岩古谷山
東海自然歩道三大難所の一つ
■標高:799m
■歩行時間:5時間30分
■登山日:2010年9月19日

    岩古谷山は愛知県北設楽郡設楽町の山で、東海自然歩道の経路上に位置している。この周辺には数座の山が密集する形になっているので、縦走に周回と、ハイカーの訪れも多い。一方で、古くは東海自然歩道の三大難所と言われたこともあるような場所でもある。そういう意味では、愛知県内の枠に収まらない山なのかもしれないが、過去形にしたのは、現在の岩古谷山周辺は、階段が設置されるなど、比較的整備の手が入っているため、それほど険阻な印象もないためだ。ただし、切り立った岩山の迫力は未だ変わらず。なお、参考までに追記しておくと、三大難所の残りの二箇所は、裏丹沢(神奈川県)と日坂(岐阜県)である。



 離山の苦闘の翌日、再び奥三河へと出撃することになった。今回のターゲットは岩古谷山と鞍掛山で、東海自然歩道伝いに和市登山口から四谷千枚田まで踏破する計画である。奥三河の山行における「幹線道路」沿いにある山なだけあって、共に地元での知名度の高い山だが、岩古谷山は巨岩の露出する岩稜や、山頂付近からのダイナミックな展望で人気も高い。かつ、単体での比高がさほどではないこと、近場に平山明神山、鹿島山、大鈴山と言った山が連なっており、個人の体力や技量、日程に合わせたコーディネートをしやすいことも、人気の底上げをしている。なお、鞍掛山は上述四座の山からは少し距離があり、方向違いでもある。

 まがりなりにも縦走をやろうと言うからには、登山口まで車で移動という手が使いにくい。そのため和市登山口までは公共交通機関を使って移動。朝7時過ぎの飯田線中部天竜行きで豊橋を発って、8時前に本長篠駅に到着した。そこで田口行きの豊鉄バスを待つ。こうして9時前には北設楽郡設楽町田口界隈に着くのだが、ここから先、和市登山口までは足が無い。コミュニティバスで結ばれてはいるのだが、本数が無く、あてにあらないので、タクシーを別にすれば徒歩で移動せざるを得ない。四囲にそびえる本格的な山とは比ぶべくも無いが、それでも丘と言うには高い高低差を乗り越え、40分ほどで登山口まで到着。

 前述の通り、ここは東海自然歩道の一部であり、かつ近場の四座へのとっつきともなっているため、登山客の多いこと。いずれも特別有名な山でもないのに、併設の駐車場には10台近い車が停まっており、今また10名ほどの中高年グループが登山を開始しようとしている。自然と耳に飛び込んできた内容を聞く限り、とりあえずは岩古谷ではなく鹿島方向に行くようで、なぜか一安心し、岩古谷山を示す道標に従って歩き始める。

 東海自然歩道は、国と地方関係自治体によって整備された、東京都八王子市と大阪府箕面市を結ぶ自然歩道で、その延長はおよそ1700kmにも及ぶそうだが、設楽町界隈を通っているのはもちろん、その一部である。言うなればある種の国家的プロジェクトとして整備された自然歩道なので、山道としてはトップクラスの歩き易さを誇る。前日の離山とは別次元の快適路を歩いて行くと、ほどなく「十三曲り」と書かれた手書きの標識に出くわした。目を先に転じると、九十九折となったジグザグの山道が上へ上へと続いている。名前から察するに、おそらく十三回連続で折り返すのだろう。そんなことを思い、頭の中で折り返しの回数をカウントしながら登ること10分ほど、まさに十三回目を数えて少し進んだところで、道が尾根筋に出た。ここが堤石峠だ。

 十三曲がりも、前日の難路を思えばさほど苦しい道のりではなかったが、稜線上の道は、登り続けの道に比べればいくらかは楽である。アップダウンはある。ところどころに露岩があったり、そうした岩場に鉄製の階段がかけてあったりする。なかなかスリリングな道のりで、そのために歩調が緩み、体力的に無理をすることも無く、飽きの来ない、楽しい道のりである。稜線上は進行方向左手、つまり東側がすっぱりと切れ落ちており、従ってこちら側の展望が良い。ところどころで、春頃に登った平山明神ほかの山々が見える。たぶん、鹿島・大鈴も見えていたのだと思うが、今のところノーマークなので、山体がどのようだったかは全く頭に入っておらず、そのためどれがどれかは分からない。これに加え、進むにつれ前方左手で三ツ瀬明神が存在感を増していく。本当に三ツ瀬明神の山容は、この辺りの山並みでは頭一つ抜けだした威容である。

 こうして、堤石峠に出てから20分足らずで、岩古谷の山頂に到着。和市の登山口からは40分弱の道のりだった。山頂はちょっとした平地になっており、ベンチなども備えている。樹間から三ツ瀬明神を真正面に捉えられるような眺めもまずまずだ。ただ、折悪しく五、六名ほどの中高年登山者が店を広げてかまびすしく騒いでおり、座って休憩できるような雰囲気ではなかった。そこで、山頂から少しばかり南に移動したところにある岩場から、雄大な景色を眺めながら、小休止とした。狭く、あまり休憩には向かない場所かも知れないが、眺望に関しては山頂よりもむしろこちらに軍配が上がる。
東海自然歩道経路上でよく見かけるこの看板が、和市登山口の目印。

かなり傾斜のきつい階段。逆に言えば、これがなければ容易には登れない山ではある。

こちらの方角からだと馴染みがないが、多分平山明神山。

こんな感じの階段もある。

山頂付近の山名標。後方の山は三ツ瀬明神山。

山頂付近は岩が露出している。

設楽町田口方面の展望。

 
アクセス JR本長篠駅より豊鉄バス「田口」下車。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
関連サイト

  鞍掛山へ進む



▲山これへ戻る