西穂独標完結編・その2
再戦
■標高:2701m
■歩行時間:4時間30分
■登山日:2014年9月27日




 西穂山荘の直上が森林限界となっているため、ここからわずか進むうちに道の見通しはずいぶん良くなる。西穂丸山のあたりは単に見晴らしの良い山道なのだけれど、前途には西穂高の山頂や独標が見える。そしてある意味それらよりもインパクトの強い激登りも見える。西穂山頂までは行かない途中下車の登山者であっても、付き合わねばらない登り坂だ。もちろん、前回山行の記憶も生々しい、長く急な登りである。あの時はどこまで続くのかがまったく見えていなかったが、今日は一応終わりが見えている。見えているが、結構長い。こぶし大か、それよりもさらに一回り大きな石の敷き詰められるガレた坂道は、はっきり言って登り辛い。穂高の地質に照らしても、特異な坂道と言う気がするが、もしかして登山道保護のために人為的に敷き詰められたものなのだろうか。

 坂道を登りきると、痩せた岩稜帯に入る。前回はやはり、濃霧のために岩稜を外した足下がどうなっているのかよく分からなかったが、今日はそういった所もよく見える。いい滑落ができそうな急斜面である。ちょっぴり怖いが、痩せ尾根の続く区間は距離にすれば長くはなく、そのまま独標の根元にたどり着く。前回撤退を決断した場所が、独標の直下、慣れた人なら2〜3分もあればゴールにたどり着けそうな場所であったことがわかる。ここまでの岩稜よりは、ある意味で最後の登りの方が怖い。本当に攀じ登る感じの岩場で、ペンキマークは見えるのだが、およそ道があるようには見えない。幸い、今回は前の人がいるのでその動向を見極めれば無理なルートに進路を取ってしまう危険は避けられそうだが、人が多いがゆえに、距離を詰め過ぎて別な危険を生み出さないよう、気を遣いながら登る。10:51、ついに西穂独標に到達。

 下から見ていても何となく様子はわかったが、広くはない岩場である。その一角に、不釣り合いに綺麗な標柱が建っており、「西穂高岳独標 2701m」とある。冒頭触れた標高点ではない。景観としては前途に西穂、その右に奥穂が見える。稜線上で一番目立つ三角形のピークは、山頂ではなくピラミッドピークと呼ばれるもので、西穂の山頂はその少し奥だ。槍は完全に奥穂あたりに遮られる。反対側を振り返れば、焼岳の頂にまで通じる稜線が見える。その奥に安房山、そして乗鞍岳。乗鞍の右肩からははっきりと噴煙が見えるが、やはり御嶽山そのものは見えない。笠ヶ岳方向を遮るものは何もない。反対側は、裾野にかけてを雲にまかれている感じはあるが、中央アルプス、南アルプスが見える。付近に居合わせた人の言によれば、富士山も薄く見えているそうだが、どれがそうなのかよく分からない。最終的に、方向と見え方からそれらしいものにあたりをつけたが、遠くの山からちっぽけな富士山を見るくらいなら、静岡の各所からでっかい富士山を見た方が感動があるような気もする。さておき、絶景である。エスプレッソのティーで一服立てたい気分だ。

 それにしても、西穂山頂方向を見渡すと、独標から先の道の険しさが実感として分かるというものだ。独標までと次元が違うとまでは言わない。ただ、より厳しい道のりとなっているのも間違いがない。長時間にわたって神経をすり減らすことになる道だろうが、そうまでしてこの先を目指す理由は、今の私には見いだせない。よしんば西穂を再度来訪することがあったとして、それはかなり先のことなのかもしれない。

 ちなみに、独標付近には昭和42年(1967)の8月1日に落雷事故で命を落とした11人の松本深志高校生記憶をとどめる碑があるという話だが、割ときわどいところにあるらしく、私は見つけることができなかった。

 50分をかけて西穂山荘まで戻る。この先、ロープウェイまで引き返すのは芸がない。それに、岐阜県側に下れば名古屋への脚は必然的に高山駅から高山本線になるが、これが鈍足で使い勝手も良くないため、少し頑張って上高地側に下ってみることにする。夏の初めの焼岳登山の時には、やはり岐阜には戻らず松本から名古屋に帰ろうとしてうまくいかなかったが、今回もう一度それに挑戦してみようというわけだ。まあ、結果として今度はその計画を実現はできたのだけれど、西穂山荘下から始まる上高地への道は、比較的変化の乏しい樹林帯の道を延々と歩くコースである。西穂山荘から約20分で焼岳への縦走路と別れ、さらに20分ほどで宝水と呼ばれる小さな水場を過ぎてからは、これと言うものもなくなってしまう。下るほど坂が急になる気さえする道を1時間半余り歩き続けて倦み疲れたが、登る際にはなかなか手ごわい急登となる道でもある。下りで歩いた私は、前回の木曽駒同様に足を痛めることになったが、ともあれかくもあれ、13時半に上高地まで下った後は、靴をはきかえ、ウエストンレリーフだの河童橋だのを見て帰るだけの余裕はあった
一番手前のピークが独標。左端のも西穂の山頂ではない。

賽の河原みたいな景観が姿を現す。

西穂丸山。この辺りの道は平坦だ。

ごろごろ石の長い登りが続く。

ついに独標を射程距離内にとらえた。

最後の登り。もはや坂と言う感じではない。

西穂独標の標柱と笠ヶ岳。

こんな感じの険路の先には…。

西穂高、そして奥穂高が控える。

振り返れば焼岳、乗鞍岳が見える。乗鞍の向こうは御嶽山だが…。

 
アクセス JR高山駅より濃飛バス「新穂高ロープウェイ」下車。ロープウェイで「西穂高口」駅へ。
ガイド本
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