竜頭山
三河にもあった修験道の山
■標高:752m
■歩行時間:3時間40分
■登山日:2011年4月16日

    竜頭山(りゅうずさん)という名は、さほど珍奇なものではない。実際、遠州にも竜頭山(りゅうとうさん)と言う名の山があり、ハイカーの訪れを受けている。それでもこの山名が印象に残るのは、「竜」という単語の持つ強さのようなものによるところが大きいのだろう。新城市にあるこの山はしかし、東海自然歩道の走る山並みや、天竜川水系の山塊からは外れており、立地的にも目立たない場所にある。そのため、奥三河名山八選に選ばれてもいるものの、その中でややマイナーな感があるのは否めない。標高は752m。



 私の山行としては、珍しく3人パーティーで、この山に挑む。これまた珍しいことに、東岡崎の駅が待ち合わせ場所となっており、ここを10時に出発。竜頭山があるのは、新城市とは言っても、一昔前は作手村と呼ばれていたエリアの、それもさらに北に偏した位置である。実際は結構山深い場所だ。ただし、東岡崎駅から1時間ほどの距離でもある。

 登山開始は11時半少し前。県道25号沿いの民家の間を抜け、鉄板一枚かけただけの通路橋のような橋で小川を渡り、おっかなびっくり害獣よけの電気柵を跨いで、竜頭山の登山口に立つ。民家の庭先のようなとっつきであるが、不法侵入ではない…はずだ。

 登り始めこそ、山の上の方から湧き出すせせらぎに面しているが、竜頭の登山道は、その大半の区間が尾根筋に付けられた道である。ジグザグに曲がって傾斜を緩めつつ上に登っていくという雰囲気ではない。かなりの急登でぐんぐん高度を稼いでいく。さほどの高さの山ではないはずなのに、思ったよりもキツイ登りだ。道中、部分的には展望の得られる箇所があるが、総じて眺めには恵まれない。また、急斜面にへばりつくようにして登るため、なかなかそれまでの余裕もない。

 もっとも、一気に高度を上げるだけあって、稜線に出るまでの時間は思ったよりも短く感じるほどだ。休憩なしで一気に登れるかどうかといった距離である。稜線上に出ると、そこが小竜頭(こりゅうず)分岐点だ。左手小竜頭、右手竜頭山頂の道標がまず目に付く。小竜頭は、この山では実質的に唯一、展望に恵まれるというピークで、10分ほどでたどり着けるという。そこで、まず小竜頭を攻略することにした。多少のアップダウンはあるが、稜線までの道ほどの険しさはなく、小竜頭に到着。天気が良ければ南アルプスまで望めるピークだということだが、眠気を催すような春の陽気の中では、さすがに南アルプスは霞んでしまう。ただ、いつぞや歩いた岩古谷山から鞍掛山への稜線(すなはち東海自然歩道)と、その少し奥の平岩明神、さらに鹿島山か大鈴山と思しき山も見える。なお、小竜頭からの鞍掛山は、その名の通り、馬の鞍のような山容を見せる。

 再び小竜頭分岐点まで戻る。今度は山頂を目指すわけだが、ここから山頂までは、なだらかに続く稜線を歩く。比較的浅い谷をトラバースするような稜線で、いっそ谷底まで下って最短距離で山頂を目指すことも可能なのではないかと思えてしまうのだが、そういう邪な心が遭難事故を呼ぶ元だと自戒し、U字型に谷間を巻いて山頂へ。分岐点から頂までは、多少の登りこそあるものの、やはり前半戦ほどの厳しさはない。

 竜頭の山頂は、なだらかで広い山頂である。ヒノキの植林が立ち並び、展望は皆無だ。毎度おなじみ「愛知の130山」のコースガイドは、この山頂で終わっているのだが、山と渓谷社の分県ガイドおよび「奥三河名山八選」によるコースガイドでは、実は小竜頭と対を成す大竜頭(おおりゅうず)が、八岐大蛇ではないが、さながら双頭の竜のごとく、このさらに先に存在していることが示されている。これがかなり手ごわいらしいので、ひとまず山頂で昼食とし、コンディションを整えてから、いざ大竜頭へ。

 山頂のさらに向こうへと延びる道の入口には、新城警察と新城市が立てた警告看板がある。曰く、岩場の危険なコースなのだそうだ。道は山頂付近から少しずつ下り始めるが、下り始めは特に危険を感じるような道ではない。下草のない、なだらかな林が広がるが、その分踏み後は薄く、どちらかと言うとミスコースの心配が頭をよぎるほどだ。が、ものの10分と行かないうちに、がくんと落ちるような急な下りに行き着く。滑落しないように気をつけながら下りていくと、最底辺付近で目の前に大岩が現われた。そしてそこには看板も立っている。この岩を登ったところが大竜頭だということだが、登山道は道なき道を行く様相を呈している。今度は、大げさに言えばよじ登るようにして、看板の言うとおり眼前の山を登っていく。

 登りきった大竜頭には、数体の石仏が並んでいた。相当に古いものだ。そのうちの一体、錆付いた剣を持った像は、役小角を象ったものだそうだが、山岳修行の行者がこもった場所なのだろうか。役行者の像などというものは、大体そういった場所にあるようなイメージがある。この大竜頭には、展望はほとんどない。切れ落ちるような崖を下っていくと。見通しの良い場所があるようだが、ここにも警告看板が立っており、その警告文の表現の厳しさは、山頂にあったそれの比ではない。「交通死亡事故現場」の感覚で、「危険!この先山岳死亡事故の発生現場です(H19.6.5発生)」と、明確に記されている。下を覗き込んでみても、道らしきもののない断崖にしか見えないのだが、何とかして下っていくことも出来るのだろう。我々は、さすがにそこまではしなかった。大竜頭で小休止を取った後は、往路を引き返す。

 50分ほどで、大竜頭から登山口まで戻ることが出来た。急坂となだらかな稜線の両極端で構成される山道であるためか、ガイド本の類では比較的に難易度が高めの扱いとなっていることがあるものの、どうやら短行程で登れる山ではあるようだ。
至って地味な登山口の案内。

尾根筋を登っている時に得られる展望は、これくらいである。

小竜頭より。右から鞍掛、岩古谷。そのさらに左に鹿島・大鈴。

決して花の多い山ではないが、小竜頭付近で見つけた。

山頂は広いが、展望はなく、特筆点もない。

大竜頭の石造と祠。険しい岩峰で、良くも悪くもそれだけと言う印象。

 
アクセス 公共交通機関利用による登山口までのアクセスは難しい。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
関連サイト

 



▲山これへ戻る