白草山
御嶽の展望台
■標高:1641m
■歩行時間:2時間30分
■登山日:2013年4月28日

    白草山は、下呂と萩原の二つの御前山、加子母の小秀山などと並び、御嶽山の展望台と言うことになると、まず名前が挙がってくる山である。岐阜県下呂市と長野県王滝村の境に位置し、飛騨南部有数の人気ハイキングコースと言われるほどにメジャーな山だ。おそらく森林限界とは違うのだが、そのなだらかな山頂付近に立ち木はなく、高原の向こうに御嶽の大きな山体がそばだつような景観を楽しめる。標高は1641m。ただ、登り始めの標高もかなり高いため、それほど長いコースではない。



 萩原御前への挑戦が不首尾に終わってから1週間。世間がゴールデンウィークに突入したのに合わせ、御嶽山遥拝シリーズとして、今度は白草山にチャレンジすることにした。

 白草山への公共交通機関によるアクセスは、電車にバスを乗り継げば不可能ではなさそうだが、日程的には大きく制約を受けることになる。おまけに、萩原御前のときと同じく、バスを降りてから登山口までのアプローチが長いと来ている。先週、延々と続く林道歩きに倦んだばかりなので、今回は車で登山口まで行くことになった。マイカー利用の白草山登山は、本来家族ハイキング程度のコースになるのだが、登山に先立ち、登頂を果たした後は新穂高ロープウェイまで足を伸ばそうという下心も生まれていたため、必要以上に早発ちをすることに。

 朝8時の登山開始を企図し、午前5時に名古屋を出発。事前に調べた範囲では、登山口となる乗政温泉の奥地までは3時間程度かかるはずだったのだが、中央自動車道を中津川ICまで走り、そこから国道257号沿いに裏木曽を北上して行ったら、結果的に2時間ほどで登山口まで行き着いてしまった。41号をひた走って、下呂市街の手前から257号に入っても2時間半ほどだと思われる。

 そういうわけだからつまり、登山開始は午前7時のことである。日の出はずいぶん早くなっているので、7時ともなればあたりは十分に明るいが、道々に設置された温度計の表示を信じるならば、気温は2〜3度しかない。今日は、濃尾の平野部は20度以上まで気温が上昇する予報となっているが、果たして山行中にどこまで暖かくなるか。残雪や、登山道の凍結が少々気がかりである。

 今回のガイド本としたのは、山と渓谷社の「名古屋周辺の山」だ。もちろん、同社の分県ガイド岐阜版も参考としたが、二冊の本の内容に大きな差はない。コース設定において、林道途中の車止めゲートをスタート地点としているか最終バス停をスタート地点としているか、そして白草山へのコース途中から分岐する隣接峰・箱岩山をコースに取り込んでいるか否かの違いである。ロングコースを設定している分県ガイドのほうでも、林道のゲート前に車を停めておけると言う記述はあるので、とにかくここまで車でやってきた。もっとも、本を見る限りだとゲートの前にそれなりのオープンスペースがありそうにも読めたのだが、実際のゲート前は一般車出入り禁止ゾーンになっているため、現地では車同士の離合に用いられる退避所に止めておくように指示されている。しかし、そうした進入禁止ゾーンに停まっている感心できない車も、すでに一台存在していた。

 この黒谷林道は、大岩の懐や切り通しの崖下に砕石を敷き詰めた道が伸びる、野趣にあふれた物となっており、萩原御前のときのそれに比べれば退屈せずに済む。歩行時間も20分程度であるため、本格的登山道開始前までのウォームアップとしても悪くはない。

 林道の終点はせせらぎとなっており、小さな丸木橋でこれを渡ることから登山道が始まる。石がごろごろしており、ここまでに比べれば傾斜もあるが、さりとてさほどハードな道ではない。弱めの登りを基調に緩急をつけながら、じっくりと高度を稼いでいく感じの道である。道は、植林帯の斜面を伸びていくが、白草山の山頂はなだらかな高原状になっているため、登山道からその姿を拝むことは出来ない。代わりに、草原のヒルトップを思わせる高森山の頂が左手に見える。草の原に見えるのは、実際にはクマザサなのだろうが、このあたりの山の稜線は、白草山や箱岩山も含めて、伸びやかな笹原となっているということだ。遠目にも歩いてみたくなるようなラインをしている。

 高度が上げるにつれ、びゅうびゅうと吹き抜けていく強風の音が耳につくようになった。白草山山頂には山林が存在しないため、風を遮ってくれる物がないという。春の遅い飛騨のこの時期には心細いことだが、一応リュックサックの中にはダウンジャケットも忍ばせているため、寒さに耐えられないこともあるまい。登り初めからここまで、比較的軽装で歩いてきているが、裏を返すに、山登りには良い季節になってきたと言うことなのだろう。

 30分ほど歩き、箱岩山と白草山、それぞれの山頂への道が分岐するポイントに到着。これまでとはちょっと趣が異なる林間の分岐点である。どちらを先にするべきか、立ち止まるクロスロード、さまようワインディングロードだが、とりあえず白草山に向かうことにする。

 林を抜けた先に大展望が開けていた。向かって右手には、草原風の丘陵地の中、白草山の頂に向かって伸びる登山道が見えたが、左手にはついに、真っ白に雪をかぶった御嶽山が見えた。あまりにも雄大な山体に圧倒され、まだゴール地点ではないのだけれど、思わず写真を撮影。稜線上の道は、これまでに比べればはるかに日当たりが良い道ではあったのだが、それでも途中には残雪があった。ただし、前回の萩原御前のときのように、クランポン無しで歩けないほどのものではなかったので、とにかく一気に歩きぬいた。

 8:25、山頂着。山頂の様子は、良くも悪くも事前に写真で見知っていたのと大差はなかった。以前に読んだ東海地方の低山を扱った一昔前の本の中には、360度にわたり視界を遮る立ち木のない大展望は、皆伐の代償なのではないかと指摘している物もあった。山頂の一角に御料林三角点が残されていたことを根拠にしているだけに、それが強ちでたらめとも思えないため、それが澱のように心にわだかまっていた。しかし、立派な山名票には、この山を岐阜県内ハイキングのメジャーコースにしようという下呂市の前向きな意気込みも見て取れるような気がする。

 写真栄えのする景観であるため、山頂の風景自体は初見ではなかった。強いてすでに見知っていた光景との違いを言うなら、目の前の御嶽山は春とは言え、まだ雪で真っ白に覆われている。私は、信心などおよそ持ち合わせてはいないし、まして御嶽教の信者とか言うのではないが、眼前の山に対する畏敬としか言いようのない気持ちを表現するには、まさしく合掌の形しかないのではないかと思った。

 その一方で、とにかくこの景色を記録にとどめておきたいと、やはり写真は撮る。カメラはもちろん、スマホでも撮影した。逆光気味になるため、なかなか難しい撮影となった。どうしてもモタモタとした手つきとなっていたその時、最前から山頂にいた先客が、私の取り込みムードなど関係無しに、「自分を入れて山名票と御嶽山を写して欲しい」意味のことを言ってきた。年の頃なら六十過ぎの男だったが、林道ゲートの微妙な部分に車を止めていたのがおそらくこの人物なのだろうなと言う先入観があり、あまり良い印象を持っていなかった。それに加え、こちらの都合を全く気にも留めない不躾な申し出に辟易しかけたが、まあ写真を撮るぐらいは良かろうと思い直し、一応撮るだけ撮ってやることにした。

 この山頂は、御嶽山に限らず、一応全方位に展望が得られる。そこで、例えば白山など、御嶽以外の著名峰も眺められないかと目を凝らしてみるが、山の位置関係や距離、白草山自身の背の低さのためか、全国区の山は特に見当たらない。御嶽山を飽かず眺めるには、確かに少々風が冷たいため、そろそろ、箱岩山に向かうことにした。もっとも、白草山から箱岩山までは、指呼の距離である。歩き通しで10分あまりの距離でしかない。日当たりが若干悪いため、登山道の雪も幾分か溶け残りが多いようだったが、そうしてたどり着いた山頂も樹林帯の延長のような場所だったため、展望では白草山に譲るものだった。高森山の頂などはよく見える。

 さて、今日はこの後穂高に向かう予定になっている。想定所要時間は2時間強から2時間半。そろそろ下山の頃合だろう。そう思い、来た道を引き返したが、それにしても下り始めてからすれ違う登山者の多いこと。その層も、中高年から家族連れ、さらに山ガール(!)に至るまで、様々である。やはり人気の山だというのを再認識させられると共に、しまいには車を置いてきた場所が心配になり始める有様。一台二台ならともかく、広くもない山道に十数台からの車が停められているなど、あまりぞっとしない状態だし、それでなくてもまだ続々とやってきそうな気配がある新たな登山者のため、用済みの自分はさっさと場所をあけようと思った。

 車まで戻ったのは、時に9:40のこと。開始から終了までは2時間半程度の、割合にコンパクトな山行だったことになる。
まずは林道歩き。

小川を渡ると始まる登山道は、優しいコース設定となっている。

高森山。

山頂付近はクマザサの原となっている。

御嶽山。

箱岩山山頂。白草山に比べるとはるかに地味な寄り道である。

ただ、広々とした高原的展望はある。

土地勘のないのが弱みだが、見えているのは裏木曽ではなく下呂の街並みだろうか。

 
アクセス JR下呂駅より濃飛バス「乗政温泉」下車。ただし、時間的な制約が厳しい。
ガイド本 [改定新版]名古屋周辺の山 山と渓谷社
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