西穂独標完結編・その1
再戦
■標高:2701m
■歩行時間:4時間30分
■登山日:2014年9月27日

    分県登山ガイドの岐阜県版を買った「私」は、本を読んでいるうちに西穂高に興味を持ってしまったが、素人が挑むには難易度の高い山であることを知り登頂を断念。しかし、独標なら危なくないと入れ知恵をされ、これに挑戦することに。決行の日は台風の近づく荒天だったが、高ぶるパッションを押さえきれず、風雨の強まる西穂山中に突入。ついには独標直下まで到達したものの、身の危険を感じ、志半ばに撤退した。翌朝、仮の宿りに選んだ高山市内は、強い風雨の中に息をひそめていた。



 古人曰く「ピッコロ大魔王のかたきは ピッコロ大魔王が討つ」。自分の無念は自分で晴らさなければならないと言うほどの意味なのだろう。登頂を志したが果たせなかった山はいくつかある。大抵は自然環境の厳しさに涙を飲むパターンだ。いつかは雪辱を果たそうと思い続けているのだけれど、今回そのチャンスが巡ってきたのが、西穂独標である。当然のことながら西穂高岳の山頂は別に存在しているのだけれど、主稜上にいくつも存在しているピークのうちの一つで、独標とは「独立標高点」の略だ。これは少し時代がかった呼び名で、今では単に標高点と呼ぶものらしいが、測量の際の基準点のことをさす。同様のものは西穂高のみならず、あちこちの山に存在しているものの、槍穂高連峰の入門コースと言われる西穂高岳の、さらに入門編としてよく用いられるポイントであるため、西穂独標は同じような標高点の中でも特に有名で、実質的に地名と化している。独標から先の西穂稜線は、のこぎりのようなシルエットを描いており、縦走するとなると崖を攀じ、しがみつくようにして下りを繰り返すことになる。

 前回の山行は、2013年の9月15日のこと。1年を経て、まる2週間遅いことになるが、今回もほぼ前回と同様の段取りを踏んでの挑戦となった。すなはち、土曜の午前に用事を片付け、13時に名鉄バスセンターを出発する高速バスに乗る。16時少し前に、JR高山駅近くの濃飛バスセンターに到着し、理論上は高速バスの到着直後に濃飛バスセンターを発つ新穂高ロープウェイ行の路線バスに乗り継げる。が、現実はそんなにうまくいかなかったため、1時間ほど高山市内をぶらぶらした後、1本遅い便で平湯温泉に移動した。なお、高山を歩いているときに駅前で異様に白く汚れた車を見かけたが、このときはこれが極めて不吉な兆候を現していることを知る由もなかった。宿は、もちろんと言おうか、穂高荘倶楽部。御嶽噴火のニュースは、チェックインの段階で初めて知った。

 そして、翌朝一番のバスで一人新穂高ロープウェイを目指す。この時期のロープウェイは8:30が始発なのだけれど、7:00に平湯温泉を出て、7:40頃には新穂高に着く。無駄に早いような気がしないでもなかったが、あれよあれよと言う間に人が集まってきて、結果、わずかでも早いロープウェイで上を目指すには、やはりこうでなければならなかった。もっとも、ネックとなるのが中間駅となる鍋平駅で、ここまでは車で直接来ることができるため、下から来る客は大挙して訪れるマイカー組の後塵を拝すことになる。西穂高口駅に到着したのが9時過ぎ。最上階の屋上に上がり、北アルプスの峰々の撮影を済ませておく。西穂独標に登るのだから良いではないかとはいかず、槍なんかはここで撮影しておかなければ、登山中に見るチャンスは無い。

 それにしても、今日は天気が良い。もともとが台風一過の青空を期待してこの週末の出撃を目論んだのだけれど、台風が思ったより早く日本に接近し、温帯低気圧になってしまったため、並みの天気になるかと思っていた。しかし昨日の天気予報では、いわゆる快晴の予報が出ていた。槍穂高周辺には雲一つない。前が嵐だったからバランスを取っているのでもないのだろうが。心持大気が白くかすんでいるようでもあるが、御嶽の灰が舞っているのだろうか。遠くの山は少し雰囲気が違い、白山は雲海の上に頭を出している。南アルプス・中央アルプスの見え方はどうなのだろう。御嶽は見えない。方向的には、どうしても乗鞍の影に隠れそうな気もする。

 9:12、クライムオン。一度登った山である。サクサクと進む。前回は霧の中の歩行だったが、今回は木々の向こうにこれから目指す西穂高の姿が見える。それ以外では、終始笠ヶ岳もよく目につく登山道だ。樹林帯の紅葉はまだ進んでおらず、ところどころ黄味がかった緑色を見せる木の葉がある程度だ。9:57、西穂山荘を通過。所要時間は想定通りの45分。休憩はしない。なおも先を目指す。今回の山行には、諸般の事情でなまった体に喝を入れる意味もあるので、あえて追い込んでいく。独標に立つまで、大休憩はとらない方針だ。水分補給と、写真撮影のために足を止める以外は、休まない。
真ん中のとんがりが独標。

穂高の山並みから続く槍ヶ岳。

焼岳。

笠ヶ岳と抜戸岳。西穂高口駅の上部デッキは北アルプスの絶好の展望台。

紅葉が進む。

西穂山荘までは樹林帯の道が続く。

西穂山荘を越えて森林限界が近づく。

 
アクセス JR高山駅より濃飛バス「新穂高ロープウェイ」下車。ロープウェイで「西穂高口」駅へ。
ガイド本
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