霊仙山・その2
カルスト地形の山頂を目指して
■標高:1094m
■歩行時間:5時間
■登山日:2011年5月4日




 五合目は見晴台となっていて、前後も多少緩傾斜の道となっており、ここで一息つく。本来なら琵琶湖・江東にも展望の利く場所のはずなのだが、ここ数日来飛散している黄砂のために、さほど離れていない場所を見ようとしているにもかかわらず、白く霞んでしまっている。「まあ、もともと展望を期待してきたわけではないし」と自分に言い聞かせ、休憩を終えた。

 ただ、幸運なことに、見晴台を過ぎた辺りから、前後に他の登山者の姿が見えなくなった。すでに山を下り始めている人とすれ違うことはあるのだけれど、それはさほど問題ではない。若干きつい坂道を乗り越えながら、道はいかにもカルスト地形という感じの、石灰岩がごろごろと転がる地帯へと入って行った。樹木は生えていない。伊吹山の高高度地帯もこんな感じだった記憶がある。六合目から七合目にかけての道は、本来ならば展望絶佳の登りになるはずだ。視界を遮るものとてなく、近くの山並みや琵琶湖方面が望めるはずの場所である。今回はもちろん、黄砂の影響で…である。

 坂を上りきったところが、七合目のお猿岩だ。道標の近くに、それらしい岩もあるにはあるのだけれど、その名の通りお猿に見えるかといえば、別段そういうものでもない。もしかすると、名前の由来は別のところにあるのかもしれない。

 お猿岩から霊仙の頂まで、谷筋というか、低地を巻く形で道が続いている。まだ少し高低差もある。しかし、概ねは丘陵地帯のような緩い上り下りを繰り返すエリアになっている。その昔に行った事がある、美ヶ原にカレンフェルトをぶちまけたような、そんな雰囲気の道のりだ。道中にお虎が池と呼ばれる小さな池がある辺り、いよいよ高原リゾート地の風潮が高まってくる。ちなみにこの大きな水溜り程度の池は、琵琶湖の形をしているのだそうな。それにしても、猿に虎だから十二支つながりなのだろうか。

 少し高度を稼ぎ、一名を北霊仙とも言う、九合目・京塚山に到達。高度1040mの地点で、霊仙山頂とは別のピークだ。コースは一度南に向かって斜面を下り、眼前の霊仙山頂を目指して登り返す形になる。

 谷の底部から山頂までは、一息に上りきるには少々厳しい高度さがあるように見えたが、どうにか休憩を挟むことなく登りきることが出来た。1084mの霊仙山頂は、やはりなだらかで広い頂になっており、360度に展望が利く。その広さゆえか、山頂の一角にあった案内板では、古代にはこの場所に霊仙寺と言う寺があったとしている。山名はこの寺にちなむものか。霊場としては白鳳9年(681)に役小角が開山したものだと解説されている。醒ヶ井養鱒場バス停からここまで、およそ2時間の道のりだった。

 くどいようだが、黄砂のせいで遠望は駄目なのだけれど、丈の低い草の中に、夥しい数の石灰岩がごろごろと転がる様は壮観である。ところどころにはまだ残雪がある。立ち木がないため吹きさらしの山頂は、体感温度こそかなり低く感じるものの、もろに直射日光に晒されるため、雪が残っているのは意外な感じもする。ちなみに、そういう条件の山頂であるため、日差しのきつい夏場や、逆に気温の低い春の初めと晩秋などは、長時間の休憩及び昼食休憩には向かない山頂なのかも知れない。

 霊仙の山域で最高点となるのは、山頂の南東に位置する1096mのピークである。もう一度上り下りを繰り返して、こちらも一応征服した。周囲の雰囲気と言い展望と言い、山頂とさほど変わらないのだが、多少鈴鹿山脈に近づく分、逆に琵琶湖方面への視界が利かなくなっている感じだ。

 さて、山頂付近でなすべき事は一通り片付けたので、下山のことを考えなければならない。帰りの足となるバスの本数はごく限られているのだが、時刻表によると、12:11に醒ヶ井駅行きの便があることになっている。往路では醒ヶ井養鱒場から山頂までを2時間強で来たことを考えるに、順調に下ればこの便に間に合う計算になる。しかし、この時、ふとした気まぐれから下山路を谷山谷登山道に求めたため、思いもかけない苦闘を強いられることになるのだった。

 往路である樽ヶ畑登山道と、復路に選定した谷山谷登山道は、経塚山で分岐している。山頂をはじめとするピークからもその存在を視認できていた避難小屋の前を通過ぎ、しばらく行ったところで左手に分岐した道へと入っていく。山頂近くの樽ヶ畑道がなだらかだったのに比べれば、わりと急に下っていく感じの道である。ちなみに、ここで左に曲がらず直進すれば、柏原登山道へと通じている。
見晴台もこの有様。

霊仙山頂は前方から気持ち右方に位置するはずだが、顕著なピークではない。

カルスト地形突入後にあるお猿岩。

なだらかな山上のカレンフェルト(墓石地形)が霊仙山の真骨頂。

お虎が池。

コース分岐点となる経塚山。

山頂。特に何もない。

 
アクセス JR醒ヶ井駅より湖国バス「養鱒場」下車。
ガイド本 [改定新版]名古屋周辺の山 山と渓谷社
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