蓼科山・その2
女神の住む山
■標高:2530.3m
■歩行時間:4時間
■登山日:2013年10月13日




 なだらかで広い山頂である。ここもやっぱり一面に岩が転がっており、従って本当の意味での踏み跡というのはできようがないのだけれど、何となく山頂平坦地の縁辺りを歩くのが登山道のようになっている。三角点がある狭義での山頂は、蓼科山頂ヒュッテの上当り、平坦部の南端付近だが、西端あたりには見晴らし台みたいなのが設置されているのが見えるので、これを目指してみることに。登り下りはないのだが、ゴツゴツガラガラの岩が折り重なる道?であるだけに、思いのほか歩きにくい。

 風こそ冷たいが、とにかく今日は天気が良い。眼下には、いくつもの湖が見える。蓼科湖や白樺湖はすぐにそれと分かる。白樺湖の向こうには、こんもりとしつつも平坦な高原、霧が峰。さらにその向こうには北アルプスが控える。眺めのいい山だとは聞いていたが、全アルプスが見えるとは。穂高岳や槍ヶ岳が分かるのはもちろん、音に聞く大キレットまでが視認できる。その北側を見ると少しだけ雲がかかっているが、近くにいたおじさんの話を聞く限りでは、その雲の向こうに立山連峰があり、雲さえなければ剱岳あたりの容貌魁偉な山容を望めるのだという。もっともこのおじさん、明らかに浅間山と思われる北東方向の山を指して「あれが横岳か」などと言っていたので、その発言は少し割り引いて見たほうがよいのかもしれない。横岳はむしろ南方向なので全然方向違いである。

 それはさておき、蓼科山からは佐久平や善光寺平、そしてその向こうの浅間山も見えるのである。詳しくないが、ことによると秩父の名のある山も見えていたのかもしれない。富士山は、位置的に八ヶ岳と南アルプスの主峰級あたりに隠されていそうだったが、これだけ四方に展望の利く山と言うのはめったにない。特に長野県の主だった盆地を、安曇野・伊那谷を除けばおおよそ見渡せると言うのは、山国信州にあっては象徴的な意味を持つと言えるだろう。もっとも、私は佐久平方面から蓼科山方向を見たときに、この山の存在を強く意識したことがなかった。

 そんなこんなで、山頂には40分もとどまっていた。頂を極めても長居はしない私の山行では珍しいことである。まして食事休憩なども取っていないのだから異例中の異例と言って良いだろう。問題は、この山行を往復4時間で決着させ、11時半のバスで蓼科山を引き上げ、八ヶ岳ロープウェイまで移動しようと考えていたことだった。その後は松本まで移動し、明日の乗鞍登山に備えて17時のバスで平湯温泉まで移動。いくらなんでも17時に間に合わなくなることはないだろうから慌てた物ではないのかもしれないが、ロープウェイは行っておきたい。普通に行けば4時間で十分だったはずの蓼科山登山は、山頂を思わず満喫してしまったため、妙にせわしくなってしまった。急いで下山を開始。2時間で登って2時間弱で下る予定にしていたので、下山開始が10時をまたぐのは少々遅いと言わざるを得ない。事故は下山時に起きやすいというので、気をつけていたはずなのに途中で転倒。絶妙の位置に尖った岩が配置されており、これにしたたかに腰を打ち付ける。少し位置がずれて背骨をやられたら、立つ事すら危うくなったかもしれないが、それでなくても結構痛い。

 結局11時半に登山口バス停まで戻ることが出来ず、勝負を諦めかけていたのだけれど、登山口を目前にして明らかにバスの物と思われるホーンの音が聞こえてきたので、最後でダッシュ。一人前の客が乗り込むのに手間取り、出発が少し遅れていたのに助けられ、ギリギリで予定の便に間に合わせることができた。これを見ている良い子のみんなは、登山道を走ると自分も回りも危ないのでまねしてはだめだぞ。

 20分弱をかけて北八ヶ岳ロープウェイへ移動。二昔前まではピラタスロープウェイとかそんな名前だったような気がするが、面目を新たにし、スイスあたりの保養地をイメージした、今風のリゾート施設になっている。搬器の事故などアクシデントに見舞われたこともあったが、今日の盛況振りからはそんな過去を想像もできない。ただ、この盛況振りが問題で、私に許された1時間半ほどの時間で山上に上がって戻ってくることが難しいほど、乗客がロープウェイに集中していた。上から見られる景色自体は蓼科山とさほど変わり映えがするとは思えず、その点では諦めがついたのだけれど、やはり楽して得られる展望というのは格別の味があるではなかろうか。そんな気がする。結局、私がしたことと言えば、山麓の土産物売り場でりんごジャムの小瓶とそばパスタをお土産として買い、コーヒーを飲んだことくらいだった。ちなみにこのそばパスタ、そのおしゃれっぽい雰囲気は八ヶ岳のリゾート地にマッチしてそうではあったけれど、生産地が新潟県寸前の飯山市なのだった。八ヶ岳ロープへの寄り道もアルピコの路線バスを使い、1日乗車券を買っていたので、寄り道それ自体による金銭的な部分での損はなかった。

 茅野駅まで戻り、秋の乗り放題パスを使って松本駅まで移動。今日の鉄道利用は茅野‐松本に限定されるため、乗り放題負けは避けられないが、致し方ない。15時半に松本駅に着くと、「信州松本そば祭り」の横断幕が掲げられており、これならさっさと松本まで移動しておくのも一つの手ではなかったかと後悔した。平湯温泉経由高山行きのバスの出発までの時間は1時間半ほど。何か観光らしいことをするには時間が足りないため、街中をぷらぷらした後、バスターミナルのあるアリオへ。

 ところがベンチに座ってぼんやりしていると、係の人がやってきて、高山方面からの折り返してくるバスが新島々あたりで渋滞に引っかかっており、出発が17時半頃になりそうだと言う。今日の宿は、西穂高のときに利用した穂高荘倶楽部を予定している。ただし、前回のように予約はしていない。完全に飛び込みで、一泊入湯するつもりでいる。一応その受付終了は21時のようなので、それまでに平湯温泉につければ大過はないのだが、最悪松本に泊まることになってもそれほど計画に障りはない。3連休の中日に、予約無しで泊まれるような宿があれば、だが、どうしてもこじれそうだったら、渕東なぎささんグッズでも貰って手を打とうか。そんなことを考えていたら、バスは無事17時半に松本バスターミナルを出発。

 出発が遅れた分渋滞に巻き込まれたこと、上高地から松本へ向かう国道158号上り線側が相変わらずの大渋滞で、図体の大きい観光バス仕様のアルピコバスは対向の大型車とのすれ違いのたびにスピードを落としたりで歩みは遅く、平湯温泉にたどり着いたのは19時半のことだった。出発が30分遅くなり、到着は1時間遅れたことになる。穂高荘倶楽部に泊まるだけなら大した問題にはならない遅れだが、平湯温泉の数少ない食事処の選択肢をさらに狭める程度の影響はあり、結局食事は前回と同じく穂高荘倶楽部内のいなかやで。前回よりも客が多く、錬度が低めの従業員方だけで回すのに限界が来ていたらしく、色々ハプニングの多い食事となったが、まあ、食事代抜きの宿泊費のみだと1400円と言う爆安の施設だから仕方ない物としよう。今回は客が多かったこともあり、仮眠スペース(予約制仮眠室にあらず)の競争率が高かったが、それでも都市部のサウナの仮眠室よりははるかに快適な空間だった。今回のこの知見により、宿泊を伴う山行の北アルプスモデルが確立された感がある。
一応この辺りが山頂。ただ、ほとんどフラットで広大な岩場が広がる山上だ。

八ヶ岳と南アルプスの一部。

音に聞く大キレットが見える。つまりは槍穂高山地である。

中央の湖が白樺湖。奥に霧が峰、そのさらに向こうに北アルプス。

浅間山。

なお、山頂はこんな感じ。

下りを急いで八ヶ岳ロープウェイに寄り道。洒落たリゾート地だ。

 
アクセス JR茅野駅よりアルピコ交通バス「蓼科山登山口」下車。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]15 長野県の山 山と渓谷社
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