御嶽山・その1
木曽の御嶽山に登る
■標高:3067m
■歩行時間:5時間
■登山日:2011年7月24日

    木曽の御嶽山は、民謡にも歌われた有名な山である。日本の屋根に連なるような地点に位置しているが、独立峰である。その地勢を見るに、近在の北アルプスにも中央アルプスにも属さない。独立峰ながら巨大な山体を誇るものの、地質学的には準平原の上に噴出したものであるため、火山としての規模は見た目ほどには大きくないという。いくつかのピークが存在している中で、最高峰となる剣ヶ峰の標高は3067m。Wikipediaによれば、日本国内で、御嶽山より西に御嶽山より高い地点はないのだそうだ。



 いつ、どういうきっかけで、私は御嶽登山を志したのだろうか。今となっては記憶がはっきりしない。ただ、名古屋に暮らしているとかなり身近な山であることは確かだ。市内の超高層ビルの類にある展望所は、「天気が良ければ御嶽山も見える」と言うのを惹句にしているところもあり、名古屋市内における好展望ポイントの指標に用いられることが多い。逆に名古屋市内を離れ、周囲に高い建物や山のない地域に移動した時、空気の澄んだ冬場であれば、その山体を視認することも難しくはない。名神高速の一宮JCTあたりからも御嶽を見たことがある。

 おそらく、そんなところを導入にして、いまだ本格的な信仰登山が盛んだと言う事実に、興味を惹かれるようになったのだと思う。漠とした言い方だが、山としての格が高さも、私の関心を後押ししたに違いない。

 「御嶽」と言うのは、よくよく考えると大変な山名で、そのままでも山(それも険しい山である)を意味する「嶽」の字に、敬いの念を込めて「御」の字を付けている。言うなれば古人は、御嶽山を日本の山の代表格に位置づけていたわけだ。それだけに、信仰対象のみならず、登山対象、あるいは展望の対象として、多くの山が一般に知られるようになった現在でも、未だに御嶽山が多くの尊崇を集め続けていることにも、頷けるものがある。そして、私が、少なくとも今時点で、御嶽教の信仰登山というのにひとかたならぬ興味を抱いているのは紛れもない事実だ。

 そんな風に、古来民間の信仰を多く集めた御嶽山である。近代登山の開始以前から、信仰登山のために開かれた登山道が幾筋が存在しているのに加え、近年になって開設されたルートもあり、登山道のバリエーションは豊富である。その中で今回は、王滝口から登って王滝口に下るルートで、御嶽登山を敢行することにした。ちなみに、今回参考にしたいくつかのガイド本は、いずれも王滝口から登り、黒沢口に下るルートを採用していた。王滝口登山道は、登りはじめから山頂(王滝山頂)までの全容を見通すことの出来る道だ。その意味では、先を目指すモチベーションを高めるにはうってつけで、これを往路に持ってくるのは納得の方針である。

 3000m峰の御嶽山だが、王滝口にせよ黒沢口にせよ、車やロープウェイなどで、7合目前後に相当する2000m以上の高さまで登ることができ、そこから眺める御嶽の頂は、ボリュームこそあれ、いや高く聳えると言うほどの威圧感はない。

 朝9時、田の原駐車場に到着。このタイミングでここにいるためには、名古屋を6時に発たなければならず、そこそこの早出のはずなのだけれど、普通自動車が百台ほどは停まると言う駐車場は、すでに満車寸前だ。事前調べの結果から、「まず満車にはならないであろう」と言う読みで来ていたため、よもやの事態に一瞬いやな汗がにじんだが、運良く今まさに駐車場を出ようとしている車を見つけ、それが走り出した後のオープンスペースに、自車を滑り込ませることが出来た。後々分かったことだが、この時間帯に駐車場に停まっている車の多くは、前日あるいは未明から山頂に挑んだ、「ご来光」組の車のようである。朝9時に王滝口出発と言うスケジューリングは、正午頃に山頂に着こうとした場合にはまず妥当と言えるもののはずだが、そういうタイミングで山を登っているにもかかわらず、後の道中ではすでに下山を開始した、夥しい数の登山者と行き違うこととなる。

 田の原天然公園の入口にもなっている鳥居をくぐり、いざ登山道へ。9:10が正味のスタートタイムとなる。最初は、登山道と言うよりは遊歩道の趣がある、樹間の平坦な道が続く。前途を見渡せるはずの王滝口から眺める御嶽の頂には…残念ながら雲がかかっていた。

 山麓から田の原天然公園まで上がってくるまでの間の車道でさえ、道沿いには御嶽の霊験・威徳を称えるものと思われる石碑の数々が建立されていたが、登山道に入ると、道すがらに遥拝所や小規模な社などが存在しており、いよいよ霊場の風潮が高まってくる。そうしたものの一つ、大江権現の社を通り過ぎた辺りから、登山道には傾斜が加わり、両サイドには繁茂するクマザサが迫るようになってきた。ようやく山道らしい山道になってきた感じがする。先ほどまでと比べて道幅が狭くなるのも山道らしい。が、とにかく登山者が多い。そして、白装束に身を包み、金剛杖を手にした信仰登山の人が多く目に付く辺りがいかにも御嶽山である。

 一方、小さな子供が登っているのもまた事実で、私の歩みに抜かれまいとして、少し前を、ともすれば小走りに駆け上っていく、5歳くらいの少年もいたりする。この登山者層の厚さゆえに、登る人も下る人もかなりの数で、ちょっとした行き違いもなかなか大変だ。ただ、道中には、「あかっぱげ」と呼ばれる小規模な崩落跡のような箇所こそあるものの、木製階段が整備されていて、足元の悪さと言うのは感じない。
田の原駐車場から見上げた御嶽は残念なことに。雪の御嶽の写真は白草山山頂で撮影。

王滝登山口。

山頂に向かわずとも、田の原周辺を散策するのも良いかもしれない。

次第に登山道らしくなる。

「あかっぱげ」の崩落地。

 
アクセス JR木曽福島駅からおんたけ交通の路線バスがあるが、日帰りには向かない。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]15 長野県の山 山と渓谷社
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