糸瀬山・その1
静かな中央アルプスの展望台
■標高:1867m
■歩行時間:6時間
■登山日:2014年4月26日

    糸瀬山は、長野県木曽郡大桑村に位置する。大桑村自体は、木曽郡の名前そのまま、木曽谷の南部に位置する自治体である。糸瀬山も、中央アルプスこと木曽山脈につながる山のうちの一つではあるが、言うなれば山脈の前山と言った位置づけの山となる。古くから里人との関係も深いようで、里山と言えば言えなくもないのかもしれない。ただ、「前山」「里山」と言って侮るなかれ。その標高は1867mに達し、急登の多い長い道中も相まって、気軽なだけのハイキングの対象にはしにくい山として、ガイド本に掲載されていたりする。その一方で、特筆するほどの危険箇所や技術の求められる局面もないため、総合的にその評価は、健脚向けの山と言うところに落ち着く。中央アルプスの前座峰であることから、そちら方面への眺望には定評がある。



 今回のガイドには「名古屋周辺の山」を採用する。と言うか、糸瀬山を紹介したガイド本というのは、そんなに多くない。アルプスの主峰はもちろんのこと、首都圏に近い秩父の山々もひしめく山岳県長野の山であるため、ヤマケイの分県ガイドをはじめとした地域ガイドへの入選が難しいと言う事情もあるのだろう。やや脱線したが、「名古屋周辺の山」は、林道終点となるしょうぶ平からの登山について触れつつも、標準コースのスタート地点をJR中央線の須原駅としている。林道をパスするには、当然のことながら車が必要になる。私は鉄道で糸瀬山を目指すことにする。ガイドは、朝一番早い特急の利用を考えなければ名古屋からの日帰りは難しいとしているが、今回特急は利用しない。

 木曽路を行く普通列車には、どうしても中津川での乗継が発生する。その中央線には、千種駅乗り込むつもりで行動を開始。駅の券売機で青空フリーパスを購入しようとするも、初期メニューに表示されていない。以前は購入可能なきっぷの一覧に名を連ねていたはずだが、消費税率変更に伴い、きっぷ自体が廃止されたのだろうか。窓口で聞いてみようかと思っていたら、魔がさしたとでも言うのか、そのまま須原駅までの往復切符を買ってしまった。3600円余りだったので、従来の青空フリーパスより1000円以上高いと言うことになる。どうやら青空フリーパス自体が廃止されたわけではなさそうだが、早朝からの利用を考えると、前日までに窓口で買っておかなければならないので、そのあたりの手軽さが失われたのは残念だ。

 千種駅から、なんだかんだで2時間余り。8時半過ぎに須原駅に到着。小さな無人駅ではあるが、人の詰められる駅舎はある。利用の多い時間帯には係員が居るのかもしれない。そんな小さな駅舎内には、登山者に向けたアナウンスも出されている。一つ松本寄りの倉本駅側から登る方が一般的な気がするが、この駅も中央アルプスの主峰級、南駒ケ岳、空木岳、越百山への登山の基点の一つとなっているためで、糸瀬山はそれらの山の陰に隠れてしまっている感がある。

 そんな糸瀬山の登山口となるのは、駅のすぐ北方にある鹿島神社なのだけれど、駅の出口は南側につけられているため、少し遠回りし、5分ほどかけて神社まで移動する。境内入口には、樹齢にして800年を超えるという大杉が立っている。往来に面しているため、ステレオタイプの御神木の奥ゆかしさはあんまり感じないのだけれど、遠目には良い目印となる。この木の傍らを通り抜け、8:45、今日の行程をスタート。まずはしょうぶ平を目指すことになる。

 登りはじめからわずかで、道は畑の只中を抜けていく。本格的な山道はその先から始まる。が、いきなりの急坂だ。斜面をジグザグに折り返しながら上へ上へと登っていく。ぐんぐん高度が上がっていく感じがある。今日は標高差にして1300mあまりを登らなければならない。このペースで行かなければ日が暮れてしまうというものだろう。序盤からなかなかハードな登りではあるが、気温がそこまで高くないこともあり、まだ汗が滴ると言うほどのこともない。植林の優越する山ではありながら、自然林部分は、まだ冬に葉を落としたままの状態に近く、若葉もついていない。春の訪れを実感できる状態ではない。

 中部電力の鉄塔付近で、一瞬頭上が開けるほかは、基本的にはずっと林の中の斜面を歩き続ける道だ。事実上、尾根筋に沿う形で機械的に道がつけられているため、人の歩調はあまり考慮していないと思われる苦しい登りが続く。しかもこの尾根は、糸瀬山の山頂に直接つながる尾根ではない。おそらく、この先林道が通るしょうぶ平付近で一度高度を大きく落とすことになると思われるのが恨めしい。

 「馬塞道(ませど)」という、何か謂れのありそうな細道に進むと、やはり道は下るそぶりを見せ始め、行き着く先は砕石の敷き詰められた車道となっていた。左手を見ると、舗装された林道がある。これを登っていったところが、一般的な意味で言う糸瀬山の登山口である。登山届を提出する簡素なポストがあり、数台の車が停まっている。このあたりの標高は、870mであるとのこと。駅から400〜500mを登ったことになるのか。ここから山頂までは180分の道のり、「必見!のろし岩」と山頂付近にある展望の岩場の宣伝も忘れていない。9時半ジャストに、しょうぶ平登山口を通過する。
質朴な須原の駅舎。停車列車の本数はそれなりにある。

鹿島神社。厳密には、登山口があるのは境内脇だ。

前哨戦とは言え、甘くない坂道。

馬塞道は何があるでもない。

しょうぶ平登山口。

 
アクセス JR須原駅より。
ガイド本 改訂新版 名古屋周辺の山 山と渓谷社
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