飯盛山・その2
中馬のおひなさんと足助の里山
■標高:254m
■歩行時間:2時間
■登山日:2012年2月26日




 山を下り、いざ街並みへ。さすがに街道時代から続く建物で、昔と同じ生業を続けている家はごく少数のようで、普通の民家や、建物を新しく改修した商店などが主だが、中には古い旅籠の建物そのままに、観光客向けに食事を供しているところもあるようだ。ただ、古い家だから、商売屋だからという仕切りはなしに、道沿いの家の多くがお雛様を沿道から見える位置に飾っている。御殿飾りのある、古めかしいながらいかにも豪壮なものもちらほらある。こういう形式の雛飾りは、人口が都市部に集中し、住宅事情が逼迫してくる昭和の中頃までは比較的良く見られたもののようだが、では逆にどれほどの時代まで遡ることが出来るのか、つまりどの程度の年代物なのかと言うのは、見当もつかない。もちろん、それとは逆に昭和末から平成ぐらいのものと思われる、新しい雛飾りも目に付く。土雛も多い。中には、この催しに参加するため新たに購入されたものと思しき、真新しいものもある。雛飾り習俗の古今に興味を惹かれると共に、街を挙げて町おこしを行っている足助の取り組みも、注目に値すると思う。

 10年ほど前に来た時は、本当に各家庭が保存していた雛人形を飾るだけのシンプルなイベントと言う雰囲気だったのだが、久しぶりに来てみると、大分アイディアも練られて来ているらしい。商店を中心に、「多分古道具屋からかき集めてきたのかな」と、そういう方向に力を入れているようなところもあるし、この地域でひな祭りの時期に食される「おこしもん」と呼ばれる米粉由来のお菓子や、色とりどりの花餅飾りなどの自作体験の場を用意しているところもある。

 それにしても、今日は動き出しこそ早かったものの、移動に予想外の時間をとられているため、さほどあちこち行ったわけでもないのに、この時点ですでに12時を回っている。まともな食事とは言わないが、五平餅程度のものでも食べられるところはないかと、道沿いの店をきょろきょろ眺め回しながら移動する。五平餅を商う店はわりとあちこちにあるのだが、どういうわけか、どこも焼き上がりを待たなければならないような状況のようで、ジャストタイミングでありつけそうなところがない。そうこうしているうち、足助の街並みでも最もよく知られたスポットの一つであろうマンリン小路の前へ。

 「マンリン小路」の「マンリン」というのは、小路の入口にある書店・マンリン書店に由来する。実は今回、純粋に書店としてのマンリン書店に期待するものがあった。私は常々、郷土史、街道、古民家と言ったところについて記した良質の書物を探しているのだけれど、例えば丸善なんかに行っても、そうそう琴線に触れる本には出会えるものでもない。しかし、街道の街の老舗書店と言うアプローチは、掘り出し物を引き当てられるかもしれない。そう思って店内に入る。雛飾り他の展示を目当てにやってきたらしい客が、予想外に多くいて、もともと小さな店内がさらに狭く感じられるほどの活況だったが、果たしてその一画に、私がお目当てとしているジャンルの本が集められていた。タイトルを一通り確認していく中で、目ぼしいものをいくつかピックアップしたのだけれど、最終的には新城市の「末社めぐり」と呼ばれる行事について記した「秘境の民俗神たち」と言う本を購入。「宮本常一とあるいた昭和の日本」にも浮気しそうになったが、このあたりのメジャーどころは丸善で買えば良い。

 やっぱり、こういうところに来て、見るだけ見て一円のお金も落としていかないと言うのは、あまり感心できた作法ではない。いろんな意味で有名なマンリン書店で買い物をし、一応義理は果たせたかなと思って少し進むと、今度は以前から気になっている、しし鍋や川魚・山菜料理エトセトラの店、「井筒亀」の前に差し掛かった。実は既訪で、しし鍋も食べたことはあるのだけれど、「あの味をもう一度」といったところなのである。とは言え、本店の方は少々お値が張る。まして、一人でふらりとやってきて鍋料理もない。そこで今回は、2軒隣の精肉店部門(?)の方で、ししコロッケ130円也を買うことにした。

 それにしても、ここも地元の有名店だけあって、大した繁盛振りである。店の前には私と同じくししコロッケを求める客が行列を作っていた。普段は、小さな町の住民たちを相手の商売をしているため、量産体制が確立されていないのか、少しずつ揚げては何人かの客の注文を受け、全てはけると次の揚がりを待つと言ったことを繰り返し、私の番がやってくるまでは10分あまりがかかった。待ちに待ったという感じでありつけたししコロッケは、素朴な味わいをしていたが、猪肉らしさがあるかと言えば、身がミンチになってしまっていることもあり、良くも悪くもそういったところはない。

 ちなみに、それからまた20分あまり後、もう一度井筒亀の前を通ったのだけれど、さらに長く延びた行列の横を、この家の子と思われる子供二人が、揚げる前のコロッケをトレーに乗せて、本店の方へと歩いていく姿が見えた。本格的な食堂の厨房を使ってじゃんじゃん揚げていかないと、供給が追いつかなくなってしまったということなのだろう。それにしても、子供の手伝いと言う光景に、この店の経営の家庭的な温かさが見えて微笑ましい。

 井筒亀前を通過ぎても、雛の展示はしばらく続くのだけれど、終わりが見えてきた雰囲気になるのも事実だ。一応、足助バスターミナルまで歩き抜けては見たものの、向こう1時間ほどはバスが出ないことが分かり、先ほどまで歩いてきた道をのんびりと引き返し、香嵐渓バス停付近まで戻った。近くにはビジターセンターがあり、東海自然歩道についても若干アナウンスしていたが、やはりここから寧比曽岳までのアクセスには難しいところが多そうである。

 帰りは、豊田市のコミュニティバス・おいでんバスで名鉄豊田線の浄水駅まで移動することにしたが、コミュニティバスの宿命か、やってきたのは大型バスではなく、ほぼ満席状態のマイクロバスだった。残念ながら私は座席を確保することが出来なかったため、つり革・手すりの無い車内で立ち乗り状態と言う苦境に立たされることになった。そして、その状態からさらに乗客があったため、終盤の車内は発展途上国の乗り合いトラックを思わせるすし詰め状態となった。

 足助へ行くのもなかなか楽ではないと思った一日だった。
足助観光の中心は香嵐渓。少し離れた宿場方面がにぎわうのが、雛祭だろうか。

マンリン小路。

花餅。

そして井筒亀。

 
アクセス 名鉄豊田市駅より名鉄バス「香嵐渓」下車。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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