尾張三山(尾張富士・本宮山・白山)
犬山近くで三座周回
■標高:292m(本宮山)
■歩行時間:3時間30分
■登山日:2009年12月26日

    「出羽三山」と言うと、何だかすごそうである。かなり位の高い修験者がいそうな感じがする。それに比べると、どうも華がないのだが、我が近所の尾張地方にも「尾張三山」と呼ばれるものがある。すなはち、犬山と小牧の境目付近にある尾張富士、白山、本宮山である。世に「○○三山」と呼ばれるものは、出羽三山と同様に近隣の信仰を集めるものであったり、山容の美しい山だったりするのだが、尾張の三山は明らかに信仰の山である。まあ、姿の美しい山は信仰の対象になりやすいという事実もあるのだけれど、とまれ今回は尾張三山にアタック。いずれの山も若干の宗教色みたいなものはあり、山頂に神社が存在する点が共通している。



 愛知県内の山行においては基本中の基本となる「こんなに楽しい愛知の130山」では、紹介されている百三十座の最初に、この三つの山が出てくる。と言っても、各山独立して紹介されているわけではなくて、一日の行程の中で三山を回るルートがガイドされている。その内容は、縦走と呼べるものではなく、三つの山に「登って下りる」を繰り返すルートだ。ちなみに、いずれの山も200m級の、東谷山に毛の生えた程度の高度しかない。山に関しては、自分で主体的なルート設定を出来るだけの知識がないので、なんのひねりもなくこれに従う事にする。

 最初に、山行以外の部分に関して、コースの概略を説明しておく。尾張富士、白山、本宮山の順に回る行程となるが、尾張富士までのアクセスには名鉄犬山線を利用。犬山駅で下車し、そこから尾張富士登山口までは路線バスを使う。「愛知の130山」では明治村行き名鉄バスの、「尾張富士」停での降車が推奨されているが、この系統の本数そのものが少ないので、「長者町団地」停での降車の方が現実的だろう。「尾張富士」バス停からもさほど離れてはいない。白山への登り下り以外は往路と復路が異なるコース設定となっており、本宮山を下山した後は、徒歩で名鉄小牧線楽田駅まで移動し、帰途に着く。名古屋駅を10時過ぎに出て、名古屋市営地下鉄平安通駅まで戻ったのが15時30分。正味4時間強ほどの歩行時間だった。

◆尾張富士

 そうしたわけで、最初にアタックしたのが尾張富士だった。標高は275.0mで、白山よりは高く、本宮山よりは低い。この本宮山より低いところがこの山のミソである。その昔、尾張富士と本宮山はどちらの方が高いかでしばしば喧嘩をしていた。そこであるとき、互いの頂を一本の樋でつなぎ、そこに水を流して、長年の論争に決着をつけようとした。果たして、水は尾張富士の方へと流れていった。つまりは本宮山の方が高かったのである。こうして長きに渡る争いに決着は付いたのだけれど、尾張富士はこの幕引きを大層悔しがったと言う。もちろん、御伽噺の世界の出来事である。が、尾張富士の気持ちを慮った地元では、「石上げ祭」という祭りが行われるようになった。その名の通り、麓から山頂へと石を運び上げる、一種の奇祭である。

 尾張富士には、冨士つながりの故か、浅間社がある。山頂にあるのは奥社だが、登山口にも神殿があり、一つ百円也の玉石も販売(?)されている。これ自体は前述の年に一度の祭礼とはまた別物の信仰なのだが、石に願いを書いて山頂に置くのが作法らしい。せっかくなので、私も寸志を払って石を一つ、運び上げる事にした。

 尾張富士は、確かにその名の通りの、富士山に似た円錐状の山なのだが、本家富士山に比べると、なだらかな裾野の広がりに欠け、低平地から突き出すような山容をしている。そして、いざ登ってみると、実際に結構斜度のきつい登りが続く。登山道は岩の露出している箇所が多く、険しいと言えば険しい道のりである。その一方で、山頂の浅間社奥社への参道でもあるため、荒れているわけではない。道沿いには「献石」と刻まれた大小の石碑が立ち並ぶ。山頂までの道に特筆するほどの展望スポットがあるわけではないが、登山道の形態上、登りの途中で足を止めて後ろを振り返ると、麓の様子が良く見えたりもする。

 登りはじめから山頂までは20分ほどである。山頂には神社があり、その前面に、登山者によって運び上げられた石が積み上げられている。高山によくあるケルンのようなものを想像していたのだが、思ったよりは量がない。江戸時代から続いている風習だと言うから、累計では夥しい量の石が上げられているような気がするのだが、適当に整理されているのだろうか。

 そうして登ってきた道とは社殿の反対側にあたる道へと下る。こちらは、どこにでもある林間の登山道である。やはり、少々傾斜はきつい。ここを下っていくと、博物館明治村の正面玄関近くにたどり着く。ここから、明治村沿いに進み、入鹿池の脇を通って白山に向かう。

◆白山

 「こんなに楽しい愛知の130山」の前身に当たる「こんなに楽しい愛知の100山」では、尾張富士と本宮山こそセットで紹介されていたが、白山の事には全く触れられていなかった気がする。増補新装版において二座の間に割って入ってきた白山である。山頂付近には、その名の通り白山神社がある。標高は223.5m。三山で最も低いが、「愛知の130山」によれば、神社があるのは白山山頂よりも高い260m地点となっている。

 白山の山頂へは、入鹿池の南から、まずアスファルト舗装の施された林道を行く事になる。現在整備工事の途中と言う事で、自動車が入り込めなくなっており、実質歩行者専用道となっているので、安全面ではさしたる問題もないし、傾斜も緩く、むしろいわゆる山道よりも歩きやすいほどなのだが、しかし少々無味乾燥な気もする。

 「ふれあいの森」と名づけられた一角から、ようやく林間の土の上を歩く事になるが、ここから実質的な山頂である白山神社までは大した距離ではない。10分弱である。神社からの眺めは良い。展望は主に南に開けており、小牧の街やその向こうの名古屋市街を見晴るかす事ができそうだが、冬場とは言え雨上がりだった事もあり、今回は霞んでいた。

 復路は、登ってきた道を引き返す事になる。今回の山行で唯一と言って良い、もと来た道を引き返す行程である。

◆本宮山

 尾張富士の南方、白山の西方にあるのが本宮山である。この山の頂には大縣神社の奥社があり、そのため本宮山の名があるのだろう。大縣神社は「女性の守り神」であるとされ、「ちんこ祭り」で知られる田縣神社とで対をなすような性格の神社である。ちんこと対をなすものが何であるか、みなまでは言わない。

 本宮山頂への道は、大縣神社側からのものと、明治村方面からのものとがあるが、白山を経て向かう場合は当然明治村側から登る事になる。登り始めは里山の中を行くような雰囲気の道である。白山までの舗装道のようなことはないが、車でも乗り入れられそうな、幅の広い道ではある。胸を突くような急坂はなく、ゆるゆると登っていくと、程なく信貴山との分岐点に到着。信貴山もまた信仰対象になっていそうな名前の山だが、今回は本宮山を目指す。どちらかと言うと、大縣神社側から伸びてきた参道に合流するようなイメージだ。

 分岐点から本宮山頂への道は、信仰の道として昔から需要があったためか、良く整備されている。途中、二つほど小さな社の傍らを通り過ぎて、大縣神社奥社のある山頂へ到着。冬枯れの季節なので多少は良かったが、基本的には木立に遮られて展望は良くない山頂だろう。眺めが良いのはむしろ、途中の社の前の露岩の上辺りだろうか。ここからは南方の様子が良く見える。ただ、今回のルートについて言えば、白山神社から見たのとあまり変わりばえのしない展望になってしまうのが残念だ。

 帰りは、大縣神社側へと下り、楽田駅を目指した。神社までの道は、やはり車の乗り入れにも耐えそうな道である。そして一度大縣神社まで下りてしまえば、そこから駅までは実質的な一本道で、迷子になるような心配もなかった。
岩盤の露出した尾張富士山頂への道。

こんな感じの石積みが方々にある。

白山社への道。

白山神社から小牧方面の展望。

本宮山頂には小さな祠がある。

大縣神社に下る。

 
アクセス 名鉄犬山駅より「尾張冨士」または「長者町団地」下車。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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