東谷山
名古屋の里山
■標高:198.3m
■歩行時間:1時間
■登山日:2009年10月30日

    石川県出身の作家、深田久弥は自著「日本百名山」の白山の章にこう記している。「日本人は大ていふるさとの山を持っている。山の大小遠近はあっても、ふるさとの守護神のような山を持っている。そしてその山を眺めながら育ち、成人してふるさとを離れても、その山の姿は心に残っている。どんなに世相が変わっても、その山だけは昔のままで、あたたかく帰郷の人を迎えてくれる」。名古屋市民にとって、ふるさとの山と言えば東谷山だろう。都合によりとりあえず、そう言う事にしておきたい。



 標高198.3mは押しも押されもせぬ低山であるが、東谷山(とうごくさん)は、名古屋市内の最高峰とされる。市内にはこの山よりも遥かに高いビルはあるのだが、他に山らしい山もなし。あってもせいぜい丘陵程度ものだ。日常生活の中では、どちらかと言えば山麓にある東谷山フルーツパークの名を耳にする機会のほうが多いような気もするが、名古屋市内では数少ない、山歩きらしい山歩きのできる場所である事には違いない。

 登山口となるものは何箇所かあり、瀬戸市との境に位置する事もあって瀬戸側から登る事もできるが、今回はフルーツパークの近傍にある散策路をたどって山頂を目指す事にする。と、気負って登り始めてみても、何と言っても山自体の規模が知れているのだ。常日頃から登っている日本各地の城山と同等以下の比高しかないから、登りはじめから征服まで大して時間はかからない。実際、15分ほどで登りきる事ができた。

 しかし長丁場にならないからこそ逆に、ということなのだろうか。コース終盤でそこそこ急な傾斜の長い階段を一気に登らされる箇所があり、そこだけは予想外に難儀した。この辺のコース設定のスパルタンなところを別にすれば、徹頭徹尾良く整備された道を行く、まさに散策路である。登山口と山頂付近を除けば、コースはずっと雑木林の中を延びており、眺めは良くない。樹種がよく分からないながら、新緑や紅葉の楽しみはあるのだろうか。過去にはカモシカが見つかった事もある地域だし、ムササビやリスといった野生動物も住む山のようだ。ただ山行中に彼らと出会うことはなかった。道中にいくつかの古墳が見られるのも、ちょっとしたアクセントである。

 山頂には木製の展望台があり、ここから名古屋市方向への展望がある。主に見えるのは守山の吉根や志段味といった地区と春日井方面が中心だが、タワーズ、ミッドランド、テレビ塔、さらにナゴヤドームと言った良く目立つ建物なら遠望できるようだ。今回は晴天ながら霞がかってしまっていて駄目だった。尾張戸神社を挟んでその反対側からは瀬戸の町を見下ろす事ができるが、ここから見えるのはやはり、瀬戸の郊外エリアだと思われる。

 なお、名古屋市内の高層ビルに登ると、天候にもよるが北寄りの東方に聳える恵那山の存在感が抜群である。東谷山はビルの陰になって見えないことも多く、見えても守山区東方の丘陵地区の中にあって目立たない。歴史、山体、そして石川県における白山との対比から言っても、深田の言う「ふるさとの山」となるにもっとも相応しいのは、濃尾地区においては恵那山だろうか。

 とまあ、こんな感じの山である。甘く見ているとカウンターパンチを食らわされる可能性はあるが、そこはそれ小さな山なので、疲労度も知れている。今回は名古屋市内から自転車で出かけたためその分体力を消耗したが、中央線の高蔵寺駅から歩く手もあるし、フルーツパークの駐車場に車を停めて山へ登ることも特に禁止されていない(フルーツパークに閉園時間があることには注意)。小一時間もあれば登って下りられる山なので、むしろフルーツパークに寄り道するぐらいで良いかもしれない。なんでも、焼き芋が評判らしい。

 なお、名古屋市内最高所の話が出たので参考までに名古屋の最低地点のことにも言及しておく。多くが埋立地である港区あたりだろうと特に地元の人は大方の見当はつくだろう。具体的には港区新茶屋4丁目で、-1.73mなのだそうだ。ランドマークは特になく、日光川の河口近く、飛島大橋より少し上流の左岸付近と言うより他にない。
登山道ではなく散策路。

長くまっすぐな階段。

守山区の展望。

展望台。

疫病除けの尾張戸(おわりべ)神社。

 
アクセス JR高蔵寺駅より。
ガイド本 新・こんなに楽しい愛知の130山 風媒社
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