御在所岳・その2
アクセス至便の鈴鹿の山
■標高:1212m
■歩行時間:4時間10分
■登山日:2012年4月29日




 地蔵岩付近まで、道は淡々と高度を稼いできたが、ここらで一旦、登りのペースが緩む。高度的にはほとんど変化がないまま、しばらく歩く。途中、右手が断崖となった砂地の尾根を渡った。全般に高木のない道である。頭上を行くロープウェイが良く見えるが、その向かう先である御在所岳山頂は、まだまだ前方にいや高く聳えている。再びハードな登りが始まるのだろうかと身構えていると、登りどころか、岩場を大きく下るポイントに到着。6合目に相当するキレットである。

 「キレット」とは、山岳用語の一種だが、外来語ではなく、日本語由来の単語なのだそうだ。その発祥は、「切れっと」であるなどとも言われている。つまり、すっぱり切れ落ちた稜線のことだ。御在所中道登山道のそれの場合、目測十数メートルほどの高低差がある岩場を、時に鎖につかまりながら登り、あるいは下りしなければならない。往々にしてこういうのは、下りより登りの方が、楽と言うか技術を要求されず、恐怖心も伴わないのだが、今回の私やそれに先行する十数人の場合は、ここを下らなければならない。勢い、進行速度も遅くなる。先行グループの中には、子供や中高年女性もいるからなおさらだ。まあ、こればかりは仕方がない。急がせることになっても良くないので、自分の番が回ってくるのをじっと待つ。もっとも、いざ自分がそこを下ろうという段になると、傍で見ているよりは難儀せずに済んだ。

 キレットを越えると、後はひたすら山頂に向かって登り続けることになる。が、キレットで発生した長い隊列が、再び私の進路をふさぐ形になった。またしても、のんびりペースに付き合うことに。向こうの岩稜にも登山者の列が見えるが、あれが一ノ谷新道か。あちらはあちらで険しい道のようだ。御在所岳には多くの登山道が存在している。

 約20分ほど歩いた岩場で、先行集団の人たちが道を譲ってくれたので、そこで一気に前へ出て、さらに20分ほどで富士見岩に到着。ここにも多くの人が立ち止まっている。確かに眺めの良い場所には違いないが、ヤマケイのガイドによれば、本当に富士山が見えるのは一年で数日程度のものらしい。もちろん、今回は春霞で富士山など望むべくもない。伊勢湾すらおぼつかない程度である。ただ、隣にある鎌ガ岳の鋭く天を衝くような山体は、はっきり望むことができた。

 キレットから富士見岩までが長かったが、その先、山道は長くは続かなかった。間もなく、登山道は山上公園に接続。実質、ロープウェイでやってくる一般観光客向けに整備された公園の区域内に入ったため、登りらしい登りはほとんどない。せいぜい、「高低差のあるところに園路が設置されている」程度の坂道しか見当たらなくなった。周辺地図の設置されている小展望台の方に行ってみても、普段着姿の人も多く目に付いた。一方、登山者の方にも山登りは終わりと言う意識があるのか、ロープウェイ駅の方へ行って、自販機で冷たい飲み物を買いたいと言う会話を交わしている人もいる。場所柄、そういう発想が頭をもたげてくるのもいたし方があるまい。ロープウェイ駅は、ここから少し登った場所にあるようだが、そこは御在所の山頂ではないピークらしく、山登りにおいてはほとんど意味のない地点であるように思われたため、そこを巻いて山頂を目指す。

 そしてついに視界に捕らえた御在所山頂は、スキーのゲレンデの頂点部分に当たると思われる、えらく開放的な場所であった。ロープウェイ駅直下からだと、水平距離もそこそこありそうだが、どうやら一度下って再度登り返さざるを得なさそうな場所だ。スキー場なだけに、ご丁寧にリフトも設置されているのがかえって恨めしい。それでなくてもリフト好きな私、リフト利用の誘惑を断ち切るのが大変だった(萩太郎山の項参照)。そして11:38に、どうにか自分の脚で1212mの山頂まで登りきることが出来た。

 一般観光客は、ロープウェイの駅からここまででさえ、くだんのリフトを利用し、労せずして移動することができる。ここにもまた、軽装の人が多くいる。それに劣らず登山装備の人が多いのは、この山のメジャーさの表れではあるが、御在所岳最高点は、どうやら山名票と一等三角点のあるこのピークではなく、望湖台、すなはち琵琶湖をも望むことができると言う隣のピークらしい。一応、そこは目指さねばなるまい。たまたま隣にいた老翁(一般観光客)は、すっかり霞んだこの気候の中では琵琶湖など見えるはずもなく、従って望湖台まで脚を伸ばす価値などないと主張して、同行した家族をてこずらせていたようだったが、このあたりに単なる観光客と登山者の温度差が現れていると言えよう。ただ、頑固翁の読み自体は全くその通りで、琵琶湖はその姿を私に見せてはくれなかった。まあ、昨日の江北行きで見たし、それで良いか。
地蔵岩周辺からの眺望。

砂地の尾根道は右手がかなりの急傾斜になっている。

上から見たキレット。最高部と底部の落差はさほどでもないが、下部は崖に続いている。

富士見岩から見た鎌ヶ岳。

富士見岩後は平坦な山上園地につながり、山頂に至る。

望湖台より。右手の山は釈迦ヶ岳。多分。

 
アクセス 近鉄湯の山温泉駅より三重交通バス「三交湯の山温泉」下車。名古屋(名鉄バスセンター)から三交湯の山まで高速バスもあり。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]23 三重県の山 山と渓谷社
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