御在所岳・その3
アクセス至便の鈴鹿の山
■標高:1212m
■歩行時間:4時間10分
■登山日:2012年4月29日




 下山路として採用した裏道は、ヤマケイの分県ガイドによれば、ファミリー向けの、穏やかな道なのだと言う。ただし、2008年の集中豪雨により、登山道が崩壊していた時期があり、わりと最近になって迂回路が開設されたこともアナウンスされている。一応は、通行が可能になったことで、今回辿っているコースの下山路として掲載されるに至ったものらしい。

 御在所山頂からは、国見岳の姿が良く見えた。山麓から見上げた御在所岳のような鋭鋒でこそないが、巨岩の立ち並ぶであろうその山頂付近の様子が印象的な山だ。裏道は中道と分岐した当初、その国見岳の方にある鞍部に向かって下る進路を取る。低難度コースのはずなのだけれど、その割には傾斜がきついように感じられる。また、御在所岳は湧水が豊富な山なのか、登山路に沿って少量の水の流路が出来ており、足元がぬかるむのも曲者だ。ところどころ切り通しの道のようになっているのが、水みちの形成に影響しているのかもしれない。場所によっては清らかな水がせせらいでいるようにも見えるが、御在所の湧き水は、山頂付近の人口施設から排出される雑排水に汚染されており、とても飲み水にできるような物ではないと言う。

 時間帯が時間帯なだけに、そういう箇所でも登りの登山者とよく行き会った。基本的には、ペースを維持することが大事な登りの人を優先させたいところなので、行き違いのために頻繁に足を止めることになった。明らかに渡渉と言えるだけの小川を渡り、さらに行ったところで、道が三つに分岐した。分岐と言うか、交差点である。直進すれば国見岳の山頂。裏道経由の湯の山温泉行きは右手である。左手に行くとどこに着くものだったかは記憶が定かではないが、滋賀県側に下るであろうことは間違いない。もちろん、なおも裏道を下っていく。道沿いの立ち木がなぎ倒され、その木が抱きかかえていた表層部の土が文字通り根こそぎ剥ぎ取られ、その跡に出来た窪みのような道である。これも、前述した集中豪雨の影響なのだろうか。

 穏やかな道と言う前情報があった裏道も、その斜度は未だ、思いのほかに急である。下って下れないことはないし、登りにしても思ったほどには難渋しないで済むのかもしれないが、正直面食らったことは否定できない。

 右手には、峨々たる岩肌が見える。その頂点に当たる部分が中道登山道のはずだ。逆に言えば、登りの道のりで、ところによっては裏道登山道が見えていたのかもしれないが、特にこれという記憶がない。裏道登山道そのものは、それほど特徴のない道である。ただ、この道を下る時右手に見える岩肌は、やがて絶壁に近く直立した断崖となる。これがかの有名な藤内壁だ。その峻険さに圧倒されてこの岩壁を眺めていると、確かに一般登山者とはまた異質の、クライマーがそこを攀じ登っている姿を見て取れた。藤内壁はロッククライミングのスポットとしては全国でも屈指の場所であり、世界的に名を成したその道のプロの中にも、ここ御在所岳をホームとして技術を磨いた人がいるという。

 クライマーに限った物ではないのかもしれないが、この裏道沿いで二つ三つ、山において遭難死した人への手向けの言葉を目にした。と言って、いずれの人も御在所岳で死んだわけではなく、最期の地は日本や海外の有名な山岳であることが明言されている。おそらく、故人は平時にここ御在所岳で研鑽を積んだものなのだと思われる。

 藤内壁出合を通過ぎ、さらに「兎の耳」と呼ばれるポイントを通過。名前の由来は定かではない。ガイドによれば、ここから先は土砂崩れの傷跡も生々しい河原を歩くことになると言う。確かに、そこから間もなく、要所の岩に施された赤いマーキングが頼りの河原道が始まっていたが、往時を知らない人間にしてみれば、土石流や土砂崩れの跡が生々しいとまでは思えなかった。谷川伝いの登山道と言うのは、しばしばここと同じような様相を見せることがあるので、普通の河原歩きみたいなものだ。ただ、藤内壁の続きの斜面が大きく崩れ、木々がなぎ倒された状態になっているのだけは確認できた。あるいは、旧来の裏道登山道は、この崩落部分につけられていたのだろうか。手持ちの資料だけでは過去の経緯が分からない。

 河原道を10分ほど行ったところで、山小屋である藤内小屋に到着。これまでに得られた情報を総合すると、藤内小屋もくだんの土砂崩れの影響を受ける場所に建っていたため、一度は営業休止を余儀なくされ、わりと最近になって復旧したものだと思われる。あたりの河原や山の斜面は、まだ荒れた印象ではあるが、小屋の周辺には多くの登山客が憩っていた。ともあれ、おおよそこの辺りまで来れば、御在所登山にも終わりが近づいたといって良い。

 その先、砂防ダムか何かの建設工事のために、本来の登山道を迂回するルートを歩かされる場所もあったが、概ねは変化に乏しい山道を歩き、4時間前に横断した県道まで戻ることが出来た。一つ躓いたのが、県道から先、湯の山温泉まで戻るルートを見失ったことで、蒼滝大橋の方へと下る階段の方へ歩き続けるのが正解だった。途中までは県道を下って行ったのだが、そのまま行っていたら湯の山温泉駅のあたりまで下らなければならなくなるところだった。幸い途中で間違いに気づき、三交湯の山バス停にたどり着いたとき、ちょうど帰りのバスを捕まえることが出来たため、帰りは思いのほかスムーズだった。
裏登山道に進む。裏と言うだけあって地味で、登山者の数も少なめ。

険しい岩場が見える。

普通の登山道には見えないところにも人はいる。

ただ、自分の歩く道は単調で足場の良くない谷間の河原道である。

藤内小屋に到着。終わりは見えた。

 
アクセス 近鉄湯の山温泉駅より三重交通バス「三交湯の山温泉」下車。名古屋(名鉄バスセンター)から三交湯の山まで高速バスもあり。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]23 三重県の山 山と渓谷社
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