大日ヶ岳
大日如来の鎮座する山
■標高:1709m
■歩行時間:3時間
■登山日:2014年5月3日

    学生時代に下宿していた金沢と実家の間を、最も安価に行き来する方法こそが、自車で国道を延々走ると言うものだった。41号は一度だけ走ったことがあるが、明らかに遠回りだった。よく使ったのが、北陸の基幹路線である8号を走るコースと、大学の裏山から富山県の城端に抜け、そこから156号を南下するコースだった。愛知から石川に向かう場合は8号を、その逆の場合は156号を良く使っていたと思う。その156号沿いに道の駅・大日岳というのがあった。駐車場とトイレ以外にはごく地味な売店があるだけだったが、仏教色を感じさせる大日岳の名は気になった。時は流れ、飛騨地方を物見遊山の旅行の対象とするようになると、今度は東海北陸道ひるがの高原SAから眺める大日ヶ岳の姿が印象に残るようになった。そういう経緯から、大日ヶ岳はいつか登ってみたい山の一つとなっていた。



 大日ヶ岳があるのは、岐阜県郡上市と高山市の市境付近である。主要な登山道の位置から、一般には奥美濃の山であるとされることが多い。そうは言いながら、郡上市の北に位置する高山市も、山を隔てて東に位置する下呂市も、ともに飛騨に含まれる。地勢的に見て、大日ヶ岳の裾野に広がるひるがの高原は、日本海と太平洋の分水嶺となっているので、これれが濃飛を分かつ重要な要素となっているのだろう。大日ヶ岳そのものが狭義での分水嶺となるかどうかは調べ切れなかった。ただ、気候においては、ほとんど飛騨ないしは北陸の特徴を呈する地域と見てよいだろう。そこで、ある程度雪解けの進むだろうゴールデンウィークにアタックを仕掛けることにした。もっと遅い時期になると、標高が1709mに過ぎないことから、酷暑と戦う登山になりかねなかった。が、ゴールデンウィークは別の悩ましい問題を抱えていた。

 登山スケジュールを中心に考えれば、名古屋を発つのは午前6時で十分だったのだけれど、実際このタイミングで出発したところ、山までの道中で渋滞に巻き込まれてしまった。名神高速一宮JCT周辺と東海北陸道白鳥IC周辺。一宮では、早い段階でいったん高速を降りて一宮木曽川ICから仕切りなおす方針に切り替えたため傷は浅くて済んだが、白鳥の方は足止め時間が長かった。渋滞が発生していた区間はずばり白鳥手前から荘川の区間。ただでさえ対面二車線となる区間に、ひるがのや荘川周辺の観光地に向かう車が集中したものと思われる。結果、登山口への到着は予定より1時間以上も遅れてしまった。進路前方に聳える鷲ヶ岳を眺めながら、ぎふ大和ICで降りて156号を行った方が早かったと悔いてみても、後の祭りである。

 今回の登山口としたのは、ダイナランドスキー場だった。大日ヶ岳への登山道には、山すそのスキー場から伸びるものがいくつかあり、今回利用するのもそのうちの一つだ。ガイド本には、ヤマケイの分県ガイド岐阜版を用いる。

 春スキーの時期もとうに過ぎ去ったスキー場に、人影はない。シーズン中には有料だったらしい駐車場も無料で開放されており、その片隅、一応は登山者用駐車場となっているところに車を停める。大日ヶ岳の頂は見えないが、差し向かう鷲ヶ岳はかえってその全容を見渡すことができる。ガイド本では、駐車場のすぐ近くにあるαライナーリフト沿いに登るコースがガイドされているものの、現在の当地でそのエリアは立ち入り禁止になっている。どこから登ったものか、ひとしきり様子を探った結果、どうやらβライナー側から登れるようだ。20分近いタイムロスとなったものの、9:20、登山開始。

 と言っても、今回登っている道は、本来がスキーゲレンデ。つまり歩いて登るための道ではなく、滑って下るための坂だ。歩き続けるにはなかなか難儀なところがある。傾斜はきつめだし、常に一定の斜度で坂が続き、踊り場となるところがない。まあ、それだけにぐんぐん高度が上がっていくのは救いと言えば救いか。景観の変化が乏しいのもストイックだ。ゲレンデのあちこちで目に付く萌黄色の小さな草はフキなのだろうか。

 30分ほど歩き続けてαライナーの終点に到着。なお一登りで、ようやく人工的な坂の区間が終わり、クマザサの茂る山道に入る。道の傍らには「バックカントリー云々」と書かれた看板が立っている。どうやらこの先、スキー場の管理区域外と言うことになるらしい。立ち木のない坂道ではあるが、思ったより天気がさえず、明るさの無い山行だ。10:15、高鷲スノーパークの建物が見える見晴台前を通過。子連れの母親集団が場所を占拠してしまっており、ちょっと使い物になる状態ではなかったが、いずれにせよ雲が多い天候のため、展望はほとんどない。条件が良ければ立山連峰までも見張らせると言う展望所も、魅力薄だ。それにそもそも、天候が気にかかる。麓までの車中、カーラジオは、昼頃に飛騨北部で振る雨のことを告げていた。飛騨の北部からここまで、少し距離はあるが…。

 高鷲スノーパークのゲレンデ上部にはまだ雪が溶け残っているのが見えたように、登山道上にも程なく、大量の雪が姿を表した。気温の高さもあって凍ってはいないが、かなりの量だ。完全に「残雪期」登山の趣である。こんなこともあろうかと、今回もお守り6本爪を持ってきてはいたが、腐れ雪であることから、どうやら明王の加護はなしで、装具を着けずとも歩ける。とは言え、スピードは若干落ちる。そんな中で今度は、高鷲スノーパーク側がスキー場エリア外であることを示す看板を設置していた。

 一部、ロープを頼りに登る急坂を越えて登りつめた小ピークが、どうやら前大日であるらしい。すると前方に見えるもう一つのピークが大日ヶ岳か。時刻は10:38。山頂まで、距離は1kmあまり、所要時間は20分ほどと言ったところか。

 基本的に雪解けは進んでいるため、全区間が雪に覆われているわけではないのだけれど、逆に言うと常に雪どけ水が登山道を洗う状態となっているため、あちこちにぬかるんだ流れができている。これはこれで歩きづらい。主稜上を歩くようになると、にわかに風が出てきた。風が叫んで嵐を呼ぶような天候の悪化が気にかかる。先を急ぎたいところなのだけれど、足場の悪さがもどかしい。そんな中、10:49に山頂到着。

 話に聞いていたとおり、大日如来の像が安置された頂である。三角点もある。が、大方の予想通り展望はほとんどない。鷲ヶ岳や山麓のひるがの高原の様子がぼんやりとは見える。また、北方に雄大な山並みがこれまたうっすらと見える。方角的には白山の方なのだけれど、白山そのものではなく、別山だろう。おそらく、いくらも距離は離れていないはずの白山は見えていない。

 本来であれば展望の良い山でそれを得られないと言うのは、残念なところではあるのだけれど、今回の登山は半分までが信仰、というか思い入れ登山なので、まあよしとしよう。その象徴たる大日如来像は、割りに真新しいものなのだけれど、何代目かなのだろうか。近くにあった建立碑の碑文には、像の安置を援助した人たちの名前が刻まれていたが、その中に今は消滅した「高鷲村」の地名がある。

 天気が崩れるのは正午過ぎの一時だと思われるが、今回雨具を持参し忘れていたのは不覚であった。気温はわりと高めなのが救いながら、雨に降り込められると厄介である。簡単に食事を取った後は、足早に下山の途についた。その1時間の道中で、これから山頂を目指そうと言う登山者から、何度か「山頂まで後どのくらいか?」と尋ねられた。彼らのいずれもが、あと1時間ないし2時間程度はかかるだろうと思われた。しかも、高原リゾート地に近いこともあり、あまり山慣れた風情のない人たちが気楽に昇ってきている風なのは気にかかった。道のりの長さがどうと言うより、天候の悪化に気を配っているのだろうか。私もそんなに詳しくはないので、あえてその点は指摘はしなかった。一応、夏の雷雨や晩秋の氷雨みたいなことにはならないだろう。

 1時間余りで山を下った後、高山市上宝にある播隆上人ゆかりの本覚寺を目指して車を走らせた。くだんの道の駅大日岳で体勢を整えていた時、ついに空が泣き出した。
シーズンオフのダイナランドスキー場。

一応、ゲレンデには登山道の表示が出ている。

この地域のスキー場として双璧を成す鷲ヶ岳。

リフト乗り場を過ぎると、クマザサの中の道が始まる。

残雪が姿を現す。凍ってもなければ踏み抜くこともないので、歩き易い。

前大日から山頂を見る。

山頂に到着。

大日如来。神格についての解説はあるが、なぜここに鎮座するのかは言及されていない。

 
アクセス 公共交通機関利用による登山口までのアクセスは難しい。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]20 岐阜県の山 山と渓谷社
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