入鹿池〜鵜沼宿(継鹿尾山)・その1
道は木曽川を越えて
■標高:273.1m(継鹿尾山)
■歩行時間:5時間50分
■登山日:2014年5月17日

    東海自然歩道の旅は、いよいよ愛知県脱出を企てる段階に差し掛かっている。そもそもは岩古谷山から鞍掛山への縦走路として東海自然歩道を利用したに過ぎないものが、今では県内あちこちの区間を歩くに至った。そうなってくると頭をもたげるのは、全線踏破の野望だ。そして漠然と全線踏破を志向するようになると、西から東へ上るか、東から西へ下るかの選択を迫られるようになったが、方針として「名古屋から遠ざかっていく」で行くことにした。すなはち、定光寺以東については東を目指し、以西については西を目指す。そしてついに、名古屋以西コースにおける県内最後の取り残しを歩くことにした。



 昨冬、この以西コースについては、定光寺から入鹿池までを歩いている。今回のコースでは入鹿池から岐阜県突入後までの約20kmの区間を歩くことになる。スタート地点である入鹿池までのアクセスにはやや不便なところがある。基本的には明治村行きのバスを利用するところで、これは名古屋からの直通バスもあるのだけれど、やはり明治村の開園時間に合わせるものなので、長距離歩行のスタートに使うには少し遅い。そのため、犬山駅まで電車で移動し、そこから岐阜バスで明治村を目指すことになった。名鉄バスが走っているのかと思いきや、犬山近郊を走っているのは岐阜バスなのだそうだ。そしてそうしてたどり着いた明治村正門から東海自然歩道までが、また遠い。コースへのエントリーポイントとなる入鹿橋は池の真逆に位置し、距離にして2〜3km、時間で40分ほどを歩かなければならない。路線バス利用なら明治村まで付き合わず、終点一つ前で下車したほうが歩く距離が短く済んだような気がするが、後の祭りである。国内有数の規模である人造池の周囲をとぼとぼと歩き、9:35に今日の行程をスタート。

 前半で愛岐県境近くの丘陵地を歩き、中盤でいつぞや登った継鹿尾山を越え、犬山城を横目に見ながら木曽川を渡るというのが、今日のコースの概要だ。ありがたくないことに、序盤の見所の乏しさは、愛知県コースでも屈指を誇る。東海自然歩道全線を通じてみれば、むしろ愛知県コースのルート設定が卓越しているということのようだが、自然豊かとは言うものの、ありふれた雑木林の中の道を行くことになる。そんないわくつきの道中ながら、道すがらには本線から外れる形で場違いな威容を誇示するような石段があった。どうやら鞍馬山教会の参道のようだ。正体が知れなかったのでパスしたものの、後から調べてみると何やら面白げなスポットのようでもある。乏しい情報から推測すると、鞍馬山教会は新興の教団で、鞍馬山なだけに天狗を崇拝しているようにも思える。

 大都市郊外と言っても良い場所柄か、トレイルランニングの人が多い。そしてそれ以上のスピードで疾駆するマウンテンバイクとも何度か行き違った。この付近のコース上では、軽車両通行禁止の看板がよく目に付く。と同時に、物々しい車止めが何箇所にも設置されている。場所によっては自動車でも容易に乗り入れられそうな規格を備えているためだろうが、自転車の進入を防ぐ意図があるのかもしれない。もっとも、自転車=軽車両というのは道交法上の考え方という気がしないでもない。自然歩道に馴染む概念なのだろうか。そんなことを考えながら歩を進める。

 土の道と舗装道を何度か行き来しながら、10時半に開拓パイロットを通過。これまた現地では実態の知れない野原程度にしか見えなかったが、戦後に農業経営の規模拡大を狙い、既成農家による開拓を事業化しようと試金石的に計画されたのが、竜頭蛇尾に終わったといったもののようだ。立ち木だけは切り払われた草っ原は、放棄された農地ということらしい。操縦士としてのイメージが強いパイロットという言葉には、本来水先案内人という意味がある。地味な里山が続いてきた中で、ここだけは空が広く、五月晴れの青がまぶしい。

 比較的日当たりの良い道をしばし歩き、11時を目前にして犬山市今井地区に到着。住宅地というほどの規模ではないが、それでも人里が営まれている。もっとも、今日歩いたここまでの道も、樹林によって目隠しされているだけで、人家からよほど離れた場所を歩いていたわけでもない。そして11時ちょうどに丸山池の横を通過。農業用ため池なのだろう。歩行時間に反し、実は今日の起点となった入鹿池からは、直線距離でさほども離れていない場所である。周辺にはこの池に限らずため池が多く、元来の農業地帯だったのだろう。

 雑木林の中に入ったり、車道の上を跨ぎ越したりしながら進むも、国道41号の名濃バイパスに突き当たると、里山歩行が長かった後だけに、その交通量の多さに面食らう。車に乗ることもまれな私が、この間の大日ヶ岳登山の帰りに通った道だと思うと、独特の感慨がある。犬山市の水生生物園と隣接する平谷池を過ぎると、間もなく善師野だ。以前の鳩吹山・継鹿尾山登山の際の起点にしようと考えていたこともある善師野駅は、この近くにある。つまり、本日最大の山場となる継鹿尾山もここから近い。今風の郊外住宅地の一部に位置しながら、意外といい感じの雰囲気を残す熊野神社で少し体勢を整えた後、継鹿尾山の山域を目指す。

 東海自然歩道愛知県コースのパンフレットの表紙写真にも使われていたことのある大洞池を通過すると、継鹿尾山への道は間もなく始まる。ここは、寧比曽岳の山頂で本線から分岐した恵那コースとの合流点にもなっているのだけれど、寧比曽山頂がそうだったように、普通の道標があるだけで、それ以上にはほとんど特筆されていない
今日のスタート地点、入鹿大橋。実はもう東海自然歩道に入っている。

なんてことのない道の脇に鞍馬山教会の石段が。

開拓パイロットの跡。

丸山池。ここも人造池のようだ。

善師野近傍は農村地帯となっている。熊野神社に憩う。

水の色が印象的な大洞池。

 
アクセス 名鉄犬山駅より岐阜バス「神尾」下車。名古屋(名鉄バスセンター)から都市間高速バス「明治村」下車もあり。ただし、明治村からの歩きが長い。
ガイド本 ふれあいウォーク東海自然歩道 東海版 風媒社
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