離山
離れ村の離れ山
■標高:916.6m
■歩行時間:5時間
■登山日:2010年9月18日

    軽井沢にある同名の山はともかく、一般に愛知県豊根村にある離山の知名度はかなり低い。と言うより、ほとんど無名の山なのではないかと思う。三等三角点のある山なので、地図上に名前が出てくることは珍しく無いのだが、山名そのままに人里離れた立地と、未整備の登山道が障壁となり、一般向けお手軽ハイキングの対象となることはまず無い。例の「愛知の130山」にはその名が挙げられている関係で、同書を手に取るレベルの登山愛好家ならばその名も知っていようが、それにしても最難関の一角と言って良いような取り上げられ方だ。



 人から誘われてこの離山に登ってきた。私の山登りレベルは、この山に単独で挑める域にまでは達していないし、おそらく必要になってくるであろう地形図やコンパスと言った装備品も未購入である。それに加えて、山そのものにさほどの魅力を感じていなかったのも事実だが、130山屈指の難関と言われるこの山、もしかするとチャンスがある時に登っておいた方が良いのかも知れないと言う判断が働いた。今のところ、130座すべてを制覇しようなどとは考えていないが、ふとそう思い立ったときに、立ちはだかる壁の一つになりそうな気がしないでもなかった。

 離山は、北設楽郡豊根村に位置している。これと言う特徴も無い山容だが、そもそもその姿を拝むまでが大変だ。愛知県内でもっとも秘境指数の高い、旧富山村エリアにあるのである。「愛知の130山」の前身「愛知の100山」時代には山の東側・佐久間湖岸からのルートが公開されていたが、地主からの苦情があったようで、改訂版では西側からのルートが紹介されている。すなはち、新豊根ダムによってせき止められた人造湖・みどり湖から流れ出す大入川側からのアプローチだ。もっとも、夏のはじめの豪雨により県道沿いで崩落があり、車は大入トンネル前のダム入り口辺りに停めて、登山口までの30分ばかりを徒歩で移動することになった。

 登山口とは言ったものの、その実態は、主に営林作業従事者のため、落石防護フェンスに設けられた出入口のようである。一応、登山口の札はかかっているし、多少は趣味の登山者に向けたアナウンスもされてはいるが、離山にはいわゆる登山道と呼べるほどのものが存在しない。林業関係者とさほど多いとは思えない登山者が残していった踏み跡だけが頼りの山行となる。これに加えて赤テープなどもよく目に付くが、道標の類は皆無である。

 とにかく踏み跡をたどり、要所要所でガイド本を見ながら上へ上へと向かう。幸い踏み跡も、登り続ける限りは不意に見失ってしまうほど薄くはない。が、歩きにくい道であるのは否めない。倒木、と言うよりは置き去りにされた間伐材が道をふさぐ箇所も多いし、急登・直登が延々続く苦しい区間があり、足元の滑りやすい箇所も多い。そしてそういう場所に限って、転げ始めたら数十メートルは一気に転落しそうな斜面になっている。残念なことに展望はほとんど無い。

 山頂が近づくと、さすがに道の険しさもなり潜めるが、しかしクマザサが生い茂る、藪の海のようなところを、繁茂する葉を掻き分けながら進むことになる。まさに藪こぎだ。そして、その藪の開けた一画が、917mの山頂である。当然、周りを大人の背丈ほどのクマザサと立木に囲まれているので、展望は全くないし、まともな山名標も無い、地味な、そしてどちらかと言えば陰気な山頂である。登りはじめから約2時間の道のりだった。先にこの山を征服した登山者が残していったプレートが三角点直上の木にくくりつけられているが、ちょっと数が多い。こうなってしまうと、まさにゴミである。普通こういったものは定期的に「掃除」されるものだと思うのだが、けっこう古い時期のものがそのまま残っている辺りに、この山のマイナーさがうかがわれる。

 この離山の道行のような、難路を突き進むことにやりがいを見出す登山者も多いのだろうが、私は展望の良さなどを中心に楽しみたい軽薄なハイカーなので、個人的にはさほどカタルシスの得られない山頂である。そして道々に適当な場所がなかったと言う後ろ向きな理由から山頂にて食事を取り、ほどなく下山を開始。

 しかし、離山の本当の厄介さは下山時にこそ潜んでいた。足場が悪く、斜度もきついため足に負担がかかるのもさることながら、登りでは比較的はっきりと見えていたはずの踏み後が、非常に見つけづらくなっている。と言うより、迷い道が多い。明瞭な道をたどり、テープなども確認しながら下っていたはずが、途中で道が消滅し、本来進むべき道も完全に見失って、肝を冷やす場面もあった。結果的には往路に復帰することには成功したが、個々の登山者がめいめい勝手のコースにテープを巻きつけていると思われるため、これが実は全く当てにならない。目的地が山頂一箇所に収斂していく登りの時はさほど目立たないが、実際には迷路のように踏み跡が錯綜する山である。もしこれからこの山に挑もうと言う人があるならば、登りが順調であっても、下山時に油断することの無いように注意されたい。webで公開されている個人の離山登山記を4、5本眺めてみたが、その全てに下山時のミスコースが記述されていた。つまり、そういう山なのである。迷い、考えながら行くのが、この山の醍醐味なのかもしれない。
一応登山口。ここから、薄い踏み跡を辿る。

そして山頂。掲示すべき写真が二葉しかないほど見せ場が少ない山である。

 
アクセス 公共交通機関利用による登山口までのアクセスは難しい。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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