鎌ヶ岳・その2
鈴鹿の鋭鋒
■標高:1161m
■歩行時間:4時間20分
■登山日:2012年11月4日




 二度目のミスコースから10分と歩かないところで、前方の展望が開けた。ようやくにして鎌ヶ岳の全容(といっても山頂周辺だが)が見えてきた。前方には、大きな岩がごろごろした岩稜帯も見える。白ハゲというポイントらしい。さらには、燃えるような、とまでは行かないが、一応木々の葉も、山吹色や緑がかった赤に色づいてきているのが見えた。

 岩の尾根の上に立つと、四日市の町や、伊勢湾が見える。さらに、そのはるか遠くに雪を頂いた大きな山体もうっすらと見えた。乗鞍か。いや、御嶽か。位置関係から言って、その二つが一挙に見えたとしてもおかしくはないだろう。そう思って目を凝らすと、なるほど、それらしい二つの山が見えた。ということは、向かって右手が御嶽、左手が乗鞍だろう。御在所岳に富士見岩というのがあったことを思えば、富士山が見えることもあるのかもしれないが、さすがにそれは見えなかった。

 そこから先、登りがやや険しさを増してきた。20分ほど歩いたところで、クマザサの生い茂る道へ。前方には、ついに鎌ヶ岳の主峰がはっきりとその姿を現した。鋭い岩峰である。パッと見には、登攀の技術さえ要求されそうな、峻険な峰である。ガイド本には、見た目よりは楽に登れそうなことが書いてあるが本当か?引き返したほうが良いのではないか。たじろぐ気持ちが生まれる。だからかどうかは知らないが、このじめじめと湿気を帯びたクマザサの道で、三度も足を滑らせて、転倒してしまった。

 とにかく、忌まわしいクマザサ地帯を抜けて岳峠へ。遠目にははっきりと見えなかったものの、鞍部付近には十数人ほどの人たちが屯していた。最初は「中途半端な場所に…」と思ったのだが、あらためて見渡してみると、ここもなかなか眺めのいい場所だ。そして、ここから見ると、この先の道が初見の印象ほど険しいものでないことも分かる。先ほどのクマザサ帯からだと、前衛の断崖絶壁ばかりが目に付いたが、その背後には歩いて登れる坂道が続いていた。いわゆるガレ場といえば言えるのかもしれない。やや傾斜のきつい坂道という程度である。そして、そこを何度か折り返して登り切ったところが、鎌ヶ岳の山頂だった。

 鋭鋒の先端らしく、あまり広くない。そこにたくさんの人が集まって昼食をとっているため、一層狭く感じる。ここにこれだけの人がいるということ、そして道中でほとんど人と出会わなかったことを総合すると、馬の背コースはいまいち不人気か、不人気というのに語弊があるならマイナールートのようである。

 眼下には、北アルプス辺りの主稜線をコンパクトにしたような痩せ尾根が続いている。これが、鎌ヶ岳の代名詞と言っても過言ではないメジャールート・鎌尾根。本家槍ヶ岳にも似たような名前の尾根があると、NHK中部地区ローカルの番組で押切もえさんが言っていた。そして、もう一つのメジャールートが武平峠からのコースである。これは、山名票のある北側に回りこんだときに一望の下にできたが、急傾斜の続く険しい道のようで、いずれも良く個性が出ている。それに比べれば、馬の背ルートは、行程こそ若干長めだが、没個性的なコースのような気がする。いや、花の時期なら印象も違ったのかもしれないが。

 ともあれ。時に11:30。約2時間の登山だったことになる。少し早いながら昼食とする。もっとも、今年に入ってから相手にしてきた大物に比べると、若干小ぶりの感はある鎌ヶ岳、さほど消耗することもあるまいと、食べ物はカロリーメイトしか持ってきてなかった。結果的にはそれで足りたのだが、今思えば、こういう油断こそ遭難に繋がるファクターであるように思う。山頂には、9月中旬の御在所岳に消えた男性の情報提供を呼びかける看板が立っていたが、明日は我が身となりかねない。それにしても、行方不明男性の年齢も出ていたのだけれど、80を超えて単身山に入るというのも考え物ではある。

 暫時、山頂で休憩し、下山を開始。下山路は長石谷を抜ける谷筋ルートを選んだ。ギリギリまで、武平峠に下りようかと悩んだが、そちらのルートは研究不足であるように思われたので、下山路も分県ガイドの通りにしたものである。が、これが良くなかった。こちらのルートは、一応鎌ヶ岳登山コースの一つには数えられているが、まともな登山道は付けられておらず、岩のごろごろ転がる沢伝いに移動することになる。誇張して言えば、沢登りコースの一種ということになるのかもしれない。水量が少ないため、渡渉は繰り返すものの、水の中を歩かなければならない場面はないが、当然歩きにくい。山陰になるため暗く、展望がなく、従って景観に変化がない。沢歩きが好きな人にはいいだろうが、私の趣味には合わなかった。スピードが出ないのにもフラストレーションが溜まる。

 結局、鬱々と谷間の道を下り続けること一時間半で登山口に出た。何がなにやら分からないような下山路だった。ちなみ登山口には登山届提出用のポストが立っていたが、三岳寺付近にそういったものがないということは、今日のルートはそれほどマイナーだったということか。

 約20分ほどをかけて三交湯の山バス停へ。ちょうど良い頃合で名古屋行きの高速バスが止まっていた。付近の道は、2時を回ろうかというタイミングで、まだ渋滞していた。御在所方面で何かイベントがあったのだろうか。良く分からないが、バスの車中で湯の山温泉の関係者が「混雑のお詫び」ということで買い物用のマイバッグを配っていた。ちょうど古いのがなくなっていたのでありがたかった。

 山頂周辺の展望、荒々しい山容には感動した鎌ヶ岳だったが、今回は登山道の選択を誤ったような気がする。おかげで、最終的にはマイバッグの印象が強く残る山行になってしまった。
山頂付近を遠望。この角度からだとそこまでの鋭鋒には見えない。

白ハゲ。

色づく木々。

道なき岩山に見えるものの…。

前衛峰の背後に道はある。

山頂。

四日市方面の展望。

これが鈴鹿の鎌尾根。

下山路はあまり冴えなかった。

 
アクセス 近鉄湯の山温泉駅より三重交通バス「三交湯の山温泉」下車。名古屋(名鉄バスセンター)から三交湯の山まで高速バスもあり。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]23 三重県の山 山と渓谷社
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