御嶽山・その3
木曽の御嶽山に登る
■標高:3067m
■歩行時間:5時間
■登山日:2011年7月24日




 山頂を征服した後どうするか。実はこれと言うプランも持っていなかった。到着時刻見合いで、山頂周辺の景勝地等を周遊しようかと考えていた程度だ。帰りの予定も考慮すると、13時から14時までの間には下山を開始したいところだが、現在時刻は11時半。この1時間半から2時間程度の時間差が、そのまま山頂での行動可能時間となる。別の見方をすれば、剣ヶ峰山頂から片道45分ないし1時間程度で行ける場所ならば見学が可能だと言うことだ。そこでまず、眼下に水を湛える、二ノ池を間近に見に行くことにする。

 坂道を下る時は、脚に負担はかかるものの、息が切れることはまずない。従って、おそらくは高山病の症状だと思われるめまいに悩まされるようなこともなく、気楽な気分で二ノ池方面へと下っていく。山頂からは割と近くに見えたのだが、下りきるまでに何だかんだで30分ほどを要した。湖岸には、どう言ういわれのあるものか、小さな女神像?と馬の像が立っている。あるいは仏像なのかもしれないが、その目の前には鳥居が立っている。ここに限らず、御嶽山は山中いたるところに石像や銅像が建立されているのだが、御嶽教そのものは神道の一教派であり、そう考えると人の似姿をした像を建立するのは、教派の本質からは少しく隔たりがあるような気もする。しかし、、御嶽教の源流に修験道があるのは否定のしようもなく、では修験道とは何かということになれば、それこそ仏教と神道の相の子みたいなものだということになる。これぞ神仏混淆だ。ちなみに、露座の像の中には、首が取れてしまっているものもしばしば見受けられる。冬場の豪雪によるものか。

 さて、二ノ池までやって来たは良いのだけれど、まだ下山を開始するには早い時間だ。こんなことならば同じ二ノ池に来るにしても、お鉢巡りをすれば良かったと後悔してみたが、今から逆周りで剣ヶ峰に戻る気にもなれない。そこで、黒沢口登山道を少し下ったところにある覚明堂を目指すことにする。覚明行者は、黒沢口や小坂口の登山道を開いたお坊さんであり、一般人による御嶽登山の父のような人なので、リスペクトの意味を込めての試みだったのだが、黒沢口登山道の9合目となると、山頂からはかなり下ったところに相当する。

 覚明堂付近から見下ろす御嶽山は、谷間が深く切れ込んで見えるのが特徴だ。おそらく、逆に下から見上げてみれば、峨々たる山容を誇っているのだろう。それは良いのだが、今の私には、ここまで下った分上り返さなければならないと言う事実が重くのしかかり、登高意欲がくじかれる。ちょっと動いただけで酸欠の症状が出るのがしんどい。

 幸い、剣ヶ峰の山すそに、八丁だるみへ抜ける比較的平坦な迂回路を見つけたので、今登るには少々厳しいものがある心臓破りの坂を回避することが出来た。八丁だるみから王滝頂上までは、さほど厳しい登りを要求されることもないため、適当に足を止めたりしながら、王滝頂上まで戻った。ここから一気に下っても良いのだけれど、最後にちょっとだけ、奥之院によって見ることにした。

 とにかく人の多い御嶽山では珍しく、奥之院への道には人がいない。往来の少なさゆえか、踏み後もさほど濃くはない。奥之院方向はガスが一層濃くなっているため、何となく心細い気持ちを抱えながら、奥之院があるという西方の峰を目指す。歩き続けること十数分ほどだったろうか、奥之院に到着。ここも他と同じように、それなりの社殿が存在しているのかと思っていたのだが、三体の像が靄の中に佇んでいるだけだ。ここからは地獄谷が良く見えるかと思っていたら、ガスのせいで、物騒な名を付けられた谷底がどうなっているのか、良く分からない。そして、ここで長時間待っているわけにも行かないので、一応御嶽神社の最奥部を訪ねられたのを潮に、下山を開始。

 奥之院から王滝口の基本ルートに合流した後は、往路を引き返すだけで、登った時と劇的な変化が見られたわけではないのだが、ひたすら山頂を目指していた時には気が付かなかった、昭和59年に発生した長野県西部地震による御嶽崩れの痕跡を目の当たりにしたのが非常に印象に残っている。結局、下りはじめから1時間半ほどで、田の原の駐車場まで戻ることが出来た。下山時刻は14時ちょうど。この時間からも上を目指す多くの登山者とすれ違ったが、彼らは山上の山小屋に今宵の宿を求め、ご来光を拝んだ後、縦走なり往路を引き返すなりして、山を下ろうとする人たちなのだろう。

 下山後、田の原口にある社務所で御嶽山の公式ガイドブックなるものを購入。信仰の山の成り立ちについて著したものらしく、これで山岳信仰の何たるかを勉強することが出来る。その後、御嶽観光センターでお土産にそばを買い、高山病の後遺症で頭がさえなかったので、頭を冷やす意味で観光地価格のソフトクリームを購入。端的に言えば高めの価格設定ではあったのだけれど、ボリュームもかなりのものだった。

 登山装備を解き、すっかり駐車車両の少なくなった駐車場から車を発進させる。山麓への長い坂を下っていく時、一瞬だけ道沿いの木立の切れ間から御嶽の頂が見えた。自分の脚で登ったのは、所詮は田の原の駐車場からの区間に過ぎない。また、山体そのものが余りに巨大であるため、近づき過ぎるとその全容が掴みきれないし、遠ざかると山奥深さゆえに全体像の把握が難しい御嶽山。しかし、山すそ近くから一瞬だけ見上げた御嶽山は、やはり3000m級の巨大な山塊を擁する独立峰に似つかわしい、圧倒的な威容を見せ付けていた。
二ノ池に下ってみる。

二ノ池のほとり。

覚明堂。黒沢口登山道の途上にある。

こちらの道は、やや荒涼とした印象だ。

奥之院。登山道本線から外れるため、ここまで来る人は少ないのかもしれない。

分かりにくいが、御嶽崩れの跡。

登り始めより若干見通しが良くなった、田の原からの御嶽山。

 
アクセス JR木曽福島駅からおんたけ交通の路線バスがあるが、日帰りには向かない。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]15 長野県の山 山と渓谷社
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