白山・その3
日本三霊山の一角
■標高:2702.2m
■歩行時間:6時間
■登山日:2013年7月15日




 十二曲がりと呼ばれる九十九折の急坂を登り切った辺りが黒ボコ岩である。到着時刻は7:30。これ自体は、単なる大岩と言えばそれだけの物に過ぎず、さほどの景勝ではないのだけれど、別山のたたずまいはいよいよ雄大さを増し、その反対方向を見やれば、木製の通路が敷き詰められた平坦地・弥陀ヶ原が見える。白山で見られる弥陀ヶ原とか大汝山とかの地名は立山にもあったし、他のところにもありそうな気がしたが、何かいわれのある地名なのだろうか。宗教関係なのだろうとは思うが、神道系の白山に「弥陀」という仏教を思わせる地名が現れるのは不思議な気もする。一方、大汝の方は、オオクニヌシことオオナムチ神を「大汝牟遅」と書く例があるようなので、白山信仰と近縁と言えなくもない。結局は、修験道の影響なのか。

 弥陀ヶ原を突っ切り、ハイマツの斜面を登り切ったところが、室堂だ。7:50の到着だった。入口付近には「白山室堂ビジターセンター」という看板が掲示されて親しみやすさが演出されているが、私などはどうも、この種の山小屋施設に迂闊に近づくと、気難しい小屋番のような人から怒られそうな気がするため、なかなか気安く近づくことが出来なかった。それに加えて他の登山者の姿は少なく、施設関係者の数の方が多そうな勢いだったので、内部の様子に捨て目を配りつつ、そのまま通過してしまった。

 室堂の反対側には、明るく開放的な休憩スペースが設けられていた。青天井なので明るいのは当然として、白山奥宮祈祷所の社殿の向こうに、白山最高峰となる御前峰が見えるのが良い。未明から活動を開始していたこともあって朝食をとっていなかったが、昨夜に食べたチャンカレパワーが果てつつあったのか、小腹が空いてきたので朝食をとった。金沢市内で買ってきた、袋がパンパンのパンを食べて、いよいよ最後の登りにかかる。しかし、これが難物であった。

 頂上は手の届きそうなところに見えているのに、なかなか歩が進まない。食事は済ませているので、カロリー切れであろう筈もない。脚が動かないわけでもない。ただ、息切れがする。高山病かと言えばそうなのかもしれないが、御嶽山の時のように頭痛の症状は出ていない。大体、御前峰の標高から推測すると、まだ2600m台の高さでしかない。中途半端に長い休憩を取り、かつ食べ物を入れたことでペースが乱れたのだろうか。室堂から山頂までは30分余りをかけて登った。

 8:40、ついに山頂に到達。まずはすぐ目に付いた社殿にお参りをし、何とか白山登頂をし遂げられたことに感謝の意を表した。次いで、一等三角点の方へ。白山は近在の山では最も高く、展望は本来なら360度に得られる。ただ、私が山頂に立った時点では東側に雲がわいており、北アルプスや御嶽山、さらにはるか向こうにあるはずの富士山の姿をとらえることはできなかった。ただ、本来ならもっと不順な天候であってもおかしくなかったはずのところで、薄く雲を刷いたような青空が広がっているだけでもありがたいことだった。無論、至近距離にある剣ヶ峰や大汝峰の姿は一転の曇りも無く見渡すことができ、白山主峰の様子は手に取るようにわかる。それにしても、決して広くは無い山頂である。多くの登山者が訪れる繁忙期の様子がいかなる物なのか、想像もできない。

 さて、ガイド本では御前峰の頂に立った後はお池めぐりをして大汝峰に立つことになっている。さすがに鋭鋒である剣ヶ峰を回ろうとはしていないが、それでなくても室堂からこっちで思いのほか消耗してしまった。それに、肝心の池はまだかなりの部分が雪込め状態になっており、もう一つ迫力に欠ける。もう一度白山のこの峰に立つことは、不思議と予感される。その時は岐阜側から来ることになるのかもしれないが、大汝峰ほかはそのときで良いのではないか。天気も下り坂にあるというし、今回は白山の最高点に立ったことで満足することにした。

 20分と少々で室堂まで下り、祈祷所で白山登拝之証を入手した後、ビジターセンター内で帰りの登山道の情報を収集。実は、観光新道の一部が崩落しているというような話を行きがけに見ていたのだが、改めて確認してみるとやはり間違いなくそのようなことが書かれていた。仕方が無いので、下山路も登りと同じ砂防新道を採用することにした。冒頭触れたとおり展望の道ということになってはいる観光新道だが、砂防新道の眺めが悪いわけではないし、十分である。惜しむらくは、観光新道の方は信仰の道である白山禅定道に接続していることだ。分岐以前はこれと経路を同じくしているということなのだろうと思う。そこを踏めなかったのは少し残念な気がする。

 下山は、室堂から2時間の道のりとなった。一応大過は無かったのだが、道中三度ほどスリップ転倒をしてしまった。登山靴のグリップが効かなくなって来ているようだが、登拝之証は一応道中安全のお守りにもなっているはずなので、キクリパワーの真価に少々疑問を感じなくも無かった。あるいは、お守りがなければ転倒時に前歯を折ったり、脱臼したりしていたのかもしれない。それにしても、下山路では多くの人とすれ違った。改めて言及しておくが、連休明けのウィークデーである。カレンダーどおりの休みともなれば、一体どれほどの人がやってくるのだろうか。こうした日にも山元ガールではなく、ちゃんとした山ガールがいるのも、メジャーな山ならではといったところだ。

 11:20、別当出合登山口まで帰還。登り初めからおよそ6時間の山旅立ったことになる。総歩行時間9時間を予定していながら、心のどこかで期待していた通りの結果ではあった。

 白山から名古屋に帰ろうとする場合、最短経路となるのはおそらく国道157号を勝山に抜け、九頭竜湖畔から油坂峠を越えて白鳥に出るルートだろうが、今回はあえて逆戻りして白山スーパー林道を使って、白川郷に下るルートを取った。白山の名を冠するこの観光道路は、それでも白山の10km以上も北側を抜けている。途中の展望台から眺めた遠い白山の峰峰は、雪ならぬ白い霞雲にけぶっていた。
黒ボコ岩。別山方面を見ているが、弥陀ヶ原の入口に位置する。

弥陀ヶ原。少しの間平坦地が続き、室堂への登りに続く。

白山室堂ビジターセンター。背後に見えるのが御前峰。

御前峰へ最後の登り。

白山奥宮。

奥にあるのが大汝峰。

室堂、弥陀ヶ原、そして別山。

剣ヶ峰。

左手石柱付近が白山の最高点。

 
アクセス シーズン中、JR金沢駅から別当出合登山口まで北鉄バスによる直通バスが運行されるが、日帰りに利用するには時間的制約が大きい。マイカー利用の場合、繁忙期休日は別当出合までは入れないため、市ノ瀬でシャトルバスに乗り換え。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]18 石川県の山 山と渓谷社
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