平山明神山
特徴的な山容を持つもう一つの明神山
■標高:970m
■歩行時間:2時間
■登山日:2010年6月12日

    三ツ瀬明神山の回で、少しだけその存在に触れたもう一つの明神山が、平山明神山だ。別名を神田明神山とも言う。後者は銭形平次絡みみたいな名前だと、とりあえず指摘せずにはおれない自分の軽薄さが情けないが、愛知県内では人気の高い山である。総合点で言えば、やはり三ツ瀬の明神山に軍配が上がるものの、山頂が近づくにつれ巨岩の露出する鋭峰は、低山ハイク愛好者からの注目を集めているのも事実である。山陰などに隠れさえしなければ、山頂も含めた近在の土地から一目でそれと分かる姿をしている。愛知県の北東部・北設楽郡設楽町内に位置し、標高は970m。



 平山明神への登頂路は何コースか存在している。所要時間の異同はあるが、総じて比較的短行程らしい。その中で、今回は大神田集落の外れにある登山口から山頂を目指す。大神田の集落を抜けてくると、平山明神の険しい山容がよく分かるのだが、今回登山口までは、国道257号で設楽町の中心部である田口を経由し、東海自然歩道の和市登山口をやり過ごして移動した。神田は逆方向となるので、通らない。国道151号を東栄町まで走り、国道473号に入って来るルートだと神田集落を抜けてくる形になるだろうか。この他、四谷千枚田の奥からトンネルを抜けてくるルートもあるが、一般的なカーナビは豊川方面からのアクセスにはまず国道257号線を推奨するだろう。豊田から国道420号を走って来ても、田口経由となる。

 神田登山口周辺には、2〜3箇所に分散して駐車スペースがあり、都合10台ほどは駐車が出来そうだ。国道沿いに案内板が立っているほどメジャー(?)なコースで、さらに登山口には小奇麗な石碑も立っていて、この時点で登山道はかなり整備されていそうな印象を抱いた。

 さて、そのようにして始まった平山明神山大神田登山道は、予想に違わず、まずまず歩きやすい道である。「遊歩道」「散策路」などと呼べるほどに手は入っていないが、ガイドはしっかりしているし、足場の悪い箇所などもほとんど無い。登りはじめからそこそこのスパンではあるが、全行程の中ほどには休憩用にベンチも設置されている。場所柄、展望は無い。

 このベンチを行き過ぎた辺りから、行く手に巨大な岩壁が姿を現すようになってくる。まさしく絶壁である。とてもよじ登れるようなものではないので、これを巻きながら上を目指すことになる。坂道も次第にきつさを増していく。さほど危険な場面も無いが、中には大人の腰ほどの高さの石を乗り越えていかなければならない箇所もある。

 そんな登りが10分ほど続いた頃、コース上に木製の道標が設置されていた。いずれも油性マジックか何かで文字の書き込まれた素朴なものだが、これを見る限り山頂も間近に迫っているようだ。なお、コースの分岐点に立てられたそれには、明神山頂とは逆方向を示す矢印の先に「岩古谷山」「大鈴山」と近在の山名が記されていた。どうやら縦走路を示しているらしい。

 そして二本目の道標。坂道を登りきった尾根筋にあり、二股に分かれた道それぞれの行き先が記されている。左に進めば「西の覗き」、右に進めば「明神山頂」。事前に入手していた情報によれば、平山明神山頂に展望は無い。高みからの眺めを期待するのであれば、「西の覗き」と「東の覗き」がこの山の白眉となるはずだ。そこで、まず「西の覗き」へ進路を取ることにする。眺めは無いと言っても山頂は、この山登りの締めくくりに持って行きたい気持ちもあった。

 くだんの道標から「西の覗き」まではわずかの距離だ。ちょっとばかり登り、木々に覆われた尾根道を行くと、その行き止まりに岩頭があるのが見えた。そしてその先は、絶壁状に切れ落ちているのが分かる。ここが「西の覗き」である。残念ながらここから見えるのがどのような眺めなのか、予備知識も無いまま来てしまったが、事後に確認したところでは、どうやら南アルプスやら恵那山やらをも展望できる場所らしい。今回は湿度の高さで景色がかすんでしまったこともあり、「どうやらあれが大鈴山らしい」と言った程度の認識しか出来なかった。ここからは山間の町並みなども見える。

 しばらく雄大な眺めを堪能した後、先ほどの道標まで引き返す。そしてさらに少し行くと、今度は「この先東の覗き」の看板が。事前にガイドを見ていた限りでは、一度頂を踏み越えないと「西の覗き」から「東の覗き」には移動できない位置関係になっているのだと思っていたのだが、「東の覗き」と山頂それぞれへの道は、ここから分岐しているらしい。そこでまた、先に「東の覗き」を制覇しておくことにする。そしてやはり、この分岐から「東の覗き」まではわずかの距離だった。

 「東の覗き」も断崖上の岩場である。が、「西の覗き」に比べれば広く、多少崖に向かって岩盤が下がっているのを別にすれば、ほぼ平坦になっており、さらに時間帯にも助けられて木陰が出来ている。山頂まであとわずかなのは分かっていたが、実質ここがこの山のクライマックスと踏み、長めの休憩に入った。ここから見えるのは主に東南方向の山並みだ。特に、同じ山名を持つ三ツ瀬明神山が奥三河の山々の盟主たるにふさわしいたたずまいを見せつける場所なのだが、こちらもまた霞がかかってしまって、三ツ瀬明神の威容ももう一つ迫力に欠けるものとなってしまった。もっとも、そうした中にあっても、三ツ瀬明神の1000m超の標高は、この辺りの山の中では頭一つ抜け出したものであることが分かる。

 その後、やはり来た道を少し引き返し、ちょっとばかりの登りを経て山頂に到着。眺めの邪魔にはなるが陽光を完全に遮断するほどではない程度の疎林に囲まれた、質素ながら落ち着いた雰囲気の山頂だ。これまた手書きながら山名標もあり、一定のそれらしさを出しているのも好印象である。ちなみに、この山頂から少し下ったところにある小鷹大明神の社の辺りにもそれなりの展望はあるが、立ち木の関係もあって「東の覗き」「西の覗き」よりは視界が狭く、パノラマ感には欠ける。

 登山口から山頂まで、正味40分強の山行だった。ここのところタフな山歩きが続いたため、内容はともかく、体力的には拍子抜けするほど簡単な山だった。初心者にもとっつきやすい山と言える。ある程度山に慣れ、歯ごたえのある山歩きを求める向きなら、私と似たような感覚は覚えるかもしれない。山と渓谷社が刊行している「愛知県の山」では、平山明神単体での登山コースとして、今回私が踏んだルートを紹介する一方で、和市の登山口を起点として近在の鹿島山・大鈴山を絡めて、三山を縦走するルートも紹介されている。噛み応えのある山歩きを求めているのなら、後者のコースを採用するのも手である。体力に余裕のあった今回の私も、明神制覇後に大鈴山を流すことも考えたが、どうもこの辺りのコースは、明神から大鈴・鹿島を目指す形にすると難易度が上がるようだ。

 結局、縦走をするでもなく帰途に着いた。予定よりも大分時間が余り、途中の国道151号沿いにある「うめの湯」や「ゆ〜ゆ〜ありいな」にでも立ち寄って汗を流そうと考えないでもなかったが、結局それすらもしなかった。

 なお、この山行が終わった後、さる筋から豊根村にある離山への同行を打診された。もちろん低山なのだが、あまりにも地味であるがゆえにかえって「愛知の130山」最難関との呼び声も高い難物である。今の時点で挑むべきか、挑むとしたら何を準備すれば良いか、悩ましいところだ。
登山口の石碑。

巨大な岩壁を迂回しながら登る。

初夏の空気は湿度を帯び、白く霞んでいる。西の覗きより。

西の覗きの絶壁。

山頂はおとなしめの印象。

 
アクセス 公共交通機関利用による登山口までのアクセスは難しい。
ガイド本 新・分県登山ガイド[改訂版]22 愛知県の山 山と渓谷社
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