御在所岳・その1
アクセス至便の鈴鹿の山
■標高:1212m
■歩行時間:4時間10分
■登山日:2012年4月29日

    御在所岳は、鈴鹿山脈の北寄りに位置する標高1212mの山だ。今回種本にした山と渓谷社の分県ガイドによれば、全国区の山と言えるほどのものなのだそうだ。地元に住んでいると、この山が他地域からどのように見られているか、直感的には分かりにくい話ではあるけれど、少なくとも東海地方において非常にメジャーな山であることだけは間違いない。今から20年以上前には、「夏の札幌より2℃低い」と言う惹句のテレビCMを流していた記憶もあるが、それほど良く知られた避暑地であるため、子供の頃にはロープウェイで登ったこともある。



 そこそこ歯応えのある山を探していた今日この頃、御在所岳は、まず求めているところに近い山登りを期待できる山なのではないかと、目星をつけていた。さらに連休初日、賤ヶ岳の戦跡となった山城を訪ね、滋賀福井県境の山間部を彷徨していた時、まさに「山笑う」の候となっていたことに気づかされ、この好機を逃すまいとして、GW中にこの山に挑むことにした。

 名古屋からだと、御在所岳へのアクセスは容易である。マイカーはもちろん、公共交通機関を使っても、さほどの苦労は伴わない。所要時間こそ2時間程度にはなるが、列車本数も比較的多いのが心強い。今回は、近鉄で湯の山温泉駅まで行き、そこから三交バスで終点の三交湯の山バス停まで移動したが、どうやら湯の山温泉‐名古屋直通の高速バスも走っているらしい。具体的には、名鉄バスセンターと三交湯の山バス停を結んでいて、基本的に予約は不要のようだ。料金面で言えば高速バスのほうが割高になるものの、乗継がないのは気楽である。ただし、登山に使うような時間であればすり抜けられる公算も高いが、連休などを中心に渋滞が発生しがちの伊勢湾岸道を走ることになるのは弱みなのかもしれない。

 湯の山温泉駅は、御在所岳登山の取っ掛かりとなる駅だけあって、駅の目の前にあるバス停付近には、入山者への注意喚起を促すような看板が立てられており、その中に単独登山を諌めるような一文があったのにはたじろいだ。それでも、超メジャーな山に、日の高いうちに挑むわけだからさほどの問題もあるまいと、気を取り直して山上を目指すバスに乗り込む。ここから、10分あまりバスに揺られることになる。終点となる三交湯の山バス停は、その名の通り古い温泉地である湯の山温泉の玄関口となるバス停だが、車内には湯治客というか宿泊客らしき風体の乗客は見当たらない。代わりに、いかにもと言う感じの山ガールや家族連れのハイカーがいるあたりは、さすがに鈴鹿の山と言ったところか。私のホームグラウンドである三河の山には、山嫗のような年齢層の登山者しかいない。

 さて、今回の登山ルートだが、ヤマケイのガイドそのままに、登りは中道登山道を、下りは裏道登山道を行くことにする。いずれにせよ、バス停でバスを降りてから、本格的な登山道の始まるまでがやや長い。30分弱の間、かなり急峻な山の斜面に開かれた温泉地である湯の山温泉のメインストリートを歩く。歩いている道は一応県道のようで、舗装はされているが、道幅は狭く車の通りも少ない。道々には温泉宿泊施設もあるのだけれど、ちょっと賑わっているようには見えない雰囲気である。前述した昔の御在所登山の時には、湯の山温泉に泊まっておいて、山上までロープウェイで上がったものだが、そうでないにせよ、御在所登山のベースキャンプとして都合が良さそうな湯の山温泉なのにこんな有様だ。それだけでこの温泉地を牽引していくのもまた難しいのだろう。名古屋の泊りがけ宴会場として生き延びる目もなくはないのだろうが、下呂温泉あたりと競合しているような気もする。

 9:47、国道477号を越えて、御在所登山の本編をスタートする。が、ここでいきなり超メジャー山岳の洗礼を受けることに。登山口周辺に、大型バスか何かで乗り付けたらしい大人数の登山者集団が滞留しているではないか。もちろんと言おうか、中高年登山者の集団でもある。下手に彼らの後にでも着こうものなら、超スローペースで登ることになりそうだ。慌てて集団に先行して山に入ったが、ほどなく、別の隊列の最後尾にくっつくことになった。年齢の構成がばらばらなところを見ると、どうやら複数パーティーの混成というか、つまるところは渋滞のようである。御在所の登山道は、道幅が広くないため、追越をかけることも難しく、仕方なくこれに付き合うことにする。時折強引な追越をかけていく輩もいるが、足場の悪いところが多いため、はっきり言って少なからず周囲に危険を及ぼす迷惑行為であると断ぜざるを得ない。

 とは言え、彼らの気持ちも分からなくもない。どうも先頭付近にいる老ハイカーが、あくまでマイペースで集団の頭を押さえつけているために、渋滞が発生しているらしかった。途中、頭上をロープウェイの搬器が通り過ぎていく。渋滞にさえつかまっていなければ、ロープウェイのようにとは言わないが、すいすい進めるところのはずだ。

 結局、大名行列状態は延々20分近くも続き、隊列が負れ石のあたりまで差し掛かったところで、先頭集団以下がまとめて休憩に入ったため、その隙に大渋滞を抜け出すことに成功した。奇岩の迫力が胸に迫る5合目負れ石見物を、渋滞回避のために半ば犠牲にしなければならなかったのは痛かったが、今回の山行全体で見ればまず正解と言える判断だったのだろう。岩の周辺には、さながら砂糖に群がる蟻の如く、多くのハイカーが屯していた。

 少し進んだところで、ようやく御在所岳の全貌を見渡せる場所に差し掛かった。湯の山温泉にいる頃から、ごく断片的に御在所の山容を望むことはできたのだが、ホテルの建物や山影に遮られ、その全体像を欠けることなく把握することは、ここに至るまで出来ていなかった。

 ここまで、中道登山道は多くが砂地の道だった。岩や浮石がごろごろし、あるいは時に脚を取られる落ち葉が堆積している三河の山道とは随分趣が違う。時には砂岩のような岩場を進む箇所もあるが、まずまず歩き易い。そんな道中に負れ石のような花崗岩の岩場があり、今度は地蔵岩に到着。巨大な石板のような岩がきわどいバランスで幾重にも折り重なる負れ石もなかなかのものだったが、地蔵岩もまるで人為的に積み上げたかのような形に積みあがった岩石群である。昔の人がこういうのを見て、ダイダラボッチを想像したりした心情もわかるような気がする。
登山口付近の道標。登山道だけで3コースが表示されている。

名古屋近郊の山としてはいろんな意味で手ごろなため、登山者数が多い。

ロープウェイが頭上を越える箇所もある。

負れ石。

 
アクセス 近鉄湯の山温泉駅より三重交通バス「三交湯の山温泉」下車。名古屋(名鉄バスセンター)から三交湯の山まで高速バスもあり。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]23 三重県の山 山と渓谷社
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