三ツ瀬明神山(乳岩峡より)・その2
三ツ瀬明神のロングコース
■標高:1016m
■歩行時間:6時間30分
■登山日:2012年4月7日




 合流点に差し掛かった時、三ツ瀬登山口からやって来たと思しき、初老のハイカーの群れが、道標周辺に舫っていた。乳岩ルートに比べれば歩行距離の短い三ツ瀬ルートだが、彼らはここに来るまでのどこかで、鎖場やロープ、鉄バシゴなどを経由してきているはずだ。それらはこの先の山頂への道の間にも存在しているはずである。三ツ瀬明神は、愛知県内の山ではなかなかお目にかかることのない、そうしたものが存在していることによっても特徴付けられる山だ。

 近在の山から眺めた時、三ツ瀬明神は双耳峰さながらの、二つのピークを持った山のように見えることがある。そのうちの一つはもちろん、正真正銘明神の山頂だ。ただ、もう一つのピークが、この合流点よりも山頂側にあるのか、三ツ瀬登山口にあるのか、私の知識では判断がつきかねた。ここから先の稜線では、そんなに大きく登ったり下ったりした記憶はない。ただ、鎖場や痩せ尾根が相次ぐスリリングなコースであることに間違いはなかった。前回はさほど気にならなかったのだが、両側がすっぱりと切れ落ちた痩せ尾根になっている場所も何箇所かあり、普通に歩く分には特に問題はないのだけれど、何かの拍子にバランスを崩したりした日には、断崖をまっさかさまに落ちて行くことになるのだろうなと思うこともある。日の当たらないところには、霜柱や雪が融け残っていたりした。反面、ハードな登りというのはほとんどない。山頂直前で一箇所、急斜面を這い上がることになるが、その程度のものだ。

 合流点から山頂までは、30分とかからなかった。山頂にあるのは、相変わらずの赤い展望台で、この時期はまだ風が冷たいのも前回と変わらずだ。展望台からは、遠くは南アルプスの山を望むことができ、その前衛には正しく重畳たる山並みが続いているのが見える。山容を見て、どれが何と言う山なのか、遠くのものも近くのものも判然としないのだけれど、ほぼ真北にどっしりと構える山が印象に残る。当然、その山頂は今自分が立っている場所より低く見えるのだが、「愛知の130山」の地図と付き合わせるに、尾籠岩山だろうか。それとも古戸山か。確証は持てないが、登頂意欲をそそる山ではある。この山頂は、一部に木立がある関係で、南から南西方向への展望のみは遮られる。

 それにしても寒い山頂である。前回も長居しなかった記憶があるが、今回もまた、どこか逃げ去るようにして山頂を後にした。手持ちのお金さえ潤沢なら、柿野登山口側へと下山し、東栄町の町中を流して帰ったかもしれない。山頂では、そう言う考えも頭をもたげた。これをやろうとすると、多分タクシーで飯田線の駅まで移動しなければならなくなるため、ある程度まとまった額の軍資金が必要になるのだ。しかし、18きっぷ旅の宿命とでも言うべきか、財布の中身は高校生の小遣い程度の額でしかなかったため、やはり当初の予定通り、乳岩側へと下ることにした。

 下りは、前回の明神登山とほとんど変わることがないので、主要部分以外は割愛する。山頂から2時間ほどで乳岩入口までたどり着いた。登りの時はさほど気にならなかったが、思ったより足場の悪い道中で、下りでもさほどスピードが出なかった。

 ところで乳岩だけれど、新城市のホームページや、Wikipediaの乳岩峡のページを見ていると、乳岩と呼ばれる岩とは別に、乳岩山という名の、標高670mの山があるらしく、二つの関係が少々紛らわしい。最広義での乳岩の指し示す範囲は、いわゆる乳岩峡とほぼ同義で、この場合は前述乳岩山をも包含することになるだろうが、狭義の乳岩は、標高にして400mほどの、凝灰岩質の岩山と言うか巨岩で、ここに洞窟や天然石橋などが形成されており、ダイナミックな奇観を作り上げている。この乳岩周辺には、これを一周する散策路が付けられており、一回りすると20分ほどになるらしい。

 乳岩は、明神登山道分岐からほどなく、右手に姿を現す。登りと言うほどの登りはない散策路ながら、体が重く、思いがけず息が切れる。明神の頂に立つまでは、さほど消耗した感覚はなかったのに、下りで思ったより披露したらしい。やはり下山路に乳岩ルートを選択した前回登山も同じように消耗したことを思えば、乳岩ルートは登り易く下りにくいルートなのか。基本的に一方通行となっている乳岩の周回路は、道幅が狭く、時に岩の隙間を梯子とも何ともつかない急な鉄階段で潜り抜けたりするが、ここで何度か躓きそうになった。足が上がっていないのだろう。

 いつ崩れてもおかしくなさそうな岩の隙間を潜り抜け、とにかく道の続くまま歩いて行く。間もなく、天然石橋であるところの通天橋が見えてきた。アーチを描く岩の橋の下から見えた岩山が、今にして思えば乳岩山だったのだろうか。橋の上部を渡ることこそ出来ないが、なるほど、どこにでもあるような景観ではない。これを潜り抜けてなおも進むと、今度は岩壁に大きな窪みが姿を現した。中でも、特に奥行きの深いものは洞窟と言っても差し支えのない趣である。奥へと続く鉄階段を上りきると、下からは良く見えなかったが、二十体ほどの石仏が並んでいた。こういった信仰の形がいつから続いていたものなのかは分からないが、それなりに古めかしい仏像ではあった。

 これらを一巡して、乳岩の散策は終わりである。後は登山口まで戻り、さらにその先の三河川合駅まで歩いた。日中の時間帯は、1時間に1本も列車が走っていない区間だが、幸い30分ほどの待ち時間で豊橋行きの列車がやってきたので、これで豊橋まで戻り、さらに東海道線で名古屋まで引き上げた。
前回の山行でも写真を取り上げている鎖場。

両側が断崖となっている馬の背。

赤い展望台。

北方の山並み。

乳岩・通天橋。

オーバーハング…というより洞窟状に抉れた岩の下部には石仏が祀られている。

 
アクセス JR三河川合駅より。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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