富士山を見て以来、富士を見るなら結局は静岡・山梨に行くべきなのだろうと変節したため、この場所でどうこうしようと言う感慨もない。

 東海自然歩道でも愛知県内コースらしい立派なトイレのあるこのポイントから先は、東海自然歩道らしからぬ笹薮の道となっている。本当にこちらで良いのか、不安に思えてくるほどだ。とりあえず、標高が上がって肌寒く感じ始めていたこともあり、長そでのシャツを羽織って、さっさと熊笹が生い茂る道へ突入する。オレはまだようやくのぼりはじめたばかりだからな。このはてしなく長い東海自然歩道本線をよ。

 実際には、道はぐんぐん下って行く。盛夏であればひどい藪漕ぎを強いられていたのではないかと思われる道には、しかし登山者がいないわけではない。むしろ、これから山頂を目指して登って行く登山者はかなり多い。層が若くないのは、いかにも三河の山といった所だ。下っている限りの印象だとなかなか急な坂なので、お年寄りは難儀をしそうだ。

 20分ほど歩いた。道は出来山の支尾根あたりの山腹につけられていると思しき区間に入った。左手がわりと深い谷になっており、それを巻くようにくねくねと曲がる山道だ。と言って、危険を感じるような場所ではなく、ところどころにある沢にバッチリ橋が架けられているあたりは、やはり東海自然歩道だ。森の懐に抱かれるようなこの道は、スギの木が卓越しており、わりあいに人工的なものであることが分かる。しかし、段戸裏谷と呼ばれる寧比曽岳南東麓の地域には、愛知県内最大規模の原生林が広がっており、それを裏付けるかのように、いつしか周りの森林からスギの木は姿を消していた。実物を見てもほとんど樹種が分からないが、主だったところでモミ、ツガ、ブナ、ミズナラなどが生えているのだそうだ。カエデの類のように、真っ赤に紅葉する木はないものの、黄色く色づいた木々も多い。
伊勢神峠の鞍部にある伊勢神宮遥拝所。

展望のない富士見峠。

登山者がいないとは思いにくいが、それでも藪化する道。

段戸裏谷の原生林。

 
アクセス 名鉄浄水駅よりとよたおいでんバス「足助」乗り換え、稲武線「伊勢神」下車。
ガイド本 ふれあいウォーク東海自然歩道 東海版 風媒社
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