継鹿尾山
紅葉の名所・寂光院の裏山
■標高:273.1m
■歩行時間:3時間30分
■登山日:2012年2月11日

    継鹿尾山は、犬山市街の東の外れに位置する山である。界隈は観光都市の性格が強い犬山市の特性が色濃く現れた地域であり、犬山遊園の駅からモンキーパークを行き過ぎ、紅葉の名所で知られる寂光院への道を脇に見ながら進むと継鹿尾山に至る。木曽川に面する北側はわりと急な山肌を見せている。こちら側の山腹にあるのが、有名(?)な桃太郎神社である。そんなこんなで、山自体が有名と言うより、その周りにあるいろいろな施設が巷間よく知られている。ともあれ、愛知県の端と言ってよい場所で、その先は鳩吹山に通じている。



 鳩吹山と、継鹿尾山の前座となる西山の間は、北周りと南回りの二通りのルートが存在しているのだそうだ。どうやらその分岐点らしいポイントまで、鳩吹山頂から20分強。北周りルートの方を見ると、「この先の遊歩道には、急な岩場があります」と、その道のりの険しさについて注意喚起する看板が目に付いた。それに加えてありがたくないことに、北周りルートはこの分岐から一度はかなり高度を下げることになりそうだった。しかしながら、目を反対の南回りルート方向へ転じると、確かに登山道らしきものは続いているのだが、その方向に進めば何があるのか、道標の類が一切、出ていない。迷い道とは言わないが、こちらのルートに踏み込むと、所期の目的地にたどり着けないと言う事態も懸念される。やむなく、北周りに進路をとることにした。

 「案ずるより生むが易し」とは言う。実際、北周りルートはところどころで岩の露出するルートではあったが、ファミリー向け・中高年向けハイキングが主体となる鳩吹山のレベルから言えば険しいと言う程度のもので、注意しながら歩いていけば、それほどナーバスになるほどのこともなかった。

 そんな道のりを行くこと20分で標高339.9mの西山山頂へ到着。時計は11:40を表示している。西山と言うのは地元での呼び名らしいが、歴史的には「美濃と尾張の両方を見る山」と言うわけで、両見山という呼称が存在していたらしい。ただし、今の両見山頂は、展望のほとんどない樹木に覆われた頂である。単なる経由地と言う以上の価値は見出しにくい。ここで私は、山頂を踏む直前に分岐した脇道の意義を理解した。要するに、登り下りを一回パスするためのバイパスルートだったのだ。西山は、多くのハイカーにとって、西山登山口から鳩吹山頂へアプローチしようとする場合の一経由地と言う以上の意味は無いと思われる。

 西山山頂までは意外とダイナミックな変化のあった鳩吹山登山道であったが、西山から継鹿尾山方面へ抜ける区間は、どちらかと言えば淡白な、変化の乏しい山道である。最後の最後、急坂を一気に下り、登山道の一つの区切りとなる林道出合いまでは、40分ほどを要した。

 トレイルランニングの人が、私の傍らを走り抜けていく。奥三河でトレランをやっている人には出会ったことがないから、都市周辺の山に付き物の光景なのだろう。険しさはないが、2時間近くを山歩きに費やしてきた中で、ふいにこの山が都市近郊にあるのだということを思い出す。

 トレイルランニングと言うのは、悪路でもやる人はやるのかもしれないが、足場の悪い坂道と言うのは、およそ走るには適さないだろう。むべなるかな、継鹿尾山の山中で、登山道はついに東海自然歩道に合流するので、道の整備状況は俄然良くなる。いや、登山道が東海自然歩道に合流すると言うよりは、東海自然歩道が継鹿尾山を通っていると言うべきか。今回の山行はそもそも、東海自然歩道を歩いてみると言うところに相当の重きを置いていたので、ここでようやく本題に入ったと言えなくもない。なお、鳩吹山の東南麓を通ってきた恵那ルートは、継鹿尾山域で本線と合流する。

 東海自然歩道には自然探勝路の性格があるため、野鳥や植物に関する解説板もしばしば目にする。これ自体は決して古めかしくはないのだが、協賛企業(?)として東海銀行の名前が出てくるあたりに時代を感じる。このほか、世間の評判を見聞きするに、どうやら木製階段、擬木階段が多いのが東海自然歩道の特徴なのだそうだが、なるほど、継鹿尾山に入るやその種の階段が良く目に付くようになった気がする。

 これが一直線・一本調子の長い階段だったりするので、登っていると結構疲れてくる。そんな階段と、何回か出会う。最初の2回くらいは、それでも一気に登りきっていたのだが、さすがにいつしか、途中で一息つかなければ登り切れなくなっていた。なんだか、以前の鞍掛山ストレートを思い出す。あの時は、心臓破りの階段を登った先が山頂だったが、今回もそういうパターンではないかしら。そう考えながら、難物の坂を上りきると、今回もまたそこが継鹿尾山の山頂なのだった。林道からここまで30分あまり。時刻は12:57。

 継鹿尾山の山頂は、北から西にかけて展望が広がっている。ちょうど鳩吹山と対象を描く形だ。眼下に緑の水面を湛える木曽川が見える。「滔滔と流れている」と表現するのが適当なのか、あるいは実際はもっと激しいうねりを伴っているのかもしれないが、さすがにこの場所からはそういった様子までは見えない。斜面に向かっては、東屋と言うよりはもう少し洒落た、屋根付きデッキ風の展望台が設けられていた。景色を眺めるだけなら、あえてこの展望台を使う必要もないのだが、まあ一応屋根の下に入った方が雰囲気が出るだろうと思い、中に入ってみる。遠望は大して変わらないのだけれど、もみじ寺として知られる寂光院の建物のようなものが見える。折も折、お寺の鐘つきの音が聞こえてきた。

 ひとしきり景色を眺めたところで、下山を開始。ここからは、最前眼下に見下ろした寂光院の方へと下る予定である。東海自然歩道の経路をそのままなぞるだけのはずだし、よもミスコースをすることもないだろうと思っていた。ところが。

 一応明瞭な踏み跡というか、登山道を歩いていたはずなのだけれど、道はいつしか、岩肌の露出した急な斜面へと姿を変えていった。もちろん、歩き下れないほどではないのだが、なかなか急な道である。しばらく下ってみたが、状況は変わらない。どうも、登山道であることには違いなさそうだが、東海自然歩道がこのレベルの整備状況の道であるとも考えにくい。普通なら、険路であれば階段の一つも設置するだろう。三大難所の一つと言われる岩古谷山のようなところだって、一応は道のりの険しさをフォローするため、急なりに鉄階段などがあった。この突き放しぶりは、やはり東海自然歩道からは外れていると考えるべきか。実際、さらに進んでいくと、コース脇の木に赤テープが巻きつけられているのが目に付き始めた。これは実質、この道が獣道や水みちの類でないのと同時に、東海自然歩道でもないことを意味する。とりあえず、道なりに行けば、どこかで一般の道路には出会いそうだ。寂光院を切る展開になりそうなのは残念だったが、さりとてミスコースが始まったと思われる山頂近くまで引き返すのも億劫だったので、そのままその道を下ることにした。

 下り始めて20分ほどで、どこか心もとない山道は、舗装道路に突き当たって終わりを迎えた。飛び出した先は、県浄水場の裏山あたりか。ことによると、これまで下ってきたのは、浄水場関連の作業用登山道だったのかもしれない。何にせよ、案の定、寂光院からは大きく外れたところに出てしまったようだ。とにかく道なりに歩いて行くと、モンキーパークの裏手に着いた。ここからだと寂光院へは大きく引き返す形になるため、これを諦め、帰りの最寄駅となる犬山遊園駅へと向かう。モンキーパークの私道のような、面白味もない舗装道路を歩く時間は長く感じたが、ともかく14時を少し回った頃に、犬山遊園駅へとたどり着き、今回の山行は終わりを迎えた。

 可児川駅に降り立ってから、犬山遊園駅にたどり着くまで、歩きづめでおよそ4時間。平地を歩行していた時間もかなり長かったが、脚部痛と甚だしい体力の消耗は無かった。ただし、靴のサイズの問題か、足の裏が若干ヒリヒリする。
西山、あるいは両見山の山頂。

継鹿尾山域への入り口となる林道。

整備状況はさておき、やや人工物が過剰な気もする東海自然歩道。

低山ハイクの良さを味わえる山道。

山頂の風景。

犬山・各務原方面を見渡す。

 
アクセス 名鉄犬山遊園駅より。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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