石鎚山・その3
西日本の最高峰
■標高:1982m
■歩行時間:4時間30分
■登山日:2012年8月19日




 弥山から天狗岳までは、途中一旦高度を落としてから登り返す形になっており、山頂からの下りがいきなり鎖場になっている。しかも、狭い足場の端が絶壁になっていて、歩いてみると山頂から見ていた以上に怖い。実を言えばこの稜線、全般に両側の切れ落ちた岩の痩せ尾根が続く。夜明峠から見えたのはなだらかな山頂稜線だったが、奥行きがほとんどないのが恐怖である。よじ登るほどの岩場ではないが、岩稜上に道らしい道はないので、自分の判断で確実な足場を見つけながら進む。足を滑らせたら一巻の終わりという取っ掛かりの少ない岩場が連続し、緊張する。石鎚山は、要所要所で怖い山である。

 弥山からの直線距離は大したことはなさそうだが、慎重を期して歩いた結果、天狗岳の絶頂までは15分ほどの時間を要した。頂には小さな祠があった。さらに東を見やれば、もう一つ別のピークがあったが、こちらはいよいよ道らしい道がない、先行者が挑んでいるのも見えないため、どうも簡単に足を踏み入れられる場所のようには思えない。天狗岳まで来られれば、石鎚登山の目的は果たしたとも言えるので、ここできびすを返し、弥山に戻ることにした。気がつくと、少し前を小さな子が歩いている。交わされる会話の内容を聞いていると7歳児のようだが、その小さな体で良くぞここまで来たものだと感心する。

 帰り着いた弥山は、先ほどよりも混雑していた。腰掛けるのにちょうど良い岩場や段差は、すでに先客によって占められている。山頂の神社に詣で、下山路の無事を祈念した後で、仕方なく満員の山頂の砂利の地面に座り、パン1個の簡単な昼食をとった。何か気の利いた飲み物が欲しいところだった。頂上山荘にはジュース類も売られてはいそうだったが、ゴミの始末を自分でしなければならなそうなのと、缶ジュースが1本300円以上という高額設定を敬遠し、ぬるくなったアクエリアスでパンを喉の奥に流し込んだ。

 山頂付近の天気は、もう一つパッとしない。すぐに天気が崩れるような兆候こそ見られないが、ほとんど雲に巻かれ、時々雲間から青空がのぞく程度である。四国の屋根である石鎚山からは、天気に恵まれさえすれば、瀬戸内海に太平洋、山陰の大山などをも遠望できるというが、今日はまったくそんな状態ではなかった。

 時に11:40。今から下り始めれば、ロープウェイを経て山麓にたどり着くまで2時間ほどかかるか。帰りのバスは15時過ぎにやってくる。大事をとることも考えれば、頃合なのかもしれない。多くの人は山頂にとどまって昼休憩を続けているが、私は一足早く退去することにした。下山路は、登りでも感じたように桟道に怖さを感じた以外は、登山道そのものの整備状態の良さもあり、非常に歩きやすかった。往路で苦戦した前社ヶ森まで40分、そこから成就社までやはり40分をかけて戻った。予想通り八丁から先の登りが難所ではあったが、100m程度の登りであれば、長い下りで体力が回復していたことがあって、さほどのインパクトとはならなかった。やはり、坂に挑むまでに呼吸が乱れる場面がないのと、下りで使う筋肉と登りで使う筋肉が違うことが大きいのだろう。

 帰りがけの成就社やロープウェイ駅では、もし入手可能ならば、御嶽山の時と同じように石鎚山信仰について記した本を買い求めたかったのだが、どうもそういったものは見つからなかった。御嶽ほど信仰の規模が大きくないせいなのだろうか。

 ロープウェイを降りた山麓駅の周辺には、旅館や、旅館が経営する土産物屋があり、旅館内に立ち寄り湯や食堂などもあった。しかし、風呂はタオルを持参する必要があるようだったし、土産物は山頂の売店と大同小異で、さほど品揃えは変わらない。食事は取ったばかりで食堂に入る必要もないと、結局は時間を持て余す形になってしまった。日なたでぼんやりとバスを待っていたところ、近くの売店のおじさんに「日射病になるから自分の店で待っていて良い」と声をかけてもらったが、何も買わないまま店に居座るのも気がひけたため、結局石鎚天狗Tシャツを買う羽目に。まあ、思い出の品が何もないのも寂しいので、これはこれで良かったのだと思う。石鎚山には、法起坊大天狗というのがいるらしく、山の守護神になっているのだという。しこうしてその正体は、役行者の天狗名なのだそうだ。

 やがて、バスがやって来た。ロープウェイのある辺りがすでにかなり山深いところなので、一雨来たら道が通行止めになって閉じ込められるのではないかと、最後まで天気の崩れを心配していたのだが、どうやらそんなこともなく伊予西条駅まで戻ることが出来、私は次なる目的地である大阪へ向けて出発した。
天狗岳への道。というか、はっきりした道はない。

天狗岳側から弥山の方を見ているが、右はもちろん、左も断崖である。

天狗岳のさらに先もあるが、ハイキングの延長で行く場所ではない。

弥山と土小屋方面。立ち木はない。

山頂の石鎚神社。

 
アクセス JR伊予西条駅よりせとうちバス「石鎚ロープウェイ前」下車。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]37 愛媛県の山 山と渓谷社
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