鎌ヶ岳・その1
鈴鹿の鋭鋒
■標高:1161m
■歩行時間:4時間20分
■登山日:2012年11月4日

    刃物関係の名前が付いている山というのは、大抵峻岳である。剱岳然り、槍ヶ岳然り。鎌ヶ岳も、農機具とは言え、いっぱしの刃物ではある。茫洋とした山容の山が多いといわれる鈴鹿山脈の中では、文字通り尖った山として知られ、その尖りぶりは、「鈴鹿の槍ヶ岳」の異名を取るほどだという。が、鈴鹿の槍程度であれば、私にも付け入る隙がありそうではないか。気になる標高は1161m。鈴鹿では有名どころの山らしく、例のセブンマウンテンの一つにも選ばれている。なお、掲示している写真は左が鎌ヶ岳、右が御在所岳である。



 2012年の10月は、下旬も終わりが見えるまで、なかなか気温が下がらなかった。11月に入ると、さすがに急激に冷え込んできた感じだが、そうなると気になってくるのが紅葉である。本来私はそういったものにさほどの興味はないのだが、まあ年中行事の一種として、それなりに気にはかかるものなのだ。と言って、名古屋市内はまだ本格的な紅葉の時期ではない。この段階で紅葉狩りとなれば、まず山ということになろう。そう言えば、9月に恵那山に登ってから、ちょっとの間山に登っていないし、体慣らしのつもりで山に登ってみようではないか。こういうときのためにストックしておいた近場の山としては、瀬戸市郊外のいくつかの山と、鈴鹿の鎌ヶ岳があるが、今回は鎌ヶ岳を目指すことにした。春の御在所登山の時から目をつけていた山である。山も数ある中で、隣り合った二つの山に、半年のインターバルをおいただけで挑戦するというのは、少しせっかちな気がしないでもなかったが、瀬戸よりは紅葉を期待できるだろう。

 登山の起点となるのは、以前の御在所岳のときと同じく、湯の山温泉である。前回は、近鉄電車を乗り継ぎ、最後は路線バスに乗り換えて三交湯の山のバス停までやって来たが、今回は名鉄バスセンター発の高速バスを利用した。前回はわりと早起きをしたのに比べ、このバスなら8時ちょっと前に名古屋駅を出て、9時過ぎに湯の山温泉に着ける。それだけに、登山目的で利用しようとする客にも人気の路線らしく、車内はほとんど登山姿の乗客で埋め尽くされていた。もっとも、ジジババばかりである。鈴鹿の山なら山ガールもいようが、若者は仲間で車を出していくのだろう。

 名鉄バスセンター以来の乗客は、大半が三交湯の山のバス停で下車した。ほとんど予定調和の世界である。かく言う私も、バスを降り、身支度を済ませて鎌ヶ岳の登山口を目指す。今回踏む予定のコースは、ヤマケイの分県登山ガイド三重県版を参考にしている。三岳寺の奥から馬の背尾根経由で山頂を目指すものだ。それにしても、ついさっきまであれほどいた登山者たちの姿は、どこかへ消えてしまった。どうやら、バスの客の大半は御在所目当てだったらしい。まあ当然か。

 近年ではすっかり人気も絶え、寂れてしまった湯の山温泉の路地裏を抜け、物寂しくさえある三岳寺の境内を通り過ぎ、石仏が立ち並ぶ裏山へと入っていく。本格的な登山道は、この参拝路の最奥にして最高所となる場所から始まる。もっとも、鎌ヶ岳の登山道としてはマイナーなルートということになるのか、道案内もなく、一度はその目の前を通り過ぎてしまった。

 眼前に、御在所岳の山体がそびえたつように見える登山口から、9:30、登山開始。御在所岳の時もそうだったが、白砂のような、わりと崩れやすい足場の登山道である。地質的には、同じ鈴鹿の山として、連続しているのだろう。踏み跡は、それなりに明瞭だが、よく整備が行き届いているという雰囲気でもない。コースガイドの類は見当たらないし、階段が付けられていたりするような箇所もない。道を塞ぐほどではないが、倒木もわりとそのままにしてある。そんな感じの道を、黙々と登っていく。ガイドによれば、550mから650m付近は登りがきついとされている。確かに緩やかな登りとは言えないが、さほど苦しくもない。それより、イワウチワ、アカヤシオなど、花の登山道であるとの記述もあるのだが、もはや晩秋も見えてきたこの時期、当然道すがらに可憐な花の姿はない。一方、紅葉もまだ期待したほどではない。11月の冷たい風が、ごうごうと音を立てて吹いていくのが寒々しくはあるのだが。ただ、この清冽に冷えた空気にはありがたい部分もあり、空は高く青く澄み渡っている。出る場所に出れば、展望はまずまず期待できそうだ。

 この尾根道は、右手に御在所岳が良く見える。しかし、目指す鎌ヶ岳は、なかなか姿をみせてくれない。今のところ高度計のようなハイテクアイテムは所持していないため、やはり御在所の山体が現在の高度を図る指標となるのだけれど、今の私の目線の高さは、御在所岳の中腹にあるような気がする。ほぼ同等の高さを誇る二つの山、もう一息がんばれば山頂に手が届きそうな高度に達しているような気もするのだが、どうも具合が分からない。登りが緩んだこともあって、漫然と御在所岳の方を眺めながら登っていると、以前に登った時に通過したキレットの存在だけははっきりと分かった。

 10:05、湯の峰通過。一応、湯の峰という地名を表示した看板が立っていた。どうも変化の乏しい山道である。ようやく、前方の樹間に鎌ヶ岳の山頂が垣間見えるようになっては来たが、いまだ大展望が得られるほどではない。

 湯の峰を過ぎた後も、本当に道標という物がなかった。そのためと言って良いだろう、道中で二度のミスコースをした。二度とも同じパターンである。とにかく踏み跡を辿っていったところ、本線よりも明瞭な脇道に入っていってしまった。二回とも、大下りするのを不審に思って本線に復帰したが、意外に厄介な登山道である。瀬音がしていたので、下り続ければ谷川に出たのだろう。なお、この馬の背登山道は、ほぼ登り一辺倒の尾根道で、通して見れば、下りらしい下りというのはほとんどない。
馬の背尾根登山口。

白砂のような地面の登山道である。

湯の峰、717.1m地点。何があると言うわけでもないが…。

御在所岳は良く見える。

 
アクセス 近鉄湯の山温泉駅より三重交通バス「三交湯の山温泉」下車。名古屋(名鉄バスセンター)から三交湯の山まで高速バスもあり。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]23 三重県の山 山と渓谷社
関連サイト

  その2へ進む



▲山これへ戻る