立山・その3
嵐の高峰
■標高:3003m
■歩行時間:4時間30分
■登山日:2013年8月24日




 15分余りで比較的になだらかな三ノ越の平坦地に到着。さっき1時間も足止めを食ったのだから、休憩する必要もなく、さらにその先へ。かなりのハイペースではあるが、オキシジェンジェネレーター(仮)が効いているためか、これまでのところ高山病らしき症状も出ていない。相変わらず霧が深く先が見えないが、一の越山荘から300m程度の高さを、これだけのペースで登っているのだ。そんなに道のりが遠いはずがない。そして11:08、山頂近くの一等三角点に到着。

 三角点の写真を撮ろうとしていると、傍若無人な中年集団が三角点周辺に群がってきて辟易したが、話している言葉が理解できないところから推して、今話題の韓国人登山者集団か。が、先に山頂を目指そうとしてその場を離れようとすると「証拠写真として」と言っているのが聞こえる。いくらなんでも日本語と韓国語でそこまで語韻が似ているとは思えず、東北弁のように滑舌のはっきりしないどこかの方言だったのかもしれない。謎は残る。

 さて、雄山の標高は地図上2991mとなっていることがあるが、それは三角点のある場所の標高であって、最高所は雄山神社本宮がある場所だ。ここは、夏の登山シーズン中だと参拝料500円を払わないと入らせてもらえない場所である。なお、大汝山への分岐は奥宮の手前、鳥居の左手にひっそりと存在しているため、無料で進むことは可能と思われる。ここまで来たので500円を払って先に進むが、この500円にはお払い代も含まれている。普段なら山頂近くで神主さんに祝詞を挙げてもらえるところなのだけれど、今日は天候が悪いため、社殿の中でお払いをしてくれるのだと言う。狭い山頂である。社殿の撮影に夢中になるあまり、がけ下に転落しないように注意する。そして、いざお払いへ。

 祝詞と言うのは仏式のお経より何を言っているのかわかり易く、神主さんは「里の連中ががんばって山を登って来たからよろしくね」的なことを言ってくれている。ちなみに、雄山神社の祭神はイザナギとタヂカラオの二柱であるため、取り持ってくれている相手も同じだと思われる。白山がイザナミだったのも含め、何かの縁だろうか。二礼二拍手一礼でお参りした後、神主さんが雄山神社の縁起や、現在建てかえられた社殿の先代にあたるものが室堂ターミナルにある事について教えてくれた。帰りに寄ってみることにしよう。最後はお神酒をくれると言うのでもらっていくことにしたが、山の上だし正体は水か何かだろうと思っていたら、本物の酒だった。帰りが飲酒下山となるのが心配である。

 建物の外に出る。外は相変わらずの霧だ。山頂周辺以外は真っ白で何も見えない。風が強く、かなりのスピードで霧が流れているのも分かる。とは言っても、この霧は10分や20分程度で晴れそうには思えない。今回の山行では、終始こんな物だろう。むしろ、また天候が崩れることへの懸念が先立つ。頂上には来られたし、現状望み得る限りでの目的は達成できた。撤退を開始しよう。今回の目標達成率は50%に過ぎないのだから、どの道もう一度来ることになるはずである。

 一ノ越までの下山路、多くの人とすれ違った。霧は晴れてきているのだが、心なしか風は強まってきているような気がする。登山者の皆さん、Do safetyで。事故は下山路に多い。かく言う私は、一の越山荘を目前にして一度転倒し、文字通り尻が割れるほどに臀部を強打している。

 同じ様なところで足踏みしたり、行ったり来たりしている時間が長かったものの、室堂まで戻ったのが12:30。夏山のセオリーから言えばあまり感心できないことのような気がするが、この時間から上を目指す人がまだまだひきも切らない。もっとも、今一時的に霧が切れている中で一ノ越から雄山山頂までの稜線を眺めていると、それは思いのほかに短い距離のように見える。そもそも、室堂から見上げる山頂付近も、さほどの遠くには感じられない。実際、雄山までの往復は距離が短くて物足りないほどのものだった。地元では小学生の遠足山としても登られているそうだ。高山ゆえの自然環境の厳しさと言うのは確かにあるが、今回私が最も恐れ、また夏山最大の脅威となる雷については、予兆が見え始めた段階で適切に行動すれば、何とかやり過ごすのもそんなに難しくないのかもしれない。少なくとも雄山周辺では、雄山神社や一の越山荘など、緊急避難に使える施設もある。もっとも、どれほど先になるかは分からないが、私が次に狙う周回ルートは、やはりそんなに安易に考えられる物ではないこともまた、事実である。

 室堂ターミナルに戻り保存展示されていた雄山神社の旧社殿を見学。完全保存ではなく、一部を除けば新たに復元されている箇所が多いが、やはり今あるものとは少し趣が違う。

 昼食を取った後は、雄山の直下を抜いている立山トンネルトロリーバスで大観峰駅まで移動した。トロリーバスの駅であると同時に立山ロープウェイの乗り場でもあるこの場所からは、室堂側から見るのとは違う姿でそばだつ立山三山を見上げることができるが、晴れ間が広がるこちら側から見る稜線も、やはり重く垂れ込めるような白い靄に包まれていた。向こう二日程は、このような天候が続くのだろう。

 もう一つ。今回は下山後の進路を長野県大町市側に取ったが、こうすると、多くの乗り物をこまごまと乗り継いでいかなければならなくなる。立山に登れるのがまさに観光のトップシーズン、繁忙期となる事を考えると、各乗り物に落ち着いて座れるかどうかも怪しい。それなりに歯応えのありそうな周回コースを歩いた後、そういう状況下に放り込まれるのはなかなかしんどい物があると思われるため、次は富山側から登って富山側に下りるのが良いかも知れない。
険しい岩場が続く。

雄山の一等三角点と雄山神社。

この先が雄山最高点。

霧の中の雄山神社峰本社。

登りの時には定かではなかった一の越山荘の全容。

雄山神社旧社殿。

黒部湖側の黒部平駅から見上げる立山三山。

 
アクセス 立山黒部アルペンルート室堂より。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]17 富山県の山 山と渓谷社
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