葛城山
高原状のスカイラインを描く山
■標高:959.2m
■歩行時間:6時間
■登山日:2013年6月1日

    ダイヤモンドトレールは、阪奈境の山地をつなぐ縦走路である。略称はダイトレ。屯鶴峯(どんづるほう)にはじまり槇尾山に終わるその延長は、およそ45kmにおよぶ。○×自然歩道の類に比べると総延長は短いが、なかなか1日で踏破できるものでもないため、やはりルート上の一地点から一地点へ、コースを分割して歩くのが一般的らしい。後に誤解と知ることになるが、ヒトコトヌシ伝説の山として葛城山の登頂を目論んだ私は、この山と良く似た伝説の山・金剛山が隣り合っていることを知り、その二つの山を結ぶ縦走路としてダイトレが存在するのを知り、二座制覇を期してこの道を歩こうと考えるようになった。思えば、金剛山を通るからダイヤモンドなのかもしれないが、名前の由来は定かではない。



 今年の梅雨入りは早かった。この週末も、少し前から雨予報が出ていたが、金曜日を迎える頃になると、どうやら晴れ時々曇り程度の天候に落ち着きそうだとの予報に変わっていた。前の週末のうちにそろそろダイヤモンドトレールへ踏み込もうかと決意を固めていた私は、この週末に作戦を決行しようと考えており、それが雨で流れそうだと分かった時に、とても残念に思っていたのだが、事態がもう一転して、計画を実現できそうだと言うことになってきたので、この機を逃さず奈良県入りした。

 葛城山や金剛山のある辺りは、大阪府と奈良県の境でもわりと南のほうに位置する。もう、和歌山県も見えてこようかという場所だ。今回は名古屋からのアクセスの容易さを考慮し、奈良県側から登り、奈良県側に下ることにする。参考にしたガイド本は、ヤマケイ分県ガイドの奈良県版と「関西周辺の山」で、葛城山コースの登りと金剛山コースの下りを、ダイヤモンドトレールのガイドで結ぶ形だ。その玄関口となるのは、自治体名で言うと御所市となる。複数コースをつなぎ合わせた中で、それぞれのコースから私が踏むことになる区間の標準コースタイムをピックアップしていくと、都合8時間ほど、歩行距離は15km余りとなりそうである。

 御所市の名前ぐらいは知っているものの、それほど馴染みがあるわけでもない。鉄道駅としては、JRと近鉄のそれぞれに、市名を頂く駅があり、今回は近鉄名古屋駅を起点に、近鉄御所駅まで、最初から最後まで近鉄で行くことにする。京都回りの新幹線利用の方が、所要時間は短くなるのだが、近鉄の方がコストパフォーマンスに優れる。朝6時にアーバンライナーで近鉄名古屋駅を出発して、8時半前に近鉄御所駅へ到着。暫時の待ち時間を経た後、ここから路線バスに乗って、葛城山ロープウェイの登山口駅へ。ことほど左様に、この山はロープウェイで登ることもできるのだが、今回はもちろん歩いて登る。ちなみに金剛山もロープウェイで登れるが、こちらは山麓駅が大阪側にある。

 終点となっているロープウェイの駅でバスを降りたのが9時直前。ここから今日の登山が始まる。駅で電車を降りた頃は、湿度・温度ともに高い、夏の日を思わせる気候だったが、そんなに高度も無い山側まで来て見ると、少し様子が違う。気温がそんなに高く感じられない。見れば青空は早くもなりを潜め、高曇りの感じになっていた。まだ、雨の心配は少なそうではある。

 里に近い山のせいか、登山道の入口には猪ゲートが着いている。これを開けて先へ進むと、林の中の道が始まった。この地域では屈指のメジャーコースとなるため、木段や石畳の設置された、整備されたコースである。道は、概ねロープウェイのコースをなぞる形になっているのか、時折頭上を見上げると、その支柱が立っていたり、ゴンドラそのものが上を目指しているのが見えたりする。ロープウェイは、山頂近くまでを5分程度で移動するのだそうだが、とりあえず1時間程度の所要時間を見越し、上を目指す。

 今回歩いているこのコースは、櫛羅(くじら)の滝コースと呼ばれる物である。山中なのにクジラと言うのは面白い。御所市側から葛城山頂を目指す際のベーシックコースとなる。よく行き届いた手入れもそれゆえのものなのだろうし、植林の中を進む道というのもあるのだろう。時折は自然災害の被害を受けるらしく、コースの付け替えが行われている箇所が数箇所ある。経年劣化したらしい木橋に代えて新しい道が付け替えられているところもある。ただ、全体を見れば危険箇所も無く、序盤の傾斜がややきつめなのを除けば、歩き易い道ではある。

 少し、体が重い。体調が思わしくないのかもしれない。実際歩き出すまでそのことに気づかなかったのは不覚である。不覚と言えば、穂高神社のお守りを忘れてきたのも、何となく験が悪い。

 50分ほど歩いたところで道が二手に分かれた。直進するのが葛城山頂、左手に進むのが水越峠への道だ。ダイヤモンドトレールそのものは葛城山頂を巻く形になっているので、方角的に左への道がダイヤモンドトレールなのかとも思ったが、さすがにどこにも「熱烈歓迎!ダイヤモンドトレール」とかの表記は無い。まあ、とりあえずは山頂を目指す。

 そこから間もなく、簡易舗装の道に出た。葛城山頂は左手とあるが、右に進むと神社があるらしく、先にそちらへ進むことに。なお、この道はロープウェイの山上駅と葛城山の頂上を結ぶ散策路で、一般観光客でも歩ける程度の物だ。

 さて、その神社と言うのが、葛城天神社と号するものだった。天神社なので、要するにヒトコトヌシ伝説にまつわる神社ではないようなのだが、境内には役行者も祀られていた。このあたりは役小角のホームグラウンドだし、ある意味で山のプロフェッショナルが祀られているようなものなので、こちらにはお参りをして行った。

 踵を返し、山頂を目指す。葛城山の山頂周辺がなだらかなこともあって、山道らしい傾斜はほとんどなく、道すがらには自販機や、売店と言うか食堂まである。典型的な観光散策路である。途中、左手に奈良の盆地を見下ろすことの出来る場所もあり、観光地として求められる要素がとにかくあれこれと盛り込まれている感じだ。天神社から10分ほど歩き、10:09に959.2mの山頂着。

 視界を遮る物のない、広い山頂である。当然眺めはよく、奈良県側、大阪府側の二正面に展望が利く。というより、360度に近く展望がある。余り詳しい山域ではないが、遠くには、大峰・台高と思われる峻険にして重畳たる山並みも見える。湿度が高いため、靄がかかって見えるのは残念なところだ。そして、同じ山頂からは、これから目指す金剛山の姿も見えた。標高にして200mほど、葛城山よりも上背のある金剛山だが、山体自体の大きさもあって、いや高く聳えるような存在感がある。そして気づいたことには、一応葛城・金剛の縦走路に位置づけられるダイトレとは言え、高度をほぼ一定に保ちながら稜線上を行く山行とはならなさそうなことだった。

 思ったより体力を消耗していたことがあり、カロリーメイトを2本ばかり口に入れ、今は季節はずれのつつじ園を突っ切り、ダイヤモンドトレールに合流。道は、葛城山と金剛山の間に存在する鞍部・水越峠に向かって、かなりの急勾配で下っていく。
ロープウェイ乗り場。

木段やILBの整備された道が続くが、近年では自然災害で破壊されたこともある。

思いのほか地味ながら、この辺りでダイヤモンドトレールと分岐している。

役行者のお堂。修験道に源流を求められる峻岳に登るとしばしば目にする名である。

山頂。高原状の、なだらかな頂。

奥に見えるのが、これから目指す金剛山。

奈良盆地の様子が見える。

シーズンにはツツジの花園になるようだ。

水越峠に向かって下る。

 
アクセス 近鉄御所駅より奈良交通バス「葛城ロープウェイ前」下車。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]28 奈良県の山 山と渓谷社
関連サイト

  金剛山へ進む



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