宇連山・その3
愛知県民の森から人気の岩稜歩きへ
■標高:929.4m
■歩行時間:5時間
■登山日:2009年12月30日




 宇連の山頂は、基本的には立ち木に覆われており、展望があるのは木々が途切れた一画のみである。山名標の立つ露岩の上から、鳳来湖や三ツ瀬明神の姿を視界にとらえることが出来る。ただ、大パノラマが広がるわけでもなく、千金に値する絶景の地というほどではない。やや広めの山頂には四阿(あずまや)があり、ここで憩う事もできるが、この位置からでは景色など見えない。

 くだんの岩場辺りで、舫うように時間を過ごしていると、下方から不審な物音がした。一瞬「熊の襲撃か!」と総毛立つような感覚を覚えたが、他の登山客だった。こんな年の瀬の、大して天候も良くない日に、こんなところへやってくる物好きなどいまいと決めてかかっていただけに、虚を疲れたような感じだ。二言三言言葉を交わしていると、どうも私より先に山に入ったらしいおっさんなのだが、私の方が先に山頂に立った事を見ると、別ルートからアタックしてきたのだろう。まず「亀石の滝から来たのか?」と聞かれたので、滝から登ってきたのだろうか。南尾根から来たと返答すると、半ばあきれ返ったような反応が返ってきた。そんなにマニアックな道だったのだろうか。ともあれこのおっさん、私が眼を離した隙に、山頂から姿を消していた。東海自然歩道の縦走をしていたのかもしれない。その淡白さを目の当たりにして、自分もそろそろ下山しようかと思い至る。

 復路は往路とは変えたいと思う。しかし、あまり不案内な道に進むのも気が進まない。そこで、もっとも単純明快だと思われる、滝の方に向かって下りるルートを選択した。山頂から少し下ったところ、北尾根への分岐を行き過ぎた辺りで、下石の滝を示した道標を頼りに、稜線から左へそれる。

 林間の、急な坂道が続く。先ほど来歩き続けた尾根道とは比べ物にならない斜度が延々と続く。季節が良ければ、新緑や花(ホソバシャクナゲ)も期待できそうな道のりだが、あいにくと今は冬である。何の慰めもない。まだまだ余裕はあるが、こんな道がずっと続けば、膝が笑い出すのも時間の問題だ。20分近くも下ったところで、コース上の眺めの良い岩場に、展望台と言うか小屋が設置されていたので、ここでひとまず小休止。バッグの中からガイドを取り出し、コースの再確認をする。このまま下っていくと、下石の滝か亀石の滝、どちらかに行き着くはずである。

 実際、小屋からさらに下ったところで、それぞれ二つの滝に通じる分岐点に行き着いた。何となく道の確かそうだった亀石の滝側へと、さらに下っていった。結局、亀石の滝にたどり着いたのは、尾根道から外れて30〜40分も下り続けた後のことだった。全般に、傾斜のきつい坂が多かった。そこを下って30分。登りともなれば、これはこれで手強い坂だったことだろう。ちなみに、そうしてたどり着いた亀石の滝は、季節柄もあってかほとんど水が涸れた有様だった。水量豊富な時期なら、落差32mの見事な滝…のはずである。

 亀石の滝は、行きに通ってきたモリトピア愛知の辺りから続く大津谷林道の最奥部にある。林道は、砕石の敷き詰められたなだらかな傾きの道だが、ここまで足回りを酷使してきたためか、靴底を通して伝わる小石の凹凸が、平時よりもきつく、足裏を痛めつけてくる。県民の森入口までは、こんな道を歩く事50分ほどの道のりだ。幸い、耐え難いほどの苦痛を感じたわけでもないので、道端の木々や川のせせらぎを眺めながら、県民の森を出、三河槙原の駅まで戻る事ができた。時に13:40。朝に駅から歩き出して5時間半ほどが経過した計算だ。

 問題は、ここから早くて1時間ほどは、駅に停まる列車がない事である。そこで、三河槙原よりも一つ豊橋寄りの、湯谷温泉駅まで歩く事にした。湯谷温泉駅は、その名の通りちょっとした温泉街の玄関口になっている駅だ。立ち寄り湯と言うような今風のものはないが、近傍には温泉保養施設であるところの「ゆ〜ゆ〜ありいな」があるし、待合室すらない三河槙原駅に比べれば遥かに時間を潰しやすい。

 ということで、さらに歩くこと30分ほどで、湯谷温泉にたどり着いた。しかし、そこは確かに温泉街なのだが、いかんせん規模が小さすぎた。「ゆ〜ゆ〜ありいな」も、温泉街の土産物屋も、年末休業に入っていた。あえて言うなら、湯谷温泉駅には風をしのげる駅舎があり、有人駅であるために切符が購入でき、列車乗降の際の料金清算の心配をせずに済むようにっただけ、三河槙原駅に留まり続けるより有意義だったと思う。私は、齢三十にしてなお、無人駅からの乗車が苦手なのである。普段の18きっぷ旅では、無人駅での乗降車など日常茶飯事なのだが、18きっぷは持ってさえいれば乗降駅の概念と縁の切れる、フリーパスである。もちろん、適正な入鋏と特急列車には使用しないと言うルールを遵守した上での話だけれど。

 脱線したが、かくして私の宇連山登山は終りを迎えた。奥三河の、一般・中級者向けの山の中では、最も手強いうちの一座を攻略した事にはなるだろう。
宇連山の山頂。山名票の方向に切り開きがある程度。

三ツ瀬明神山。

滝への道は樹林も多い。

亀石の滝も冬枯れ。

 
アクセス JR三河槙原駅より。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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