各務原ルプス(金比羅山・明王山)・その2
名古屋近郊のミドルコース
■標高:383m(金比羅山)
■歩行時間:4時間30分
■登山日:2014年2月11日




 健脚の道とはよく言ったもので、このコースも決して甘くはない。アップダウンはなくなるが、途中の多賀坂林道に向かって一度大きく高度を落としていたため、山頂を目指す上では急な登り一辺倒の道がしばらく続くことになる。これまでとは違った意味で手ごわい。明王山への道すがら、本日最高所となる金比羅山の山頂を踏む。383mの標高があるが、祠の周りにわりあいと多くの立ち木がある山頂なので、展望はあまり良くない。

 金比羅山直下あたりからは本当に雪が多かった。斜度はさほどでもないのだけれど、道が完全にアイスバーン化しており、その点では須衛ピーク直後の激下りに近く緊張を強いられた。そして、ついに林道との出会いで足を滑らせ、したたかに尻を打ち、肩も軽く傷めた。氷の上は、一度滑り出すと止まらず、全く踏ん張りがきかないから恐ろしい。

 まさにもんどりうって倒れたわけで、しばらくその場にうずくまっていたが、基本的には舗装道で、完全に氷と雪に閉ざされているとは言え、本来は車なり人なりが明王山の展望所まで移動するための道であるため、意外と人通りがある。深くダメージを負った姿を衆目に晒し続けるのをよしとはせず、気を取り直して先を目指す。目の前に御嶽山の姿を捉える雪道を歩くこと5分あまり。鉄塔の建物があるその奥が、明王山の見晴台となっていた。

 明王山は、基準点の類がないピークのようである。そのためか、地図上その名が出てくることは希なのだけれど、展望随一の評判は高いようで、実際そのあまり広くはない山頂には、10人ではきかないほどの人が集まっていた。誇張ではなく、窮屈に感じるほどだ。

 ここで改めて四囲の風景を眺めてみる。東は、日本ラインの二つ名で呼ばれる木曽川左岸に、その急流に削られた険しい岩山が聳えているのが印象的だ。その岩壁に、視野が遮られているとも言える。南はそれらの山の果てに犬山や各務原の街並みが広がっているが、背の高い建物などはないため、やや単調といえば単調な眺めである。西には、これまで歩いてきた各務原アルプス東端部の山並み。そして北である。御嶽、乗鞍といった山が見えるのはすでに述べたとおり。御嶽のさらに右手、北東方向を見れば高い山壁が見えるが、これが中央アルプス。そのさらに右に位置するのが恵那山。意外にもほとんど雪をかぶっていない。翻って乗鞍の左手。位置関係や山の規模からして穂高岳なのかもしれない。そしてそのさらに左。鋭角的な三角形の山が小さく見える。山頂の眺望図にもあるとおり、まず槍ヶ岳を連想するのだけれど、あまりにも真っ白で、あの鋭鋒がそこまですっぽりと雪に覆われることがあるのか、意外でさえある。ただ、そのまたさらに左に、幾分かなだらかな三角形を描く山、おそらく笠ヶ岳がある事を思うと、鋭い方はやはり槍なのだろう。土地勘がないことから、全般に方向感覚の掴みにくい各務原アルプスでは、特徴的な山容の山でないと同定がしにくい。金山付近で見かけた存在感抜群の孤峰は、どうやら能郷白山であるらしい。その印象的な姿に、登頂意欲をそそられる。

 天候にも恵まれ、その眺望を飽かず楽しみたい明王山頂ではあるのだけれど、気になることがある。下山後は坂祝の駅を目指すつもりでいるのだが、この付近の道は完全に雪に覆われている。まして山道。下手をすれば当初考えていたルートを真っ正直に下ることができず、回り道を余儀なくされることがあるかも知れない。時計は14時半を示している。不測の事態に備え、早めに帰路に着いた方が良いのかもしれない。もともとは漠然と明王山近くにある猿啄城(さるばみじょう。「はみ」の字は厳密には異体字である)に立ち寄っていくつもりでいたのだけれど、山道のコンディションの悪さから、それは取りやめにした。

 山頂を去り、金比羅山方向と反対に向かって少し歩くと、坂祝町方面山道と書かれた看板があった。確かに、林の中へ延びていく脇道がある。林間であるためか、積雪もさほどではなく、踏み後のついた箇所に限って言えば、雪もかなり消えている。一応、直ちに回れ右しなければならないような道ではない。おっかなびっくり進んでいくと、一部に急な凍結路はあったものの、雪はどんどんなくなっていく。いつしか、雪の心配を忘れていると、40分ほどで国道21号バイパスのトンネル直下に位置する登山口駐車場にたどり着いた。そこからさらに10分あまりを歩いて坂祝駅にたどり着いた。15時半のことだった。

 ハイキングコースとしての各務原アルプスの総括である。最近の名前の出方からして、先発の自然歩道に近い物を連想していたが、その実態はもともとそれなりに濃く付けられていた踏み跡の要所に道標を備え付けたといった体の物である。何もないところから整備されていったという物ではなさそうだ。あまりビギナー向けではない、急なアップダウンを繰り返すコース取りのわりに、階段などの設置箇所が少ないのはそのためなのだろう。コースガイドも行き渡っているとは言いがたいところがある。まあ、このあたりは愛知県内の東海自然歩道の整備水準が高すぎるという声もある中で、そこと比較しているので採点が辛くなっているのは否定できない。一方、特筆するほど危険度の高い道であるとは思えず、難易度的には濃尾地方の山の平均こそ超えているものの、奥三河の山と同等程度だろうか。反面、長距離を歩こうとするときのエスケープルートの少なさは初心者向きとは言いにくい難点であろう。
ふどうの森周辺には整備された遊歩道が走っている。

健脚の道。コース後半であることと斜度が相まって、結構きつい。

金比羅山山頂。

明王山。人気の展望所。

濃尾平野の眺め。

中央アルプスの峰峰。

明王山付近で撮影したものではないが、これが槍だろうか。

 
アクセス JR坂祝駅より。または名鉄三柿野駅より岐阜バス「下須衛」下車(平日のみの運行)。
ガイド本 こんなに楽しい岐阜の山旅100コース 美濃[下] 風媒社刊
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