鳩吹山
愛岐境の里山
■標高:312.2m
■歩行時間:3時間30分
■登山日:2012年2月11日

    犬山以東の愛岐県境は、丘陵あるいは山地によって形作られているところが多い。鳩吹山も、そうした山々のうちの一つである。この近郊では人気のハイキングコースとして、「愛知の130山」に取り上げられている。とは言え、実際はほぼ岐阜県可児市の山と言って良い。木曽川に臨む山であり、北東側はわりと険しい岩場が露出していたりする。また、川の右岸から見るか左岸から見るかでも印象が違う。本質的には標高312.2mの山で、登山道も整備されているので歩きやすい山なのだけれど、2014年の正月には、日没の迫る時間帯に入山した会社員が道に迷い、警察に110番で救援要請するというような椿事も発生している。



 週の半ばあたりには、またも積雪があるかと思ったが、どうにかそういったこともなく、週末の天気も崩れずに済みそうだったので、東海自然歩道に繰り出してきた。山名で言うと、鳩吹山と継鹿尾山が、今回の標的となる。東海自然歩道ハイクのガイド本、踏破経験者の記録の類を見ていると、この近辺では善師野が1日の行程の起終点とされているケースが多い。名鉄広見線にズバリ善師野駅があってアクセスに都合が良いのと、寧比曽岳で分岐する本線ルートと恵那ルートの合流点が、この近辺にある関係だろう。なお、厳密に言うと東海自然歩道は、恵那コースが鳩吹山のふもとを巻いて、継鹿尾山に入る形になっているため、鳩吹山はその経路上から外れる。

 当初は私も、特に思うところなく善師野駅を取っ掛かりにして二座を攻略しようと思っていたのだが、よくよく調べてみると、善師野駅は二つの山の中間、あるいは継鹿尾山寄りに位置しており、両山制覇を狙う上ではやや都合が悪い場所だと分かった。どちらかの山に対して、「登って下りる」をした後、間髪入れず残りの山への登りに取り掛かる形になるため、どうしても作業的な行程になってしまう。そこで、縦走っぽく二つの山を制覇するため、スタート地点を名鉄可児川駅に持って行くことにした。ここから鳩吹山に登り、登山口の反対側へ抜けて、継鹿尾山に挑む行程である。最終的には、犬山遊園駅まで歩き抜け、帰途に着く事になる。

 8時半過ぎに名古屋を出て、可児川駅に降り立ったのが10時少し前。ここから鳩吹山の登山口にたどり着くのに少し手間取った。もう少し分かりやすい道案内があるものだと思っていたのだが、駅に大雑把な地図があっただけで、一般道を行きつ戻りつしながら、ようやく大脇の登山口にたどり着いたのが10:35のことだ。国道41号橋桁下の、やや無機質な雰囲気の登り口で、一応ここからが登山の始まりである。登山口にある案内図によれば、山頂までは50分弱程度の道のりとなるようだ。が、実際にはそれほどかかることもあるまい。

 標高こそさほどのものではないが、鳩吹山は、意外に切り立った山のイメージである。可児川駅から見た時の、印象が鮮烈だったせいかもしれない。木曽川の左岸にそそり立つ鳩吹山の、川に面した側は、切り立った岩壁がむき出しになっていた。何しろこのあたりの木曽川は、地元では日本ラインと呼ばれる急流である。本場ライン川がどの程度の急流なのかは寡聞にして知らないが、ともかくそれだけの流れに削られたとあらば、あれくらいの岩壁は出来上がるのかもしれない。

 もちろん、登山道が付けられているのはそれとは反対側の、比較的なだらかな南側斜面の方なのだが、ところどころに岩場が見られるあたり、同じ一つの山なのだと実感させられる。登りは、さほどきついわけではないものの、長い平坦路や、まして下り坂などに差し掛かることもなく、淡々と高度を稼いでいく。稜線に出るまでがおよそ10分あまり。稜線上に出ると、進路を西に振ることになる。右手の美濃加茂や坂祝の方向に広がる街並みが良く見える。左手側に展望がないわけでもないが、こちらには山と、工場のようなものが見えるだけで、変化には乏しい。

 稜線上に出たからと言って、全くアップダウンが無いわけではないのだけれど、前方にはもう大した高みも見えない。時間的に早い気もしつつ、頂上が近いのかと思っていると、5分少々を歩いたところで山頂に到着。厳密には山頂の前座の東屋だが、ここからの展望がすばらしい。山麓から木曽川対岸にかけての街並みを見下ろせるのはもちろんのこと、東濃から木曽へと連なる山並みが、遮るものもなく遠望できる。特に印象深いのが、今年中の登頂を目標に掲げている恵那山と、昨年の目標であった御嶽山の二座だ。

 登りはじめからここまで20分少々。休憩にはまだ早い時間帯のような気もするが、景色を楽しみつつの小休止。そこから少しばかり北へ歩いて、鳩吹山の頂に登り詰めた。こちらにも眺望があるが、先ほどの東屋に比べると、やや北寄り、飛騨の方向に向かって、展望が開けている。この時、10:55。

 ここで、この先のルートを再確認する。ここから先、継鹿尾山までは、西山を経由して歩くことになる。縦走と言いたいところなのだが、西山と継鹿尾山の間は、一つの山塊ながら稜線伝いに繋がっているとは言いがたい。西山の頂を踏んだ後、一旦は鞍部に向かってかなり高度下げ、再び登り返すような形になる。

 ともかく、継鹿尾山を目指し、先へ進む。尾張富士の時もそうだったように、この地域の山はわりとごつごつした岩場の卓越している箇所が多いようである。鳩吹山頂を通過してすぐの岩場には、小さな仏像が鎮座していた。歴史のあるものとは思えなかったが、それらしく見えるのは岩稜の魔力の故か。山頂より先、まだいくつもの小ピークを越えていくことになるのだろう。それらの斜面にくっきりと刻まれた道を、先行の登山者たちが歩いていくのが見えるが、見ようによっては巡礼のようだ。

 登ったり下ったりを繰り返しながら進む。鳩吹山頂から見えた西の山塊の一つが継鹿尾山なのだろうという程度に認識でいたのだが、どうやらここまで歩いてきた感触から言って、それらの山並みの中で一番奥に見えたのが西山で、継鹿尾山はそれらの影に隠れていると考える方が適当なようだ。二つの山の間の距離は思ったより長いらしい。道々には、火気の扱いを禁止する看板が良く目に付く。鳩吹山は昭和62年(1987)に、山火事で山林の多くを焼失している。この山域にある木の丈が、さほど高くないのはそのためだと言う。稜線上の展望も、ある意味ではその山火事の産物である。
色気のない登山口。ただ、登山口は往々にして無愛想だ。

陽の当たる山道。

稜線に出るまでが早い。

山頂から見下ろす美濃加茂の街。写真だと小さいが御嶽山も見えている。

人里離れた場所ではないが、西へとしばらく山が続く。

 
アクセス 名鉄可児川駅より。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
関連サイト

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