開聞岳
秀麗な薩摩冨士
■標高:924m
■歩行時間:3時間
■登山日:2011年3月13日

    開聞岳は、薩摩富士の二つ名の通り、古くから薩摩の秀峰として知られてきた。深田久弥による日本百名山の一つにも選ばれているが、他の山々に比べると、格段に標高が低い。それでも深田をしてこの山を百名山の一つに選抜せしめたものは、その山容の端麗さであろう。二重火山と呼ばれることもあり、山体下部がコニーデ、上部がトロイデとなっているとされる。ちなみに標高は924m。これまた良く指摘されることだが、海面から突き出すような山であるため、いざ登山の対象とするとなると、約900mを登る形になるので、標高の割には登り応えがあるとも言える。



 開聞岳に登るのは、これが初めてではない。初めての鹿児島旅行の目的こそが、実は開聞登山だった。途中あちこちに寄り道はしたが、それだけのために鹿児島にやって来て、山を下るとそのまま鹿児島を後にしている。

 今回は、下山後は知覧へ足を運ぶ予定なので、県内各所を飛び回るための足として、とりあえず朝一番から鹿児島中央駅前でレンタカーを調達し、そのまま国道226号沿いに南下する。226号は海岸の道だ。東北を襲った未曾有の大震災。未だに威力が減衰していないと言う津波の脅威はまさに日本各地に波及している。錦江湾沿いに走っている最中でさえその存在が気がかりではあったが、実際目に映る海は穏やかそのもので、過度に意識さえしなければ、快適なドライブだった。指宿市に入って、JR最南端の駅である西大山駅から開聞岳の遠景を撮影した後で、登山本番を迎えることとなった。

 前回は開聞駅で列車を降りたところから、ひたすら自分の脚で、上へ上へと歩き続けたが、今回はかいもん山麓ふれあい広場の登山客用駐車場に車を停め、ここを山歩きのスタート地点にする。実質、1.5合目辺りまでは車で登る形になるだろうか。樹間の山道が始まるのは、2合目からだ。以前に来た時は、2合目登山口には、いかにも古色蒼然とした看板があったものだけれど、それがなくなっているところに、時の流れを感じた。あれからもう5年になる。

 開聞岳の山裾近くは、見るからに火山灰土という雰囲気の、ぼろぼろと崩れやすい黒っぽい土が堆積しており、ともすれば足を取られるのではないかと不安になる。ただ、幸か不幸か前夜に雨が降っていたためか、思ったより足場はしっかりしている。もっとも、脆い地質であるのもまた事実なのか、登山道には、水の流れによって深くえぐられたと思しき箇所もある。

 開聞岳の登山道は、螺旋軌道を描いていることで知られる。私の脚だと、1合進むのにおよそ10分見当のペース。5合目までは、前述した火山灰質の地面の上に雑木林が広がる、余り変化のない道が続く。展望は皆無と言って良いが、5合目の看板まで登ったところで、左手の木立が一瞬、切れる。高度はまださほどではないが、長崎鼻の方が良く見える。登山口は北麓にあるが、5合目は東側斜面に当たる。

 6合目を過ぎると、登山道の様子も変わってくる。足元にはごろごろとした石が転がるようになり、時には岩場と言って差し支えないような、険しい箇所にも出くわす。道は山の北面を走り、木々の切れ目からは東シナ海の様子がよく見える。

 7合目過ぎには仙人洞と言う岩穴があり、以前は「この穴に杖を投げ入れて登山の安全を祈願する人がいる」と言うような解説がされていたはずなのだが、どうも杖の投げ入れが問題になったらしく、問題の箇所は「杖・棒切れの投げ入れ禁止」と言う張り紙で覆い隠されていた。5年前のあの時からでさえ、登山者が増えていると言うことなのだろうか。

 8合目辺りまで来ると、登山道は山の西面へと巻きながら北側に向かうようになる。要所の展望ポイントに立つと、枕崎方面への眺めがすばらしい。やがて木製のはしごが登場。さらには、かなり傾斜した岩場を、ロープからロープへと、ドンキーコングのように伝いながら移動する箇所もある。この辺りが開聞登山でも最も険しい道のりとなる。ここを乗り越えれば山頂まではもうすぐだ。山の北方、池田湖も見える北側斜面を登りきり、東側から回り込む形で山頂に到達。

 前回登山時は完全に雲に包まれてしまっていて、展望も何もあったものではなかった。今回はどうにか山麓の様子を見下ろすことが出来る。前回の下山後に世話になった路線バスの運転手のおじさんの言葉によれば、条件が良ければ屋久島の宮之浦岳でさえも見える山頂だということだったが、春霞がかかっていたため、さすがにそこまでは望めなかった。一般にハイカーが気軽に出入り出来るのは、山名票と三角点がある岩場周辺に限られるのだが、山頂付近には意外となだらかな広がりがあり、森林に覆われている。なお、山頂付近には御嶽神社もある。

 2合目登山口からの所要時間は1時間半。このタイムも前回と変わらずで、同じ道を引き返した下山タイムも、およそ一時間半。体力面で5年前から大きな低下が見られなかったことを最後の収穫に、2011年の開聞岳登山は幕となった。
海に突出した独立峰でも笠をかぶることはあるらしい。

3合目。火山灰質の崩れやすそうな土壌。

岩場の道になってまもなく、頴娃(えい)・枕崎方向に展望を得られる。

山頂の山名票。

屋久島は運に左右されるが、池田湖は指呼である。

 
アクセス JR開聞駅より。ただし、列車本数が極めて少ない。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]45 鹿児島県の山 山と渓谷社
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