八曽山
入鹿池の奥山
■標高:326.9m
■歩行時間:7時間
■登山日:2013年2月9日

    八曽山は、「こんなに楽しい愛知の130山」をはじめ、一般的な書籍などに見られる山名である。実際、八曽という地名自体は、山の周辺に確かに存在する。八曽国有林とか八曽キャンプ場とかいった具合に。ただ、地元ではあまり馴染みのない名のようでもある。山の名は黒平山とするのが地元の慣例としてあるらしい。いずれにせよ、決して目立ったところのある山ではない。標高は326.9mで、このあたりの山としてはごく平均的な高さである。奥入鹿側からのハイキングのクライマックスに登られたりすることが多いのだろうか。地味であるとはいえ、登れば登ったなりの楽しみはある山なのかもしれない。



 春日井三山を越え、内津峠へ進入。国道19号トンネルの上に差し掛かったのが11:10、中央道の跨道橋である北山橋の上を通過したのが11:23。心情的には今日の全行程の中間地点に位置づけたい場所ではあるが、果たしてこの先どうなることか、まだ読めない。国道をやり過ごしながら、8年前の1月、自転車に乗って半死半生でこの峠を越えた時のことを思い出す。今回のように鞍部を横断するのではなく、19号沿いに多治見から春日井へと走ったのだが、本当に疲労凍死寸前まで消耗していたようにさえ思う。少なくとも、これまでの生涯で最も死に近い局面だったとは言える。今回の山行は、あの時ほど疲弊することなく乗り切れるだろうか。これまでのところ、さほどの疲労は感じていない。が、ほとんど最終盤と言って良いタイミングに、326.9mの八曽山攻略が待ち受けている。余力がなければ、ここを切ることさえ考えていた。

 内津峠の最低鞍部を越え、まっすぐな階段を登りきって少し行くと、自然歩道にはおよそ不似合いな、工業プラントの一画に差し掛かった。「合材工場」とある。要するに舗装材の製造場なのだろうが、どこかでミスコースをしたのではないかと、訝しく思えるほど、不調和な取り合わせだ。一応、間もなく東海自然歩道の里程標が姿を現した。内津峠には「奥入鹿橋 11.5km」の表示があったが、今度の物は「小牧・犬山市境 2.4km 45分」とある。えらく抽象的な表記である。道中、これと言って目標になる物がないのかもしれない。さらに、2.4kmを45分と言うのは、ほぼ平地歩行のペースだ。こんな調子の、自然歩道のイメージからは程遠い、工場脇みたいな道がしばらく続くと言うことか。

 その予想は半分当たり、半分外れと言ったところで、さすがに工場の資材搬入路みたいな道は間もなく終わり、両脇に木立の続く里山道が始まったが、上り下りはほとんどない。緑はまあ豊かだが、目を見張るほどの自然美があるわけではなく、淡々と道が続く。途中で12時を回ったので、近場にあったベンチに座り、昼飯なのか行動食なのかもはっきりしない、板チョコを口に運んだ。市境はそこから10分あまり歩いたところにあったが、本当に単なる市境の看板が立っているだけだ。後で知ったところによれば、このあたりの東海自然歩道は、愛知岐阜の県境線をなぞるように延びてはいるが、そもそも小牧市内はわずか100mほどしか通っていないのだそうだ。

 とにかく、犬山市に入ったと言うことは、いよいよ入鹿池も射程圏内と言うところまで来ているはずである。そして程なく「入鹿池 6.5km 2:10分」の看板が。まだ思ったより距離があるし、所要時間との兼ね合いも考慮すれば、そろそろ山道も始まりそうな雰囲気が漂っている。長篠の馬防柵を思わせる、木柵の隙間から潜り込んだその先の区間は、雑木林のような林の中を行く、これまでよりも緑濃い道ではあったが、身構えていたほどのアップダウンもなく、20分ほどで、八曽のキャンプ場入口となる丸山橋に到着した。先ほどの里程標付近から丸山橋まで、2.2kmで45分を要する表示となっていたが、そこを20分で来たとなると、この先入鹿池までは4km強で1時間半ということになる。ほぼ平坦な道が続くと言うことなのだろうか。

 と、その前に八曽山である。ガイド本では、この八曽キャンプ場が八曽山への登山口とされている。どうやら、往復で1時間半コースになると踏んでいるこの山を、攻略するだけの余力はありそうだ。ガイドにあるとおりの看板を見つけ、山頂までの道をもう一度確認。どうやら現地看板では、黒平山とか八曽黒平山とか表記されている物が、ガイド本の類が言うところの八曽山らしい。ひとまずキャンプサイトを抜け、渓流の奥にある八曽滝を目指す。キャンプ場におまけでつけられているハイキングコースのような道なので、滝までは厳しい登りがあるわけでもない。滝そのものは目測10mほどの落差がある、それなりに見栄えのする滝である。

 滝から先も、山道には違いないのだが、特別苦しい箇所あるでもなく、20分ほど登って山頂に行き着くことが出来た。小さな祠のある山頂からは、弥勒山と同じく、御嶽・乗鞍・中央アルプスに恵那山と連なる山並みを展望することが出来る。ただ、立ち木の関係で若干視界が狭く、御嶽方向で特にその傾向が顕著だ。13:30という時間帯ではあるが、先ほどより空気が澄んできているのか、よりクリアにそれらの山並みが見えたような気がした。

 どうやら今回の山旅も終わりが見えてきた。ガイド本の八曽山コースは、片道の短さもあって周回コースになっているものばかりだが、今回は何のひねりもなく山を下り、八曽キャンプ場から東海自然歩道に復帰する。ここから入鹿池…というかゴール地点となる明治村正門前までは、それでも5〜6kmほどの距離があるか。おそらく、入鹿池まで出るだけなら小一時間もあれば足りるだろうが、明治村があるのは自然歩道と入鹿池の出合から見て、ちょうど対岸側にあたるため、結構な距離を歩くことになるだろう。

 読みは概ね正しかった。川沿いのやや単調な道を50分ほど歩いて、赤い塗色が目に沁みる入鹿大橋の近くに出たが、明治村にある聖ヨハネ教会堂の尖塔と思しきものが、入鹿池の反対側にまだ遠く見える。池には、ワカサギ釣りの客の物と思われる、夥しい数のボートが浮かんでいた。同じ様にボートを使って対岸まで行けたら、いくらかは楽かもしれないと思った。それほど、この最後の30分あまりの入鹿池周回歩行は辛かった。息が上がるとか、バテるとか、そういう感覚はなかったけれど、とにかく脚への負担感がピークを迎えていた。山登りと違い、同じ筋肉を集中的・継続的に使い続けるのが苦しいのか。

 それでもどうにか休むことなく歩き抜き、栄行きの直通バスこそ逃したが、15時半明治村発の犬山駅東口行きのバスに乗り込み、今度の山行も終わりを迎えた。休憩はほとんど取っていないから、およそ7時間の歩行だったことになる。

 なお、今回歩いたコースは、入鹿池に突き当たって以降、東海自然歩道上から外れた道を歩く時間が長い。そのため、自然歩道のトレースに軸足を置いて歩く人は、名鉄広見線の善師野駅と定光寺駅の間を歩き通すケースもままあるようだ。八曽山をパスすれば私にもその程度の余裕はあっただろうが、それにしてもなかなか難儀なことだ。そしてバス路線が存在するので、内津峠で切ることも可能ではある。
多くの車が行きかう内津峠の先は工場。自然歩道らしくない区間だ。

そして、雑木林の中の平坦な道が続く。

丸山橋を渡って八曽キャンプ場へ。どちらかというと、裏玄関か。

八曽滝。

山道らしい山道は、わずかのうちに終わる。

中央アルプスの山並みが見える山頂。

山を下って30分以上をかけて入鹿池へ。ここから明治村までがまだ遠い。

 
アクセス 名鉄犬山駅より「明治村」下車。または名古屋から高速バス西可児名古屋線「入鹿池口」下車。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
関連サイト

道樹山へ戻る  



▲山これへ戻る