六甲山最高峰(魚屋道)・その3
関西の名コース、歴史の道
■標高:931m
■歩行時間:4時間
■登山日:2012年12月24日




 11時直前、山頂直下の一軒茶屋に到着。往古の魚屋道は、レジャー登山とは目的について一線を画しているため、このまま最高峰に見向きもせずに有馬を目指すが、私は少し寄り道をして最高峰へ。一軒茶屋から左前方に見えるピークが、六甲最高峰である。

 六甲山系の稜線は車で走ることが出来る。それ故に地元では夜景スポットとして非常に著名なのだが、例に漏れず一軒茶屋までも車で来ることができる。と言うか県道が走っている。そのためかどうか、最高峰までコンクリート舗装された道が続き、車で登れそうな雰囲気でもあるのだが、徒歩の登山者にとっては、この舗装された登りがあまり優しくない。最後の一踏ん張りで、931mの最高峰に立つ。最高峰と呼ばれるピークは、ちょっとした広場にこそなっているが、展望にはさほど恵まれない。ただ、少し場所を変えれば、色んな方向に展望が開けている。

 それにしても六甲の頂に立ったその後、一体どうするか。正直なところ、このまま有馬へ下るべきかどうか、決めかねていた、有馬に抜けると言うその点については、最高峰に立つほどの強い決意をもってこの場に臨んだわけではない。本心を言えば、山頂付近に路線バスが来ていることを期待し、それを利用することすら考えていた。下山後の神戸市内観光の時間を確保しようと思っていたのだが、さすがにここまではバスが来ていなかった。バスが来ているのは、観光地化の著しい摩耶山周辺までのようである。ここまでの道すがら、特に山頂が近づくにつれ、その点についても色々と考えた。山麓ではそんなことは無いのだろうが、高度を増し、気温が下がったことで、山頂付近には雪が舞っている。有馬へ下ることは北へ向かうことを意味する。多少なりとも気象条件は悪化しそうな気がするが…。

 色々考えたが、最終的には有馬温泉を目指すことに。やはり、瀬戸内海側から有馬温泉まで抜けてこその魚屋道だろうというのがあるし、下山に要する時間の短さも一つの決め手とはなった。山頂から1時間あまりで、有馬温泉の外れに出られるのだそうだ。

 一軒茶屋から県道を挟んで反対側にある、有馬への道に進む。看板が目印になった、よく整備された徒歩道である。ガイド本は、熟練者向きの上級者コースである吉高神社方面の道へと誘い込まれないように注意を促しているが、この書き方が紛らわしく、かえってミスリードされそうである。どうもこの魚屋道の項に関してはライターの質が余り良くなさそうだ。神社への分岐は無視して、道なりに進む。

 相当冷え込んでいるのか、汗を拭いたまま首からぶら下げていたタオルが凍りつき始めていた。有馬への道は六甲山の北側斜面である。まだしも気候温暖と思われる瀬戸内海からも山壁によって隔てられ、そういった点からも気象条件は厳しそうだ。路面の凍結、積雪などは勘弁願いたい。オン マカラギャ バゾロ シュウニシャ バザラサトバ ジャクウン バンコク。アイゼンを使わずに済むよう、祈るような気持ちで歩を進める。

 有馬への道は、長く、単調である。その点については、ガイド本は正確だ。ただし、道は良く、膝に負担がかかり、あるいは脚をとられそうな急坂も無い。こちらを登ってきて、神戸側へと下るのであれば、このコースは楽なルートだろう。しかし、それではあえて魚屋道をなぞる意味も無い。有馬を目指した昔の商人と同じ気持ちで道を辿ることこそが、今回の山行の真骨頂である。今の私は徒手空拳で、もちろん魚介を運んでいるわけではないので、その点は昔の魚屋を模しているわけではないが、とにかく有馬の人へ魚を届けるような心意気で、先を目指す。

 進度の図りにくい山道だが、「六甲最古のトンネル跡」という看板の立ったポイントに差し掛かった。現在、この場所はトンネルの体をなしてはいないが、切り通しの道になっているため、言われてみればそのように見えなくもない。下りはじめからおよそ30分ほど。つまり下りの道中の中ほどと言うことになるが、下山路で特に印象に残るポイントと言えば、後にも先にもこれだけであった。六甲への道は、展望にも恵まれず、かなり下るまでは温泉街の建物ですらはっきりとは視認できないような状況だったから、終わりは唐突に訪れた感があった。

 12:10。ガイドにあるとおり、いかにも温泉街の外れと言う雰囲気の舗装道路に合流。六甲登山としては、これで終わりである。後は道なりに、有馬温泉駅まで歩いた。温泉街に入ってから駅まで、思いのほか距離があり、むしろこの道中のほうが寒さが身にしみたほどである。途中、外湯でも見つけたらひとっ風呂引っ掛けたい気分ではあったが、有馬温泉に関する情報は事前に仕入れておらず、寒さに凍えながら駅にたどり着いた。

 そんな有様ではあったが、六甲山と特に縁もゆかりもないのに魚屋道に挑んだ名古屋からの闖入者が運んだ心のおととは、きっと有馬の人たちに無事届いたものと思いたい。
山頂間近の一軒茶屋。

季節が良ければ人でもあるのだろうが…。侘しげな六甲山頂。

瀬戸内海は鉛色の雪雲に覆われつつある。

有馬に向かって下る。

トンネル跡と言われる切り通し。

有馬温泉。熱い湯につかりたくなるような、寒い山旅だった。

 
アクセス (魚屋道起点からの場合)阪神電鉄深江駅より。登山口最寄はJR甲南山手駅。
ガイド本 六甲山 (ヤマケイアルペンガイドNEXT) 山と渓谷社
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