本宮山
東三河の主峰
■標高:789m
■歩行時間:4時間30分
■登山日:2013年1月1日

    仔細に調べてみたわけではないけれど、本宮山という山名は、平凡と言うか特に珍しい物ではない気がする。各地域地域で信仰を集める神社の里社に対する、その奥社=本宮の祀られた山、すなはち本宮山。そういう成り立ちの山名である。今回種本とする毎度おなじみ「愛知の130山」にも、三河と尾張、二つの本宮山が紹介されている。山は、それ自体も信仰の対象になり易い。豊川市、新城市、岡崎市の三市にまたがる三河本宮山は、まさにそういう山で、三河国一宮である砥鹿神社の奥社がある。もっともこの山は、東三河の平野部から見ると、周りの山を従えているかのような、一際目を引く姿をしてしている。そういう山だから、もともと山自体が信仰対象だったのが、砥鹿神社の信仰に習合されていったのかもしれない。



 まあ、山と信仰の関係性は良く分からない。

 そんな本宮山ではあるが、標高にして789m、比高で700m前後となるため、地元では小学校高学年が遠足で登る山として非常にメジャーである。と言うか、私も昔に登った。実を言えば、頂上直下までスカイラインが走っており、それなりの段取りを組めば、車利用によるエスケープの手段もあるため、小学生の遠足先として重宝されているのだろう。

 深い意味は無かったのだが、2013年の山初めは、この三河本宮山ということになった。結果として元日に登ることになったので、初詣の体裁を取らせることも出来たのかもしれないが、結局そういう意味を持つには至らなかった。

 車であれば、それこそ山頂直下まで登れてしまう山でも、最寄り駅はJR飯田線の長山駅と言うことになる。北麓の岡崎市くらがり渓谷まで路線バスで移動し、そこから登るルートもあるようだが、東三河の子にとって、それはあまり一般的ではないので、南麓の長山駅から歩くことにする。幼少のみぎりの遠足の道のりをたどってみようと言う思いもある。飯田線は、豊橋駅と豊川駅との間の連絡がもっとも密で、豊橋から見て豊川よりも先になる長山駅は、多少列車本数が少なくなる区間に位置するのだが、それでも本長篠より先の奥三河地区ほどに往来が不便と言うこともない。

 豊橋駅を10:12に出て、長山駅に10:33着。まばらに民家はあるが、住宅地と農村地帯の接点に造られたような、特に見るべきものはない駅前である。ここから、とりあえず本宮登山のベースとなるウォーキングセンターを目指すことになる。ただ、1月1日ともなると、センターとて開いてはいまい。30分ほど歩いてたどり着いてみれば、まさにその予想通りであった。

 この先に延びる登山道は、鳥居をくぐるところから始まっている。登山道とは言うが、歴史的には、そして第一義的には、砥鹿神社への参道ということになるのだろう。砥鹿神社奥社は山頂直下に位置している。石段を登り、本格的な山道に突入したのが11:15。第二東名の工事現場に近い山であるため、「発破の音が聞こえたりすることがあるが安全だよ」アピールの看板も設置されている。が、元日なだけにさすがに今日は休工中だろう。

 緩やかな登りの、よく整備された土の道である。整備されているのは当然で、もちろん単なるハイキングコースと言うのではない。古くから信仰登山の行われてきた道の常といったところで、砥鹿神社によるこまめなメンテナンスが行われているものと思われる。道々に、町目を刻んだ石柱が立っているが、どうやら奥社が五十町目にあたるらしい。歩き始めて少しして、気が付けば五町目まで登っていたが、一町1分見当で登っても山頂まで1時間ほどはかかる道のりと言うことになる。

 しばらく、緩やかな登りが続く。正月だし、こんなのんびりした山登りでも良いのかもしれないが、いささか拍子抜けもする。二十町目を越え、林道を横切った直後にちょっとした急登があったが、それも一瞬のことであった。ただ、道のりに若干の変化が現れたのも事実で、ここからしばらく、ごつごつした岩の道が続く。二十町台後半は、馬背岩と呼ばれる岩稜帯になっている。現地の看板では「巨岩」と表現されていたが、一続きの岩盤なのだろうか。定かではない。この馬の背の辺りには新しめの東屋も設置されており、高度感はまださほどでもないけれど、眺めが良い。本宮山は、展望には恵まれる山だが、終始展望を背負う形で登る。

 馬の背を越えると、再び傾斜が緩む感じだが、三十六町目を過ぎたあたりで、まっすぐな石段と鳥居の道が姿を現した。一応この鳥居から先が、「霊峯本宮山 砥鹿神社境内」らしい。直線的な石段と言うのは、登高意欲をそぐ何かがあるが、黙々と登り続ける。石段の先は、木の根と自然石が絡み合うような山道ではあるものの、登山者の多さから当然踏み跡はしっかりしており、荒れた感じではない。足をこすり付けると、足が軽くなる不思議なご利益があるという「山姥の足跡」という巨岩の傍らを通り過ぎると、程も無く林道と合流。しかしこの林道区間は、車も通れそうな規格なのに、山側は崩落の危険があるというから曲者だ。

 林道から参道への分岐点辺りに、お清水がある。山用語で言えば水場となるのだろうが、どちらかと言えば手水場である。どうも飲めるらしいのだが、山自体の人里近さ、そして山頂付近に人工的な施設が多過ぎるのが気になり、積極的に口にしてみようと言う気にはならなかった。そのまま先を急ぐ。お清水の先も石段が長々と続くが、ここに来て登りがきつくなってきた。石の鳥居、青銅の鳥居、小さなお社に磐座(いわくら)など、信仰の気配を濃密に漂わせる物が道々に配置されている。

 最後の急登を行くこと15分ほどで、ついに奥社に到着。最初に触れたとおり、奥社は山頂直下に位置しており、本宮山スカイラインを利用すれば当たり前のように車で来られる場所であるため、登山者以外の参拝者が、社殿の前に列を作っていた。山麓にある、いわゆる砥鹿神社の方を詣でてから、こちらにやってきている人も多いのだろうか。今回の私の主目的は、とりあえずハイキングであるため、神社をやり過ごして山頂へと歩を進める。周囲の人の流れとは反対に歩く感じである。

 山頂へは、スカイラインを跨ぐ陸橋を通ると近道らしい。近くの標識は「赤い橋」と主張しているが、経年劣化のため錆が浮き、すでに赤くなくなっているのが印象的である。この辺りは砥鹿神社の管理から外れているため、先ほどまでの道とは対照的に、あまり手入れされていないのだろう。しかし私は、せっかくだから赤の橋を選ぶぜ。

 789mの本宮山山頂は、一等三角点のある山頂である。平野の縁にある山なので、展望には恵まれている。特に豊橋平野や三河湾方向が良く見える。その反対側は、やや立ち木に遮られる感じはあるが、おそらく南アルプス辺りと思われる雪山も、見えなくはない。なお、砥鹿神社奥社辺りには富士山の遥拝所もある。実際に富士山が見えることはあるのだろうか。12:30ちょうどの登頂であった。

 帰りは、往路を引き返す。やっぱり、ウォーキングセンターまで、およそ1時間強ほどの道のりである。そのまま長山駅まで戻っても良かったが、せっかくなので、いわゆる地元で言うところの砥鹿神社まで歩くことにした。一足伸ばして、と言うには少々遠い、1時間弱コースの寄り道であった。たどり着いた砥鹿神社は、さすが三河一宮である。社殿の前に奥社とは比べ物にならないほどの長蛇の列が出来ており、とてもそれに付き合う気にならなかったため、代わりにその隣にあった三河えびす社というのにお参りをした。良く分からないのだが、コトシロヌシやタケミナカタを祀っているのだろうか。ちなみに砥鹿神社本社はオオナムチことオオクニヌシを祭神としている。

 三河一宮駅より飯田線に乗り込む。一駅行けば、豊川稲荷の門前町に位置する豊川駅で、ここでちゃんとした(?)初詣をすることも可能だったが、砥鹿神社よりもメジャーどころの(と思われる)寺院であるため、一仕事終えた後で人ごみの中に飛び込んでいこうと言う気にはならなかった。
ウォーキングセンターの施設は休業中だが、自販機や駐車場は稼動している。

登山口となる砥鹿神社の鳥居。

歩き易い登山道だ。

馬背岩周辺。ちょっとした岩場ではあるけれど、歩くのに支障はない。

この登山道が参道であることを思い出す瞬間。

長い石段は骨が折れる。

砥鹿神社奥社。ちなみに車で参拝するのは容易な位置にある。

山頂・三角点はもちろん、電波鉄塔などもあり、何かと人工物が多い。

豊橋平野、そして三河湾の展望。

初詣の客でにぎわう砥鹿神社。

後日出かけた豊川稲荷も人だらけ。代わりに、狐だらけの奇観・霊狐塚の図。

 
アクセス JR長山駅より。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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