道樹山・大谷山・弥勒山
春日井三山縦走
■標高:436.6m(弥勒山)
■歩行時間:7時間
■登山日:2013年2月9日

    名古屋は平坦な都市である。市域に山らしい山がほとんどない中で、一応東谷山が市内唯一のハイキングコースのような位置づけになっている。しかし、如何せん高度感がなくコースそのものも短い。次に手ごろなところとなると、春日井三山と呼ばれる山々だろう。その名のとおり、春日井市域の東端部に位置する。道樹山・大谷山・弥勒山という三座の山は、標高にして400m前後を誇り、200mに満たない東谷山の二倍以上に相当する。そして周囲に高い山がないことから、展望も良い。今回は、東海自然歩道を歩いてこれらの山を越え、入鹿池を目指す。



 入鹿池についても若干の説明は必要だろうか。犬山市の外れ辺りにある人造池で、アウトドア好きの向きには、ワカサギ釣りのスポットとしても知られるが、元来が農業用ため池で、Wikipediaによれば、この種の池としては、かの有名な満濃池に比肩する規模を誇っているのだと言う。山行の始点となる定光寺との位置関係は直感的につかめないが、歩行距離で言えばおよそ20km、春日井三山の後、中間点となる内津峠も越え、八曽山に寄り道して入鹿池に至るルートとなる。内津峠は中央道のPAがあるし、定光寺との繋がりもイメージしやすい。その先は未体験ゾーンである。なお、「山登ってみよう」では三年前の尾張三山の時に、入鹿池の脇を歩いている。

 定光寺〜岩屋堂区間の歩行から程もないが、再び定光寺駅にやってきた。前回も今回も定光寺駅を起点に持ってきたのは、逆順にまわった場合、無人駅である定光寺駅からどのように電車に乗り込めば良いのかが分からないためだ。きっぷ売り場もないような駅である。そういった駅を利用することは、18きっぷ旅では度々だが、あれはきっぷを買う必要のない、半ば無賃乗車の旅みたいなもんだから、きっぷの買い方が分からなくたって問題はないのだ。今回はそういうわけにも行かず、従って岩屋堂までの時と同様、中央線で定光寺駅までアクセスし、入鹿駅からバスで帰る形にする。タイミングさえ折り合えば、入鹿池湖畔の明治村正門前と栄を結ぶ、直通の都市間高速バスがある。それでなくても、犬山駅からの路線バスが明治村まで走っている。

 常の通勤とほぼ同じタイミングで家を出、午前8時少し過ぎに定光寺駅に着。今回は、岩屋堂行きの時よりも歩行距離が長く、かつ「縦走」とは名ばかりの平坦路歩行が長かった前回と違い、まがりなりにも山の稜線を行くことになる。全体でおおよそ6時間から7時間コースとなるか。早出の必要があった。

 前回は渡った城嶺橋を左に見ながらこれを渡らず、庄内川右岸の山に入っていく。すでに倒産した観光ホテルを中心に、うらぶれムードを覆い隠すべくもない路地を少し歩くと、そんな路地裏ムードに溶け込むかのように、「歓迎 東海自然歩道」と書かれた古色蒼然としたゲートが見つかった。登山道の類でここまで歓迎されたのは、石鎚山以来である。もっとも石鎚の時は、観光ロープウェイの利用に対する歓迎だったような気もするが。

 中央線工事の難所であった定光寺‐古虎渓‐多治見区間の殉職者に向けた慰霊碑を横目に、御岳神社の参道ともなっているらしいこの登山口から、8:15、今日の行程を開始する。「岳」によれば、専門的には登り始めのときに「クライムオン」と言うらしい。いわゆるロッククライミングに近い領域で使われるような気もするし、しばらくはハイキングコース程度のなだらかな登りが続くのが見えるが、それでもクライムには違いない。

 しばしば車上の人となって走り抜けてきた中央線の線路をくぐり、まず最初に目指すのが玉野園地である。ちょっとした公園になっているが、10分ほどで到達できるので、歩行開始のこのタイミングで休憩するような物でもない。さくっと通過する。前回の高根山のイメージがあるため、雑木林の中をなだらかな道が伸びていくのかと思っていたら、意外にちゃんとした山道である。険しくはないが、まがりなりにも山登りしている。しばらく、そんな調子の道が続く。やがて、傾斜は緩むが、最初の頂となる道樹山までは、意外に長い道のりだ。玉野園地付近で「道樹山 5.0km 2:30分」の表示が出ている。

 途中、一般道の抜ける外之原峠の鞍部までで50分程度はかかる。ここで一旦下り、長い直線の木段を上り返すも、道樹山頂まではもうワンスパン程度ある。坂を登り切ったところに「2.5km 50分」の表示があるが、マジックで「50」の部分が黒く塗りつぶされ、代えて「1:20分」と手書きされているような代物である。関係者によるものか、そこらへんの足の遅いハイカーによるものかが定かでないため、紛らわしいだけだ。ここらの山で2.5kmを歩くのに80分かかるというのは、それはそれでかなり足が遅い気もする。

 やはり一般道の抜けている桧峠をも越えていく。結果的に、例の看板から40分程度で標高429mの道樹山山頂に着いた。結局、標準コースタイムとして50分が適当か、1時間20分が適当かとなると微妙なところだ。山頂には神社があって、周囲はその社叢といった雰囲気に樹木で囲まれており、展望は無い。ここまでで、登り初めから1時間40分を要している。水平移動距離で見ても定光寺から6km強程度になるため、所要時間としては妥当なところではあるが、それでも思ったより長い道のりだった。ひとまず、お社に向かって、この先の道のりの安全を祈願する。この道樹山頂で、南西山麓の細野キャンプ場からの登山道を合わせるため、急にハイカーの姿が目に付き始めた。もっとも、地元のお達者倶楽部が運動のために山歩きをしていると言った風情の人ばかりである。

 とにかく、道樹山までが冗長とも言えるほどに長かったが、ここから大谷山までは、若干のアップダウンを乗り越えながら10分ほどの道のりだ。ヤマケイの分県ガイドではサンコイチで紹介されている今回前半の山も、「愛知の130山」では大谷山だけが見出しから外されているが、展望においては道樹山よりはるかに恵まれた山頂であると言える。北西方向に木立が途切れ、簡易ながらベンチがあり、春日井市郊外の街並みを見下ろすことが出来る。一応、425mの山頂である。

 もっとも、そこから10分少々の弥勒山山頂436.6mのほうが、展望においては圧倒的だ。そのため、道樹・弥勒の二座の中庸と言った感じで表情の乏しい大谷山が省略されてしまったのかもしれない。大谷山からも少しばかりアップダウンがあり、山頂直下の登りが多少長く感じるが、登り切った先の弥勒山頂は、濃尾二正面に展望が利く。

 岐阜県側を見れば御嶽山を正面に、その左手奥に乗鞍岳、右手奥には中央アルプスの山並みが連なり、トメのように恵那山の大きな山体が控える、雄大な眺めが広がっている。よくよく登り慣れたらしい人の会話を盗み聞きしている限り、条件が良ければ白山も見えるのだという。ただ、登山当日の濃尾地方は、いかにも冬らしい抜けるような青空に恵まれていたが、冬のこの時期の飛騨・北陸方向はどうしても雪雲にまかれやすいため、春日井のこの位置から白山まで一直線にスコンと晴れ渡るのはなかなか難しいと思われる。

 展望台の設けられた西側は、春日井の中心市街とその更に向こうに広がる名古屋の街並みを一望できる。そして、国道19号内津峠、さらに満々と水を湛える入鹿池も、同じ展望台から見下ろすことが出来る。実質的に山頂直下のような内津峠はともかくとして、入鹿池は思いのほか近くに見える。だが、手持ち資料による限り、東海自然歩道はやや迂回気味に入鹿池を目指す形になっているため、この先ゴールまで、ここまでに要した時間と同等か、それ以上がかかることになっている。

 弥勒山〜道樹山は名古屋市近郊ではメジャーな山行コースの一つであるため、ハイカーの姿も多く目に付くが、その先は人の姿もめっきり減ってしまう。そんな人気のない内津峠への下り坂を、その先の入鹿池を目指しながら下っていく。
古色蒼然とした東海自然歩道のゲート。歓迎されているようだ。

何の変哲もない山道が、思ったより長時間続く。

道樹山山頂。神社がある代わり(?)展望がない。

一通過点のような大谷山山頂。こちらはそれなりに展望があるが…。

弥勒山のほうが眺めが良い。

弥勒山より、御嶽山。

入鹿池が見える。近いのか、それとも遠いのか。

 
アクセス JR定光寺駅下車。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]22 愛知県の山 山と渓谷社
関連サイト

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